2017年度の医療費は、前年度比2.3%増の42兆2000億円に―厚労省



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 昨年度(2017年度)の医療費は、前年度に比べて9500億円・2.3%増加し、42兆2000億円となった―。

 こういった状況が、厚生労働省が9月15日に発表した「医療費の動向」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(前年度の状況に関する記事はこちら、前々年度の状況に関する記事はこちら)。医療費の伸び率は従前の水準に戻った格好です。

2015年度・16年度の影響が消え、2017年度医療費の伸び率は従前と同水準に

 昨年度(2017年度)の医療費は42兆2000億円で、前年度に比べて950億円・2.3%の増加となりました。1人当たりで見ると33万3000円で、やはり前年度に比べて8000円・2.4%の増加となっています。

 今般発表された数値は、国民医療費の98%に該当する「概算医療費」と呼ばれるもので、労災や全額自己負担などの費用は含まれていません。したがって2020年秋に公表される予定の「2019年度国民医療費」は43兆600億円(42兆2000億円÷0.98)程度になると見込まれます(関連記事はこちらこちら)。

 年度毎の医療費の伸び率を見てみると、▼2013年度:2.2%増(2012→13)▼2014年度:1.8%増(2013→14)▼2015年度:3.8%増(2014→15)▼2016年度:0.4%減(2015→16)▼2017年度:2.3%増(2016→17)—という状況です。2015年度には、画期的なC型肝炎治療薬のハーボニーやソバルディの登場によって医療費が大きく伸び(関連記事はこちら)、2016年度には、その反動(ハーボニーやソバルディの影響が消滅)によって医療費が減少に転じました(関連記事はこちら)。昨年度(2017年度)には、こうした影響がなくなり、従前の水準に戻ったと言えそうです。

2017年度の医療費伸び率は2.3%で、従前の水準(2014年度以前)に戻った
2017年度の医療費伸び率は2.3%で、従前の水準(2014年度以前)に戻った

 
 昨年度(2017年度)の医療費を制度別に見ると、被用者保険が12兆8000億円(本人6兆9000億円、家族5兆30000億円)、国民健康保険が11兆3000億円、後期高齢者医療(75歳以上の高齢者)が16兆円、公費が2兆1000億円となっています。

 それぞれについて前年度からの伸び率を見ると、被用者保険が3.9%増(本人5.3%増、家族1.4%増)、国保が2.2%減、後期高齢者医療が4.4%増、公費が1.8%増となりました。

 また、制度別に1人当たり医療費を見ると、被用者保険が16万7000円(前年度に比べて2.5%増)で、うち本人が15万8000円(同2.6%増)、家族が16万5000円(同2.1%増)、国保が34万9000円(同3.0%増)、後期高齢者医療が94万2000円(同1.4%増)という状況です。

1人当たり医療費そのものは75歳以上の後期高齢者で大きいが、伸び率は小さい
1人当たり医療費そのものは75歳以上の後期高齢者で大きいが、伸び率は小さい
 
 高齢化の進展によって75歳以上人口が増加していくことから、後期高齢者の医療費全体も必然的に大きくなりがちです。しかし1人当たりで見てみると1.4%増にとどまっており、被用者保険の2.5%増、国保の3.0%増に比べて小さな数値となっていることが分かります。この背景には、▼重複受診・頻回受診の是正▼在院日数の短縮—などといった「医療費適正化」対策が功を奏していると考えられます。今年度(2018年度)からは新たな医療費適正化計画がスタートし(関連記事はこちら)、さらに現在、高齢者の保健事業(フレイル対策など)と介護予防事業との一体的実施(これにより健康寿命を延伸し、ひいては医療費を適正化させることが狙い)が検討されており、今後の動向にさらに注目する必要があります(関連記事はこちらこちら)。

医科入院の1日当たり医療費は前年度から2.4%増、医科入院外は2.0%増

 診療種類別に医療費を見てみると、医科入院が17兆円(医療費全体の40.2%)、医科入院外が14兆4000億円(同34.1%)、歯科が2兆9000億円(同6.9%)、調剤が7兆7000億円(同18.3%)、訪問看護が2200億円(同0.5%)などとなっています。

 診療種類別医療費の対前年度伸び率は、医科入院が2.6%増(4200億円増)、医科入院外が1.6%増(2300億円増)、歯科が1.4%増(400億円増)、調剤2.9%増(2200億円増)、訪問看護が16.4%増(同300億円増)などという状況です。
2017年度医療費3 180921
 
 次に、受診延日数(「延べ患者数」に相当)の伸び率を診療種類別に見ると、全体では前年度に比べて0.1%の減少。医科入院では0.5%の増加、医科入院外で0.5%の減少、歯科では0.1%の増加、調剤では1.1%の増加となっています。

一方、診療種類別の1日当たり医療費を見ると、全体では1万6500円(前年度に比べて400円・2.4%増)、医科入院が3万6200円(同700円・2.0%増)、医科入院外が8700円(同200円・2.1%増)、歯科が7000円(同100円・1.3%増)、調剤が9200円(同200円・1.8%増)、訪問看護が1万1100円(同0円、0.4%増)となりました。医科の入院・入院外の医療費で、他よりも伸び率が大きくなっています。

1施設当たり医療費の伸び率、公的病院で2.9%、大学病院で2.6%

 次に、医療機関の種類別に1施設当たり医療費を見てみると、次のようになっています。「1施設当たり医療費」は、「医療機関1施設当たりの収益」と読み替えることができ(ただし、保険診療収入以外の収益が別途ある)、公的病院において他主体よりも大きな収益増となっていることが伺えます。

▽大学病院:181億2859万円(前年度に比べて4億5392万円・2.6%増)

▽公的病院:54億389万円(同1億5191万円・2.9%増)

▽法人病院:17億4689万円(同4173万円・2.4%増)

▽個人病院:7億4641万円(同1835万円・2.4%減)

▽医科診療所:1億160万円(同85万円・0.8%増)

▽歯科診療所:4086万円(同57万円・1.4%増)

▽保険薬局:1億3479万円(同271万円・2.1%増)

2017年度の1施設当たり医療費(保険診療収入と読み替えることができる)は、公的病院や大学病院で伸び率が大きい
2017年度の1施設当たり医療費(保険診療収入と読み替えることができる)は、公的病院や大学病院で伸び率が大きい
 
 また病院の種類別に2017年度の推計平均在院日数を見てみると、大学病院では15.7日(同0.3日短縮)、公的病院では18.5日(同0.2日短縮)、法人病院では47.4日(同0.1日短縮)、個人病院70.3日(同2.4日短縮)などとなっています。この数字からは、▼(当然とも言えるが)大学病院・公的病院は急性期に特化▼法人病院の中には、「急性期主体」の病院や「回復期・慢性期に軸足を置いている」病院など、さまざまな形態がある―ことが伺えるでしょう。

平均在院日数、最長は高知、最短は東京で、依然として19.8日の格差

大学病院・公的病院では推計平均在院日数が短く、急性期に特化している状況が伺える
大学病院・公的病院では推計平均在院日数が短く、急性期に特化している状況が伺える
 

 
 なお、2017年度の推計平均在院日数を都道府県別に見ると、最長は高知県の43.5日(前年度に比べて0.1日短縮)で、ほか▼山口県42.4日(同0.1日短縮)▼鹿児島県42.0日(同0.8日短縮)―などで長くなっています。

一方、最短は東京都の23.7日(同0.1日短縮)で、ほか▼神奈川県24.0日(同0.1日短縮)▼愛知県25.1日(同0.1日短縮)―などで短くなっています。

 最長の高知県と最短の東京都との間には、19.8日間の差異があります。患者の疾患構成や重症度が、都道府県間でそれほど変わるとは考えにくく、「病床利用率・稼働率を維持するために在院日数のコントロールしている」可能性が伺われます。メディ・ウォッチでは、度々お伝えしていますが、在院日数の短縮は、「院内感染」「ADL低下」のリスクを低下させ、患者の早期社会復帰(職場復帰を含めて)を可能にする、つまり「医療の質」を高める効果があります。「在院日数が短縮し、新規患者獲得をしても、なお病床稼働率が低下してしまう」場合には、病床数が地域ニーズを超えている(オーバースペックになっている)可能性も考えられ、「病床数の適正化」を真剣に考える時期に来ていると言えるでしょう(関連記事はこちら)。

2017年度の推計平均在院日数を都道府県別に見ると、依然として大きな格差のあることが分かる
2017年度の推計平均在院日数を都道府県別に見ると、依然として大きな格差のあることが分かる
 
 

 

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