新専門医制度、2019年度の専攻医登録を控えて「医師専門研修部会」議論開始



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 新専門医制度における2019年度の専攻医(専門医資格取得を目指す後期研修医)の登録を控え、9月28日には医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」(以下、専門部会)の初会合が開かれました。

部会では、近く、各都道府県の「地域医療対策協議会」の意見を踏まえた「厚生労働大臣の意見」(日本専門医機構や基本領域学系に向けた要望)を取りまとめます。また、一部学会ではカリキュラム制の専攻医を合算すると「シーリング(上限)を超えた採用がなされている」ことも明らかとなり、2019年度の登録状況についても「シーリングを遵守しているか」の確認が行われます。

9月28日に開催された、「平成30年度 第1回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会」
9月28日に開催された、「平成30年度 第1回 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会」
 

「東京への専攻医集中」は抜本的に見直すべきとの指摘も

 医師偏在是正を大きなテーマに掲げた改正医療法・医師法では、新専門医制度について「各都道府県の地域医療対策協議会の意見を踏まえて、厚生労働大臣が新専門医制度に内容に関して意見を述べる(日本専門医機構は、意見を反映させる努力義務を負う)」仕組みが創設されました。

 地域医療対策協議会には、▼都道府県▼市町村▼医師会▼病院団体▼期間病院等▼大学―などが参加し、地域医療確保の観点で新専門医制度等に関して協議を行い、意見・要望を都道府県・厚生労働大臣を通じて日本専門医機構に伝えることができます。
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 具体的には、新専門医制度において日本専門医機構・基本領域学会が▼専門医制度新整備指針(日本専門医機構で制定)▼専門医制度新整備指針運用細則(同)▼総合診療専門研修プログラム整備基準(同)▼総合診療専門研修プログラム(同)▼各基本領域の専門研修プログラム整備基準(各基本領域学会で制定)▼各基本領域の専門研修プログラム(同)—を制定・変更する場合に、各都道府県・協議会の意見を踏まえて、厚生労働大臣の意見・要望を日本専門医機構・基本領域学会に提示します。ただし、各研修プログムの細部(「●●疾患を○○症例以上、経験すること」など)については、各基本領域学会のプロフェッショナルオートノミーを基盤に設計されるべきものであり、都道府県や厚生労働大臣の意見・要望は「地域の医療提供体制の確保に重大な影響を与える事項」「研修を受ける機会の確保に関する事項」に限定される点には留意が必要です(近く、厚労省令の交付、関係通知の発出等が予定されている)。

 10月中旬(15日予定)の専門部会で、各都道府県・協議会の意見を踏まえて、厚生労働大臣の意見・要望を取りまとめることが確認されました。

 
 9月28日の初会合では、この意見・要望取りまとめも睨み、委員からさまざまな意見が出されました。

このうち立谷秀清委員(全国市長会会長、福島県相馬市長)は、「新専門医制度で、東京への専攻医集中が助長されてしまった」点を重く見て、「シーリング(定員上限)を思い切って厳しくする(例えば現在の30%減)などの見直しが必要」と強調しています。

これに対し日本専門医機構の副理事長である今村聡参考人(日本医師会副会長)は、「例えば、東京都でのシーリング設定で、仙台のある基幹病院から『東京からの医師派遣がストップし、困っている』といった声も出ている。2019年度からはさらに東京都のシーリングを5%減らす(厳しくする)ことになったが(関連記事はこちら)、数字だけではなく、医師の動向などを丁寧に見ていかなければいけない」と説明しましたが、立谷委員は「そもそも、仙台を初め、地方の病院が、東京からの医師派遣を受けなければ医療提供体制が維持できない状況がおかしい」とし、抜本的な「東京への専攻医集中の是正が必要」と改めて訴えました。

カリキュラム制を含めると、一部基本領域学会ではシーリングを超過

ところで、厚労省の調べでは、「2018年度において、カリキュラム制(年限や研修施設を定めず、一定の症例数などを経験することで専門医試験の受験資格を得られる仕組み)の専攻医を加味した場合には、一部基本領域学会において、シーリングを超過して専攻医を採用している)ことも明らかになりました(2018年度は外科や産婦人科などの一部領域を除き、東京・神奈川・愛知・大阪・福岡の5大都市圏では、シーリングを「過去5年間の後期研修医受け入れ実績の平均」とした、関連記事はこちら)。プログラム制(年次ごとに定められた研修プログラムに則って、定められた施設で研修を行う仕組み)の専攻医に限定すれば、シーリングを遵守していると考えられますが、「医師の地域偏在を助長しない」という趣旨に遡って考えれば、「カリキュラム制の専攻医も含めてシーリングを設定し、それを遵守する」ことが求められるでしょう。
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この点、牧野憲一委員(日本病院会常任理事、旭川赤十字病院院長)は「シーリングを超過した採用は許されない。超過を防止する仕組みが必要」と指摘。山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「専門部会で、シーリングの遵守状況を確認する必要があるのではないか」と提案しました。採用状況が揺れ動く中では十分な確認は行えず、かと言って専攻医の採用が決定してから「シーリングを超過しているので、●名の採用を取り消せ」と関係学会に要望することは難しく、厚労省ではタイミングを見て「専門部会でシーリングの遵守状況を確認する」考えを示しています。

なお、牧野委員は「5年後、10年後に地域でどういった医師が求められているのかを明らかにした上で、専門医養成の在り方を考える必要がある」とも指摘しており、「診療科別の医師需給」「医師の働き方改革」なども含めた、総合的な検討が今後求められていくでしょう。
 
  
 

 

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