薬剤師からの疑義照会をカルテに反映させず、再度、誤った薬剤処方を行った事例が発生―医療機能評価機構



Pocket

 薬剤師の疑義照会があり薬剤の量などが変更になったが、電子カルテの処方内容を修正しなかったため、その後、処方歴をもとに変更前の薬剤を再び処方してしまった―。

 こうした事例が、2017年1月から2018年8月までに2件報告されていることが、日本医療機能評価機構の調べで明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

薬剤師疑義のカルテへの確実な反映が重要だが、それを補完する仕組みの検討も必要

 日本医療機能評価機構は、全国の医療機関(国立病院や特定機能病院等は義務づけ)から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故に至る前に気づいたものの、ヒヤリとした、ハッとした事例)を収集し、その内容や背景を分析して事故等の再発防止に向けた提言等を行っています。また事故事例などの中から、毎月、とくに留意すべき事例等をピックアップし、「医療安全情報」として公表し、医療現場に注意を促しています(最近の情報はこちらこちらこちら)。10月15日に公表された「No.143」では「処方内容の未修正による再処方時の誤り」がテーマとなりました。

 ある病院では、医師が処方箋を作成するに当たり、免疫抑制剤のセルセプトカプセル250を「1回2カプセル・1日2回(1日4カプセル)」と入力するところ、誤って「1回4カプセル・1日2回(1日8カプセル)」と入力してしまいました。保険薬局の薬剤師が疑義照会を行ったところ、誤りであることが分かり用量を変更して調剤を行いました。しかし、処方医は電子カルテの処方内容を修正しなかったため、後に患者が休日に緊急入院した際、処方歴をもとにセルセプトカプセル250を「1回4カプセル・1日2回」処方してしまいました。入院後に血中濃度を測定した際、数値が高く過剰投与していることが分かったといいます。
医療安全情報143 181015の図表
 
また別の病院では、外来担当の医師Aが高血圧症や狭心症等の治療薬ビソプロロールフマル酸塩錠「12.5mg」を処方しましたが、院内の薬剤師から「処方量が多いのではないか」との疑義照会があり「1.25mg」へ変更となりました。その際、医師Aは電子カルテの処方内容を修正せず、その後、患者が夜間に救急外来を受診して入院した際、別の医師Bが処方歴の用量をもとに、ビソプロロールフマル酸塩錠「12.5mg」を処方。薬剤師も看護師も気付かず、患者が内服してしまいました。

 
薬剤量の誤りは、種類によっては患者に重篤な副作用をもたらし、健康・生命を脅かすことも決して稀ではありません。事例が発生した病院では、「疑義照会により薬剤の量などを変更した際は、確実にカルテの処方内容を修正する」との取り組みを行ったといいます。

ただし、これまでにも院内で同様のルールがあったと考えられ、これの「徹底」では事例の再発防止としてはやや不完全な気もします。例えば、院内であれば「疑義照会を行った薬剤師やその代理が、カルテ等の修正内容をチェックする」、院外処方であれば「疑義照会の記録を残し、定期的にカルテ内容等との突合を行う」など、ミスが生じても補完できる仕組みを構築することなどが求められるでしょう。さらに、地域全体で「疑義照会の内容を確実にカルテ等に反映し、それを共有できる」仕組みを構築することも検討に値するのではないでしょうか。もちろん費用もかかりますが、その際に、行政も巻き込み「各種補助金の活用ができないか」を併せて検討することも重要です。

 
 

 

MW_GHC_logo

 

【関連記事】

膀胱留置カテーテルによる尿道損傷、2013年以降に49件も発生―医療機能評価機構
検査台から患者が転落し、骨折やクモ膜下出血した事例が発生―医療機能評価機構
総投与量上限を超えた抗がん剤投与で、心筋障害が生じた事例が発生―医療機能評価機構
画像診断報告書を確認せず、悪性腫瘍等の治療が遅れた事例が37件も発生―医療機能評価機構
温罨法等において、ホットパックの不適切使用による熱傷に留意を―医療機能評価機構
人工呼吸器、換気できているか装着後に確認徹底せよ-医療機能評価機構
手術場では、清潔野を確保後すぐに消毒剤を片付け、誤投与を予防せよ―医療機能評価機構
複数薬剤の処方日数を一括して変更する際には注意が必要―医療機能評価機構
胸腔ドレーン使用に当たり、手順・仕組みの教育徹底を―医療機能評価機構
入院患者がオーバーテーブルを支えに立ち上がろうとし、転倒する事例が多発―医療機能評価機構
インスリン1単位を「1mL」と誤解、100倍量の過剰投与する事故が後を絶たず―医療機能評価機構
中心静脈カテーテルが大気開放され、脳梗塞などに陥る事故が多発―医療機能評価機構
併用禁忌の薬剤誤投与が後を絶たず、最新情報の院内周知を―医療機能評価機構
脳手術での左右取り違えが、2010年から11件発生―医療機能評価機構
経口避妊剤は「手術前4週以内」は内服『禁忌』、術前に内服薬チェックの徹底を―医療機能評価機構
永久気管孔をフィルムドレッシング材で覆ったため、呼吸困難になる事例が発生―医療機能評価機構
適切に体重に基づかない透析で、過除水や除水不足が発生―医療機能評価機構
経鼻栄養チューブを誤って気道に挿入し、患者が呼吸困難となる事例が発生―医療機能評価機構
薬剤名が表示されていない注射器による「薬剤の誤投与」事例が発生―医療機能評価機構
シリンジポンプに入力した薬剤量や溶液量、薬剤投与開始直前に再確認を―医療機能評価機構
アンプルや包装の色で判断せず、必ず「薬剤名」の確認を―医療機能評価機構
転院患者に不適切な食事を提供する事例が発生、診療情報提供書などの確認不足で―医療機能評価機構
患者の氏名確認が不十分なため、誤った薬を投与してしまう事例が後を絶たず―医療機能評価機構
手術などで中止していた「抗凝固剤などの投与」、再開忘れによる脳梗塞発症に注意―医療機能評価機構
中心静脈カテーテルは「仰臥位」などで抜去を、座位では空気塞栓症の危険―医療機能評価機構
胃管の気管支への誤挿入で死亡事故、X線検査や内容物吸引などの複数方法で確認を―日本医療機能評価機構
パニック値の報告漏れが3件発生、院内での報告手順周知を―医療機能評価機構
患者と輸血製剤の認証システムの適切な使用などで、誤輸血の防止徹底を―医療機能評価機構
手術中のボスミン指示、濃度と用法の確認徹底を―日本医療機能評価機構

2017年に報告された医療事故は4095件、うち8%弱の318件で患者が死亡―日本医療機能評価機構
2016年に報告された医療事故は3882件、うち338件で患者が死亡―日本医療機能評価機構

車椅子への移乗時等にフットレストで下肢に外傷を負う事故が頻発、介助方法の確認等を―医療機能評価機構
メトホルミン休薬せずヨード造影剤用いた検査を実施、緊急透析に至った事故発生―医療機能評価機構
2017年10-12月、医療事故での患者死亡は71件、療養上の世話で事故多し―医療機能評価機構
誤った人工関節を用いた手術事例が発生、チームでの相互確認を―医療機能評価機構
手術室などの器械台に置かれた消毒剤を、麻酔剤などと誤認して使用する事例に留意―医療機能評価機構
抗がん剤投与の速度誤り、輸液ポンプ設定のダブルチェックで防止を―医療機能評価機構
2016年7-9月、医療事故が866件報告され、うち7%超で患者が死亡―医療機能評価機構
2015年に報告された医療事故は3654件、うち1割弱の352件で患者が死亡―日本医療機能評価機構
2016年1-3月、医療事故が865件報告され、うち13%超は患者側にも起因要素―医療機能評価機構
15年4-6月の医療事故は771件、うち9.1%で患者が死亡―医療機能評価機構
14年10-12月の医療事故は755件、うち8.6%で患者死亡―医療事故情報収集等事業

Pocket