車椅子への移乗時等にフットレストで下肢に外傷を負う事故が頻発、介助方法の確認等を―医療機能評価機構



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 今年(2018年)4-6月に報告された医療事故は947件、ヒヤリ・ハット事例は6949件となった。医療事故のうち7.3%・69件では患者が死亡しており、9.5%・90件では死亡にこそ至らなかったものの、障害残存の可能性が高い—。

 こういった状況が、日本医療機能評価機構が10月2日に公表した「医療事故情報収集等事業」の第54回報告書から明らかになりました(機構のサイトはこちら)(2018年1-3月の状況はこちら)。

 また報告書では、(1)小児へ投与する薬剤(2)ガイドワイヤーの破損(3)車椅子のフットレストによる外傷―に関連する医療事故を詳細に分析し、改善策を提示しています。

2018年4-6月、医療事故の7.3%、69件で患者が死亡

 今年(2018年)4-6月に報告された医療事故947件を、事故の程度別に見ると、「死亡」が69件(事故事例の7.3%、前四半期に比べて1.6ポイント増)、「障害残存の可能性が高い」ものが90件(同9.5%、前四半期に比べて1.1ポイント減)、「障害残存の可能性が低い」ものが217件(同22.9%、前四半期に比べて1.2ポイント減)、「障害残存の可能性なし」が254件(同26.8%、前四半期に比べて3.6ポイント減)などとなっています。「死亡」事故が、前四半期に比べて大きく増加している点が気になります。

 医療事故の概要を見ると、最も多いのは「療養上の世話」で331件(同33.5%、前四半期に比べて0.9ポイント減)、次いで「治療・処置」273件(同28.8%、前四半期に比べて2.8ポイント増)、「薬剤」108件(同11.4%、前四半期に比べて0.9ポイント増)、「ドレーン・チューブ」79件(同8.3%、前四半期に比べて5.3ポイント増)などと続いています。前四半期に続き、さらに「広範な医療行為において事故が発生している」状況が伺えます。
医療事故情報収集等事業(54回報告書)1 181002
 

依然として幅広い場面でヒヤリ・ハット事例が発生、4割は薬剤関連

 次にヒヤリ・ハット事例に目を移してみましょう。今年(2018)年4-6月の報告件数は6949件でした。

概要を見ると、「薬剤」関連の事例が最も多く2735件(ヒヤリ・ハット事例全体の39.4%、前四半期と比べて2.4ポイント増)、次いで「療養上の世話」1279件(同18.4%、前四半期と比べて0.2ポイント減)、「ドレーン・チューブ」1032件(同14.9%、前四半期と比べて0.9ポイント減)などとなっています。医療事故と同じく「広範な医療行為」においてヒヤリ・ハット事例が発生しており、院内のチェック体制を再確認(ダブルチェック、トリプルチェックなど)する必要性はいささかも減じていません。
 
ヒヤリ・ハット事例のうち4297件について、患者への影響度を見てみると、「軽微な処置・治療が必要、もしくは処置・治療が不要と考えられる」事例が97.5%(前四半期と比べて0.7ポイント増)とほとんどを占めていますが、「濃厚な処置・治療が必要と考えられる」ケースも2.1%・89件(同0.5ポイント減)、「死亡・重篤な状況に至ったと考えられる」ケースも0.4%・18件(同0.2ポイント減)あります。一歩間違えば重大な影響の出る事例が僅かとはいえ生じていることも事実であり、全医療機関において院内のチェック体制を再度、点検しなおす必要があります。
医療事故情報収集等事業(54回報告書)2 181002
 
なお、メディ・ウォッチでも再三お伝えしていますが、「個人が気を付ける」ことだけでは医療事故やヒヤリ・ハットの防止策として十分ではありません(効果はもちろんあるりますが)。人はミスを犯す生き物であり、とりわけ医療従事者は多忙です。「必ず複数人でチェックする」「ミスが生じる前に、あるいは生じた場合には、すぐに気付けるような仕組みを考慮する」「院内のルールを誰もが遵守する風土を作り上げる」など、医療機関全体で「我が事である」と捉えて対策を講じることが重要です。

車椅子への移乗などの際に下肢に外傷を負う事例が頻発、必ず複数名での移乗介助を

 報告書では毎回テーマを絞り、医療事故の再発防止に向けた詳細な分析も行っています。今回は、(1)小児へ投与する薬剤に関連した事例(2)ガイドワイヤーの破損に関連した事例(3)車椅子のフットレストによる外傷に関連した事例―の3テーマについて、詳細な分析が行われました。高齢化が進行し、急性期病棟にも多くの高齢者が入院している状況などに鑑み、(3)に注目してみましょう。

車椅子のフットレスト(足置き)は、硬く、突起物や角があるため、皮膚との接触で外傷を負う可能性がありますが、車椅子の下方(足元)にあるため、患者・介助者の双方にとって「視界に入りにくい」のが実際です。

2012年1月から今年(2018年)6月までに、「車いすのフットレストによる外傷」関連の報告は35件あります。うち70歳代が10名、80歳代が7名、90歳代が8名となっており、高齢者で頻度の高い事故と言えるでしょう。

また事故発生時の状況としては、35件中26件が「患者を支えて移乗した際の受傷」、9件が「移乗の際に車椅子を患者へ寄せたり、患者から引いたりした時に受傷」しています。また35件中16件で、「介助者が1名であった」ことも分かりました。
 
 機構は事例の背景などを詳しく分析し、▼介助▼患者▼環境等—のそれぞれに対する改善方策を例示しています。

【介助に関する改善策】
▽介助方法の検討・見直し(移乗介助が必要な患者の観察点やアセスメントの方法、リスク予見の必要性についてカンファレンスと情報共有、「安全な車椅子移乗方法」に関する理学療法士の検討と情報共有、可能な場合には「フットレスト等を取り外した」移乗の実践、「立ち上がりの姿勢を安定させて」からの移乗、移乗に全介助が必要な場合のストレッチャー使用など)
▽介助者の確保(必ず2名以上での移乗介助を行うなど)と役割分担の明確化
▽車椅子の設置位置(ベッドサイドに車椅子設置スペースを確保し、健側(障害のない側)に車椅子を設置し移乗介助する)
▽フットレストと下肢の位置確認

【患者に関する改善策】
▽患者の状態の把握(とくにせん妄や認知機能低下がある患者は、危険や痛みなどに気がつかないことを考慮する)
▽患者情報の共有

【環境等に関する改善策】
▽車椅子の整備・選択(可能な限りフットレスト等の取り外しができる介助用車椅子を導入する、不可能な場合にはフットレストにスポンジ等でカバーを行う)
▽環境整備(安全に移乗が行えるよう、洗髪台周囲の物品は倉庫など他の場所に移動する)
▽学習・教育(安全な移乗技術を習得する)
 

消費者安全調査委員会からも、消費者庁や厚生労働省、経済産業省へ「(手動車いすのフットサポート)続報」を提示し、注意喚起している
消費者安全調査委員会からも、消費者庁や厚生労働省、経済産業省へ「(手動車いすのフットサポート)続報」を提示し、注意喚起している
 
  
 

 

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