在宅医療推進に向け、都道府県は「在宅医療の現状の見える化」「市町村支援」等に注力を―在宅医療ワーキング



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 在宅医療・介護連携の推進状況や、在宅医療提供体制の整備状況を見ると、都道府県別に相当のバラつきがある。まずは、先進的な取り組みを行っている都道府県の事例を参考に、▼医療政策部局と介護保険担当部局との連携推進▼在宅医療の充実に向けた市町村の支援▼在宅医療の取り組み状況の見える化▼退院支援ルールの策定・遵守などの在宅医療提供体制の整備―を進めるよう求めてはどうか。

 9月10日に開催された「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下ワーキング)で、こういった議論が行われました。

9月10日に開催された、「第6回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」
9月10日に開催された、「第6回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」
 

都道府県では、医療・介護担当部局の連携や市町村支援の充実を

 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となるため、今後、医療・介護ニーズが急増します。こうしたニーズに効率的・効果的に対応するために「病院・病床の機能分化、強化および連携の強化」「地域包括ケアシステムの構築」を進める必要があり、その一環として全都道府県において「地域医療構想」が策定され、現在、その実現に向けた議論が各地域医療構想調整会議で鋭意進められています。

 地域医療構想では、地域の一般・療養病床を▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期―に再編していくことに加え、在宅医療提供体制の充実も重要テーマの1つに据えられています。高齢化の進展によって在宅医療ニーズが増加することはもちろん、地域医療構想では、例えば「療養病床に入院する医療区分1患者の7割は在宅や介護施設へ移行する」こととされており、さらに「追加的」な在宅医療ニーズが発生します。2025年度における在宅医療ニーズは、前者(高齢化の進行)で約100万人、後者(追加的)で約30万人と見込まれており、こうした人が適切な医療・介護を受けられるように、在宅医療・介護提供体制を整備していく必要があるのです。

在宅医療・介護提供体制の整備量は、2018年度からの第7次医療計画に記載することとなっています。例えば、「▼退院支援▼急変時の対応▼看取り―に関する数値目標」「目標達成に向けた施策」「多職種による取組を確保するための▼訪問看護▼訪問歯科診療▼訪問薬剤管理指導—など主要職種についての数値目標」「達成に向けた施策」などを可能な限り記載することが求められます。また厚労省は、各項目についての具体的な評価指標例も示しており、例えば「退院支援」では、ストラクチャー評価指標として▼退院支援を実施している診療所・病院数▼退院時共同指導を実施している診療所・病院数▼退院後訪問指導を実施している診療所・病院数—などが、プロセス評価指標として▼退院支援(退院調整)を受けた患者数▼退院時共同指導を受けた患者数▼退院後訪問指導を受けた患者数—などがあげられています(関連記事はこちらこちらこちら)。

しかし、都道府県の現状を眺めると、▼目標設定が十分でない都道府県もある▼退院支援ルールの設定等が十分でない都道府県もある▼在宅医療が必要な患者の重症度などを把握している都道府県は少ない―といった課題も浮上しています(関連記事はこちらこちら)。

ところで、地域医療構想を包含する医療計画(第7次医療計画)は、6年を1期とした長期計画なため、3年目に中間見直しを行うこととなっています。こうした課題も、最終的には中間見直し時点で解消することが必要となりますが、「その間、なにもしない」わけにはいきません。放置の付けが後で重くなり、結果、在宅医療提供体制の整備が間に合わず、住民が不利益を被ってしまう可能性もあるためです。そこでワーキングでは、「今の時点で、都道府県が進めるべき取り組み」を整理し、都道府県に実行を促すこととしているのです。

9月10日のワーキングでは、厚労省から次のような「取り組み」案が示され、これに基づいた議論を行いました。

(1)第7次医療計画の改善(中間見直しの際に在宅医療の具体的な整備目標を設定する)
(2)都道府県全体の体制整備
(3)在宅医療の取り組み状況の見える化
(4)在宅医療の提供体制の整備
(5)在宅医療に関する人材の確保・育成(地域医療介護総合確保基金の活用も可能)
(6)住民への普及啓発(例えば「人生の最終段階における医療・ケア」についての医師決定支援なども含む)

 このうち(2)では、▼都道府県の医療政策部局と介護保険担当部局との連携推進▼医師会や病院、診療所等の課題を集約し、在宅医療を推進するための年間事業スケジュール策定▼在宅医療の充実に向けた市町村支援―を行うことが求められます。例えば、市町村が群市区医師会と連携を図るために、都道府県がその調整や環境整備を行っていくことが必要でしょう。埼玉県では、群市区医師会の中に「在宅医療連携拠点」の設置を依頼したり、ICTを活用した医療・介護ネットワークを構築や、急変時のベッドを確保することなどで、在宅医療を担う医師とケアマネジャー等との連絡・調整の円滑化という環境整備を行うとともに、順次、こうした事業の運営を市町村に移管しています。厚労省医政局地域医療計画課医師確保等地域医療対策室の松岡輝昌室長は、「将来的に市町村に在宅医療提供体制の充実業務を担ってもらおうという筋道が見える」と埼玉県の取り組みを高く評価しています。

在宅医療・介護の現状を、KDBを活用して「見える化」を進められないか

また(3)は、市町村単位での在宅医療・介護提供体制の整備状況を明らかにし、そこから「課題の抽出→在宅医療・介護整備に関する計画の改善」につなげることを目指すものです。上述のように、例えば「療養病床に入院する医療区分1の7割の患者」は、将来的に在宅等に移管していく計画となっていますが、在宅医療・介護提供体制が不十分で「行き場のない」状態になってはいけません。そこで、市町村単位で在宅医療・介護提供体制の実態を明らかにする必要があるのです(医療提供体制は2次医療圏単位で整備していくが、介護提供体制は市町村単位で整備されるため、在宅医療についても市町村単位で見ていく必要がある)。

この点、厚労省は▼KDB(国保データベース、国民健康保険団体連合会の保有する健診・医療・介護データを格納)を活用した在宅医療の詳細な分析▼医療機関や訪問看護ステーションへの個別調査(実施意向や将来計画など)▼市町村、関係団体等との情報共有体制の整備―などが考えられるのではないか、との考えを示しています。例えば岐阜県では、KDBの情報をかみ砕き、市町村にデータ(在宅医療を提供している医療機関の名称、往診や訪問診療の実施回数、在宅介護サービスの実施回数など)を示すとともに、「現在の課題」「今後、実行すべき取り組み」などを詳しく情報提供を行い、さらにスキルアップに向けた研修などを積極的に実施しています。

KDBを用いれば、市町村単位で「どの医療機関がどの程度、往診や訪問診療を実施しているか、介護サービスはどの程度、実施されているか」が、診療報酬の算定回数ベースで把握でき、まさに「リアルタイムで、地域の在宅医療・介護サービスの整備状況を見る」ことができます。しかしKDBの分析等には、相当の知識・スキルが必要となり、「すぐに全都道府県で実施せよ」と求めることは困難です(岐阜県は非常に先進的である)。ワーキングでは織田正道構成員(全日本病院協会副会長)や池端幸彦構成員(日本慢性期医療協会副会長)らから、「KDBをより見やすくするなどの工夫をしなければ、自治体レベルでの活用は困難ではないか」といった指摘も出ており、松岡医師確保等地域医療対策室長は、「工夫に向けて取り組んでいる」状況を説明しています。

入退院支援ルール、後方支援病院との連携ルールなどを早期に策定せよ

一方、(4)では、在宅医療提供体制の整備に向けて、▼入退院支援ルールの策定、支援▼後方支援病院等との連携ルール策定▼急変時の患者情報共有ルールの策定、運用—などを進めてはどうか、と厚労省は提案しています。

入他院支援ルールとは、病院等から円滑に在宅移行するために、例えば「退院後に在宅医療・介護が必要となるであろう高齢者が入院した場合には、入院後、直ちに、病院の関係者、在宅医療・介護の関係者が情報共有を行い、退院支援を行っていく」というルールを県内すべての医療・介護関係機関で定め、遵守するというものです。この点に関連して池端構成員は「診療所医師の高齢化や、医療機関から患家までの距離の問題など、在宅医療の推進には、さまざまな課題がある。例えば、『日中は開業医の先生が在宅医療を担当し、夜間は地域包括ケア病棟や療養病棟を持つ病院が急変対応などを担う』など、病院の積極的な在宅医療展開も重要となる」との考えを示しています。

また後方支援病院との連携に関しては、埼玉県が「急変時対応のベッドを群市区医師会で確保し、そこに補助金を支給する」という取り組みを行っています。今後、地域包括ケア病棟の整備に合わせて、縮小していく予定ですが、地域包括ケア病棟などの整備が進んでいない地域では参考にできるでしょう。補助金の原資としては、地域医療介護総合確保基金が活用されています。

 ワーキングでは、今後、(1)の「第7次医療計画の中間見直し」に向けた整理や、上記の入退院支援ルールなどについて議論を深め、できるだけ早期に「都道府県が進めるべき取り組み」をまとめ、都道府県に提示することになります。

 
 

 

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