消費税問題、税率が20%、30%に上がることも踏まえ「抜本的な対応」も検討すべき―日病・相澤会長



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 医療に係る消費税問題について、病院経営が逼迫している点を踏まえて、当面は三師会(日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会)と四病院団体協議会(日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会)の提言に沿って「特別の診療報酬プラス改定を維持した上で、個別医療機関の補填の過不足を調整する」ことで対応すべきだが、消費税率が今後20%、30%と上がっていくことも見据え「抜本的な対応」についても協議していく必要がある―。

 日本病院会の相澤孝夫会長は10月2日の定例記者会見で、このような考えを述べました。

10月2日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長
10月2日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長
 

当面は、病院経営の厳しさ踏まえて三師会・四病協の提言に沿った対応が必要

 保険医療については「消費税は非課税」であることから、医療機関等が納入業者から物品等を購入する際に支払った消費税は、患者や保険者に転嫁できず、医療機関等が最終負担しています(いわゆる「控除対象外消費税」と呼ばれる)。このため、物価や消費税率が上がれば、医療機関等の負担が大きくなるため、1989年の消費税導入時から「医療機関等の消費税負担を補填するために、特別の診療報酬プラス改定を行う」(以下、消費税対応改定)こととなっています(消費税導入時の1989年度、消費税率引き上げ時の1997年度および2014年度)。
 
しかし、診療報酬の算定状況は個々の医療機関等で区々であることから、個別医療機関の消費税負担を過不足なく調整することは極めて困難です。2014年度の消費税対応改定の結果分析でも、▼病院全体の補填状況は85.0%にとどまる(2016年度)▼特定機能病院に至っては61.7%の補填しかなされていない(同)—ことが明らかになっています(関連記事はこちらこちら)。

来年(2019年)10月には「8%から10%への消費税率引き上げ」が予定されており、この状況を放置すれば、ますます「病院経営の逼迫」「補填のバラつき」が進む恐れがあります。そこで三師会と四病協では、こうした問題を解消するために、次のような仕組みを新たに創設することを提言。厚生労働省も来年度(2019年度)の税制改正に向けて同様の要望を行っています(関連記事はこちらこちら)。

(1)特別の診療報酬プラス改定(消費税対応改定)による補填方法を維持する

(2)その上で、個別の医療機関ごとに、▼診療報酬本体に含まれる消費税補填相当額▼控除対象外消費税の負担額(医薬品・特定保険医療材料を除く)—を比較し、医療機関の申告に基づいて「個別の過不足」に対応する

 
 相澤会長は、昨今、病院経営状況が極めて厳しくなっている背景には、2014年度消費税対応改定による「補填不足・バラつき」が大きく影響しているとし、当面、「三師会・四病協提言に沿った対応をとるしかない」と強調しました。

 その一方で、消費税率が将来20%、30%と引き上げられていった場合、「診療報酬プラス改定の維持は難しくなる」とも見通し、「抜本的な対応」について改めて検討していくことが必要との考えも示しています。

 消費増税に対応するために診療報酬のプラス改定を行えば、それは患者負担・保険者負担にも跳ね返りますが、これは「消費税非課税」の趣旨と矛盾する側面もあります。このため、日病内部には「診療報酬プラス改定での対応には限界がある。別の手法を考えた方がよい」との指摘も強いと言います。相澤会長は、「『消費税率を大幅に引き上げる』となってから検討したのでは遅い」とし、国民も交えて、抜本的な検討を早急にしていくことの重要性を強調しています。

医師の働き方改革、安易に結論を急がず、慎重な検討が必要

 また「医師の働き方改革」について、厚労省の検討会(医師の働き方改革に関する検討会)では、これまでに▼宿日直許可基準を現在の医療実態を踏まえて見直す▼自己研鑽について「労働に近いもの」「純粋な自己研鑽に当たるもの」などに区分けしていく—方向が示されていますが、相澤会長は「ある程度の幅を持たせるべき」と指摘しています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

 例えば、前者の宿日直許可基準に関しては、仮に「救急外来でどこまでの処置は業務に該当しない」「入院患者の急変について、どこまでの対応は業務に該当しない」などと厳密なラインを引いたとしても、医療現場では「救急外来にも夜間の患者急変時にも必要な対応を必ずとる」(「看護師に指示を出すのみ」などの対応はあり得ない)ため、そうしたラインは「極めて非現実的である」と相澤会長は指摘。

 また、業務の内容などは、医療機関等の立地条件(都市部で医療資源が豊富なのか、地方で医療資源が少ないのか、など)や病院の種類(急性期か慢性期か、など)に応じて大きく異なり、一律のラインを引くことは極めて難しいでしょう。さらに、例えば後者の自己研鑽については、さまざまな要素が複雑に絡み合っており、一律に●●は労働、●●は純粋な自己研鑽と言いきることは難しく、「安易にラインを引いた場合、医師の業務範囲が狭くなり、現場が回らなくなる(さらに医療の質も下がってしまう)」懸念もあると相澤会長は指摘します。

相澤会長は、医師の働き方改革には、このような難しい問題があり「安易に結論を急げば将来に禍根を残す」とし、慎重に議論していく必要性を訴えています。

  
 

 

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