現在の処遇改善加算に「他職種にも充てられる加算」を上乗せする形も検討―介護給付費分科会(1)



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 来年(2019年)10月の消費増税に合わせて、「介護従事者の大幅な処遇改善」を行うが、その際には「経験や技能のある職員への重点化」と「他職種への柔軟な運用」とを両立させる必要があり、「現在の介護職員処遇改善加算」とは別の加算で対応することとしてはどうか―。

 10月15日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会で、厚生労働省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は、このような方針を提示しました(関連記事はこちら)。

 具体的な制度設計論議はこれからですが、例えば、「現在の介護職員処遇改善加算IからIII」に、新たな処遇改善加算を上乗せする仕組みなどが考えられそうです。

10月15日に開催された、「第162回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
10月15日に開催された、「第162回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
 

「経験・技能のある介護福祉士」の職場定着が主目的

 来年(2019年)10月に、消費税率が現在の8%から10%に引き上げられる予定です。その際、介護事業所・施設の控除対象外消費税負担を補填するための、特別の介護報酬プラス改定(以下、消費税対応改定)が行われます。公的介護の費用は消費税が非課税となっており、介護事業所・施設が物品等を購入した際に支払う消費税は、利用者等に転嫁できず、介護事業所・施設が負担しなければなりません。消費税率が上がれば、この負担が大きくなり、経営を圧迫してしまうため、消費税対応改定による補填が行われているのです。

 併せて安倍晋三内閣は、▼介護人材の確保▼介護人材の定着—の重要性を指摘し、「消費税対応改定において、介護職員の更なる処遇改善を行う」方針を決定。勤続10年以上の介護福祉士(およそ20万人)の賃金水準を全産業平均程度にまで引き上げる(月額8万円程度の引き上げ)ことを算定根拠に、1000億円の財源を確保(20万人×月額8万円→2000億円、これを保険料と公費負担で2分の1づつ負担するため、公費を1000億円確保)。具体的な検討が、介護給付費分科会で進められているのです。

こう見てくると、「現在の介護職員処遇改善加算Iに、新たな要件を付加した、新【介護職員処遇改善加算I】を設け、現在加算は、順次『I→II』、『II→III』、『III→IV』としていくのか」とも思われます。しかし、今般の処遇改善においては、▼重点化▼柔軟な運用―のバランスという新たな要素を考慮することになっており、やや様相が異なります。前者の「重点化」は、「経験・技能のある職員」にターゲットを絞り、思い切った賃金引き上げを行うことを、後者の「柔軟な運用」は、「介護職員以外の他職種(看護職やリハビリ専門職、ケアマネジャーなど)」の賃金引き上げにも処遇改善加算を充てられる仕組みとすることを意味します。

この2点のバランスをとる考えについて、介護給付費分科会委員は概ね賛同。それを受け眞鍋老人保健課長は、次の2つの対応方針案を提示しています。
(1)更なる処遇改善の趣旨は、これまでの処遇改善への取り組みを一層進めるとともに、介護現場への定着促進であり(【重点化】の要請)、その趣旨を損なわない程度に、事業所内の配分に当たって、他の職員の処遇改善にも充てられるようにする(【柔軟な運用】の要請)
(2)現行の介護職員の処遇改善とは別の加算で対応する

このうち(1)からは、あくまでも「経験・技能のある介護職員(例えば介護福祉士)の処遇改善をすることで、キャリアを描けるようにする」が主目的であり、「他職種への柔軟な運用」は、主目的を損なわない範囲にとどめることが分かります。つまり、「全くの事業所の裁量によって処遇改善の対象職種、内容を自由に決められる」ものとはならない見込みです。この点、河本文夫委員(全国町村会政務調査会行政委員会委員、東京都奥多摩町長)は、【重点化】の視点を重視し、「例えば、事業所が取得した新たな処遇改善財源のうち、一定割合は勤続10年以上の介護福祉士に配分しなければならない、などの要件を設けてはどうか」と提案しました。

一方、齋藤訓子委員(日本看護協会副会長)は、「訪問看護ステーションにおいてマネジメントを担当している看護師は、訪問業務とマネジメント業務の双方を担い負担が大きい」点を指摘し、【柔軟な運用】の視点も忘れてはならないとコメントしています。

 
また(2)は、制度設計に関する考え方ですが、(2)の文言だけからは具体的な姿は見えず、今後、介護給付費分科会での議論を待つ必要があります。現時点、メディ・ウォッチでは、前述したような「新たな、要件を厳格化した介護職員処遇改善加算Iの創設」や、「現在の介護職員処遇改善加算I、II、IIIの上に、別途の【処遇改善加算】を上乗せする」などの仕組みが考えられるのではないかと推測しています。

しかし、前者の「要件を厳格化した【新介護職員処遇改善加算I】の創設」では、「柔軟な運用」が難しく(新加算Iは他職種に活用できるが、従前の加算は活用できないことになってしまう)、また柔軟な運用を可能とするためには、他の加算にも手を入れなければならないという問題点があり、その可能性は低いと言えそうです。

メディ・ウォッチの推測する新たな処遇改善の仕組み(その1)、ただし、本文に示したように可能性は低そうだ
メディ・ウォッチの推測する新たな処遇改善の仕組み(その1)、ただし、本文に示したように可能性は低そうだ
 
その点、後者では、「現在の介護職員処遇改善加算の要件を満たしている」、つまり処遇改善や職場環境改善を行っている介護事業所・施設に限定して、経験・技能を持つ介護福祉士や他職種に処遇改善等を行うことを評価する【更なる上乗せ加算】を設けるというイメージです。現在の【加算I】の要件をすべて満たすことは難しい事業所であっても、経験・技能を持つ介護福祉士への対応や、他職種への対応を行うことで、職場への職員定着を図れるというメリットも期待できそうです。
メディ・ウォッチの推測する新たな処遇改善の仕組み(その1)、その1に比べて柔軟な運用が可能と思われる
メディ・ウォッチの推測する新たな処遇改善の仕組み(その1)、その1に比べて柔軟な運用が可能と思われる
 
今後の制度設計論議に注目が集まります。

処遇改善にとどまらず、根本的な「介護職の人材確保・定着」策も並行して検討

また眞鍋老人保健課長は、今般の更なる処遇改善について、「これまで介護事業所・施設で進めてきたキャリアアップの仕組みとの整合性を確保する」ことや、処遇改善とは別途に▼離職防止▼人材育成▼雇用管理改善—などの人材「確保」支援を行うことの重要性も強調しています。

特に後者については、東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)や江澤和彦委員(日本医師会常任理事)、堀田聰子委員(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)らから、「入口となる人材確保」の必要性が強く訴えられました。例えば介護福祉士養成施設の入学者数や定員充足率は年々減少しており、「まず、新たな人材を確保しなければ、職場定着にも至らない」と東委員や江澤委員は強調。田中滋分科会長(埼玉県立大学理事長)も、介護福祉士養成施設の状況に言及し、自ら「まず経験・技能のある介護福祉士、次いで介護福祉士を目指す介護職員、そのあとで他職種という順序で処遇改善を行うべきではないか」と異例の提言を行っています。
介護給付費分科会(1)の3 181015
 
また堀田委員は、最近の研究野中で、「自分(介護職員自身)が介護事業所・施設のサービスの質向上に役立っているとの実感、裏返せば、自分の職場・業務が自身のスキルアップにつながっているか」と「キャリアアップの仕組み」との双方がなければ職場定着に結びつかない、と判明してきていることなどを紹介。

さらに石田路子委員(高齢社会をよくする女性の会理事、名古屋学芸大学看護学部教授)や東委員は、「介護職として40年間、勤め上げるとした場合のライフプランを描ける」「介護職が魅力のある業務である」仕組みとしたうえで、それを世にアピールしていくことが重要と訴えています。この点、江澤委員は「介護報酬改定率が厳しい中で、賃金のベースアップが難しい。こうした点もライフプランを描きにくい、魅力のなさの一因となっているのではないか」と指摘しています。

 
なお、分科会委員からは「処遇改善を加算で行うことの是非」を、将来に向けて検討すべきとの指摘も相次いでいます。介護従事者の人材確保・定着に向けて、より幅広い総合的な視点に立った議論も並行して進められることになるでしょう。
介護給付費分科会(1)の4 181015

 
 

 

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