医療機関から金銭授受を受ける医療情報サイトは広告、「体験談」等は掲載不可―医療情報提供内容検討会(1)



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 エリア・診療科・診療内容などで医療機関を検索できるポータルサイトにおいて、医療機関等から金銭授受等を受けている場合などには「広告規制」の対象となる。そこに、診療内容や効果に関する「患者の体験談や口コミ」などを掲載することは認められない―。

 9月12日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった方針が概ね了承されました。ただし、「規制対象の一部を明確にした」に過ぎず、これ以外の情報提供がすべて認められる、あるいは認められないという判断が示されたわけではありません。さまざまなwebサイトがあり、個別ケースごとに可否を判断していくことになる点に留意が必要です。

9月12日に開催された、「第11回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」
9月12日に開催された、「第11回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」
 

医療機関等のホームページ、要件を満たしても「診療内容等に関する体験談」は掲載不可

 医療機関では、患者の生命・健康に直結するサービスを提供するため、不確かな情報提供を行うことは許されず、広告可能な事項は厳格に限定されています(広告規制)。

医療機関ホームページなどのwebサイトは、従前、▼患者や国民が自らアクセスしなければたどり着けない▼患者の医療機関選択に資する有用な情報が掲載される―といった点を考慮し、「広告規制」の対象には含まれていませんでした。しかし、美容整形などの分野で、患者等の誤解を招くような、目に余るwebサイトが多く、今年(2018年)6月から広告規制の対象に含めることとなりました(掲載可能な事項が限定される)。

医療機関ホームページ等の広告規制の対象となる
医療機関ホームページ等の広告規制の対象となる
 
 ただし、情報の有用性等に鑑み、「情報の内容について容易に照会できるよう、問い合わせ先(電話番号やメールアドレスなど)を記載する」「自由診療では、通常必要となる治療内容や費用、リスクなどを分かりやすく示す」などの要件(以下、限定解除要件)を満たした場合、「広告可能事項の限定」が解除され、広範な情報を掲載することが可能です(関連記事はこちらこちらこちら)。

 この点、広告規制見直し論議の中で、「診療内容や効果に関する患者の体験談や口コミ」については、▼患者の医療機関選択に当たって影響が大きい▼個人の主観に基づくもので、情報の有用性が限定的である▼患者に誤認を生じさせ、適切な医療選択を阻害する恐れがある―ことから、医療機関ホームページ等において、上記の限定解除の要件を満たしたとしても「掲載できない」取扱いとなりました。例えば、「私は●●病院で◆◆療法を受け、難病が完治しました」などの体験談は、それが真実であったとしても、医療機関のホームページ等に掲載することはできません。一方、「●●病院は、スタッフがとても親切で明るい雰囲気です」などの口コミは、診療内容・効果に関するものではないため、掲載が可能です。

医療の内容・効果に関する体験談は、掲載してはならない
医療の内容・効果に関する体験談は、掲載してはならない

 

医療機関ホームページでなければ、「診療内容等に関する体験談」は掲載可能か

 ところで、例えば「医療機関が自院のホームページ等には掲載しないが、広告料などを支払い、医療情報サイトに『自院を褒める内容の体験談』等を掲載させる」といったケースは、実質的に上記と同じといえます(読者からすれば、医療機関ホームページに掲載される場合よりも信頼しやすく、誤解を生じる可能性が高い)。

一方で、患者等が「闘病記」などを個人のブログやSNSに掲載することは原則として禁じられず、そこでは医療機関名を出した診療内容なども掲載されることでしょう(日本国憲法第21条の表現の自由で保障されている、ただし誹謗中傷などは許されない)。

この線引きをどう考えるかが、検討会で大きな議論を呼んでいます。9月12日の検討会で、厚労省は、次のようなケースについては「診療内容・効果に関する体験談、口コミの掲載は認められない」との考えを明確にしました。検討会でも概ね了承され、近く「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)に関するQ&A」に追加されます(関連記事はこちら)。

(1)医療機関の検索が可能なwebサイトのトップページは、特定性・誘因性がなく、広告に該当しない(「エリア、診療科、診療内容などを選択する」といったイメージのサイト)

(2)検索後等に、表示される「検索結果」(医療機関名が一つ、あるいは複数表示されるなど)のページは、(3)(4)の特定性・誘因性がある場合には広告に該当する

(3)「医療機関の名称が特定可能である」場合には、特定性があると言える

(4)当該webサイトに医療機関が金銭等を支払う場合(広告料はもちろん、例えば「医療機関情報ページ」「予約システム」「医療相談」などが一体化したwebサイトの「予約システムのみに費用を支払う」というケースなども含む)には、webサイト全体に誘因性があると言える

(5)(2)の検索結果等のページは、(上述の)限定解除要件を満たせば広告可能事項の限定が解除される

(6)(5)に該当(限定解除)しても、診療内容・効果に関する患者の体験談や口コミは掲載できない

 ここでポイントとなるのは、(4)のように「広告料ではなくとも、一定の金銭授受等がある」場合には、広告規制の対象となり、「限定解除要件を満たさなければ、広告可能事項は限定される(5)」「限定解除要件を満たしたとしても、診療内容・効果に関する患者の体験談などは掲載できない(6)」ことが明確にされたのみ、という点です。

逆に言えば、これ以外のケースについては、厚労省は具体的な判断を示していないのです。大手の検索サイトの中には、無料で医療機関等の情報を書き込み、それをPRに活用できるサービスを提供しているところもあります。このサービスは、上記(4)の「金銭授受」要件を必ずしも満たしていませんが、これをもって「広告規制の対象とならない」、「体験談を掲載してもよい」と判断されたわけではない点に留意が必要です。個別の案件(医療情報サイトなど)ごとに、特定性があるか、誘因性があるかなどが判断されることになります。

この点について木川和弘構成員(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁護士)は、「過度な広告規制とならないよう、患者の体験談や口コミ内容に操作が及んでいるか、否かを、規制対象とすべきかどうかの判断軸とすべき」旨を強く提案しました。例えば、自院に都合のよい口コミのみをピックアップしたり、自院に批判的な口コミは削除したりといった「操作」が行われている場合には、患者の誤解を招きやすく「掲載は認めない」、逆に、批判的な内容なども含めて、あらゆる口コミ等を操作せずに掲載することは認める、と判断してはどうか、といった提案です。金銭授受以外にも、医療機関の意向を汲んだ、不適切なwebサイト等が登場する(あるいは、すでにしている)可能性もあり、今後の検討テーマになる可能性があります。

 
 患者の体験談・口コミの掲載可否については、現時点で次のように整理できるでしょう。

【診療内容・効果とは関係のない内容】:掲載可

【診療内容・効果に関する内容】
▼医療機関等のホームページ:掲載不可
▼医療機関等から金銭授受などを受けているwebサイト(医療情報サイトなど):掲載不可
▼医療機関等から金銭授受などを受けていない個人のブログやSNS:掲載可(誹謗中傷などは不可)

 なお、医療機関等から金銭授受などを受けていない個人のブログ等でも、いわゆる「行動ターゲティング広告」のように、読者・閲覧者の興味を引く広告が示されることがあります。この一環として「偶然、体験談に登場する医療機関等と同一の医療機関が広告表示された場合、その体験談等はどう取り扱われるのか」といった複雑な問題もありますが、これらを一般論として整理することは難しく、現時点では「個別に判断する」よりないでしょう。

 
 

 

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