NDB・介護DBからデータ提供、セキュリティ確保した上でより効率的に―厚労省・医療介護データ有識者会議



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 NDBや介護DBからの「第三者データ提供」に当たっては、審査をより効率的に行うとともに、連結データ提供にあたっては「審査時間の短縮」に向けた運用面での配慮を行ってはどうか。またデータ提供を受ける第三者の「費用負担」については、申請を妨げることのないような水準を検討する必要があるのではないか―。

 9月6日に開催された「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」(以下、有識者会議)では、こういった議論が行われました。年内の報告書取りまとめに向けて、急ピッチで議論を進めていきます。

「積極的な第三者提供」と「セキュリティ確保」との両立が重要

 「患者がどのような疾病に罹患し、それに対しどのような医療を提供したか、さらに介護が必要な状態となった場合に、どういったサービスを提供し、どのような効果が得られたのか」といったデータを一元的に集約し、医療・介護等の質向上を目指す「全国保健医療情報ネットワーク」を2020年度に本格稼働させるべく、データベースの構築等に向けた議論が進んでいます(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

その一環として、有識者会議では、数多ある公的な医療・介護データベースのうち、まずNDB(National Data Base:特定健診・医療レセプト情報を格納)と介護DB(介護保険総合データベース:要介護認定情報と介護レセプト情報を格納)について、更なる利活用の推進に向けた方策や両データベースを連結する際の課題などについて検討を行っています。これまでに中間的な議論の整理を行い、▼NDB・介護DBの利活用を促進するために、根拠法(高齢者医療確保法、介護保険法)を改正し、利用目的に「第三者提供」なども含める▼両データベースについて、匿名性を維持するなどセキュリティを確保した上で、データの連結解析を可能とする―などの方針を固めています(関連記事はこちらこちら)。

さらに有識者では、今後、(1)研究者等に対するデータ提供(第三者提供)(2)データベースの整備・保守管理(3)オープンデータ等の取扱い―の主に3つの項目について、残された課題や対応方針を詰め、年内に報告書を取りまとめます。その後、社会保障審議会の医療保険部会および介護保険部会の了承を経て、来年(2019年)に高齢者医療確保法(NDBの根拠法)・介護保険法(介護DBの根拠法)の改正案を提出することになります。

9月6日の有識者会議では、(1)の「第三者提供」に関し、議論を深めました。

NDBについては、高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)が「厚労省・都道府県による医療費適正化計画の作成や調査・分析」に、介護DBについては、介護保険法が「都道府県・市町村の介護保険事業(支援)計画の作成、実施、評価など」に利用を限定しています。しかし、いずれのデータも医療・介護施策の推進や、サービスの質向上等に向けて極めて有用であるため、運用上、公益的研究などへの利用(第三者提供)が認められています。さらに今後、両データベースを、公益的研究に、より積極的に活用していく方針が固められています(関連記事はこちらこちら)。

両データベースには、個人が特定されない形(匿名化)でデータ格納が行われ、第三者提供時にも「個人特定の可能性がないか」を有識者が確認するという、二重の「情報漏えい防止策」が図られています。

しかし、例えばNDBと介護DBの連結分析を行うことで、個人特定のリスクが高まるため、「積極的な第三者提供」と「個人特定のリスク排除」とを、どう両立させるかが、これまで以上に重要なテーマとなっているのです。

厚労省保険局医療介護連携政策課の宮崎敦文課長は、9月6日の有識者会議に、両立に当たって議論すべき7つの論点を提示しました。
(i)NDB・介護DB単体のデータ提供申出に係る迅速な審査
(ii)連結データの提供申出に係る円滑な審査
(iii)効果的・効率的な利用者支援の実施(申請支援、データベースの基礎知識や解析時の留意点に関する研修等)
(iv)データを安全に提供・利用できる環境の整備
(v)自らデータの処理が可能な知識・技術を有する研究人材の養成
(vi)第三者提供に係る業務の実施体制のあり方
(vii)第三者提供を受ける利用者の、金額設定を含めた費用負担のあり方

 また、▼試行的な分析に向けたデータセットの在り方▼連結に当たっての技術的課題(セキュリティ確保を含めて)—などは、次回以降に議論されます。

 
 まず(i)(ii)の「審査」について見てみましょう。両データベースに格納されているデータは、個人を特定できないものとは言え、医療や介護に関するもので「慎重な取り扱い」が求められます。このため、有識者によって、個別のデータ申請ごとに▼研究目的は公益に資するか▼データの保管体制などは十分か▼研究成果の発表によって個人が特定されるなどのおそれはないか―などを審査しています。現在、申請から利用開始までに4-6か月程度の時間が必要とされています。現在でも、サーバーの増強などにより時間短縮が図られています(国のデータ抽出・処理に係る時間は2015年度には平均263日であったが、16年度には79日に短縮)が、積極的な利活用のために「さらに審査時間の短縮ができないか」「連結データ提供の場合には、より効率的な審査の運用ができないか」が、課題の1つとなるのです。宮崎医療介護連携政策課長は「第三者提供が法定化された場合、有識者による審査も、より厳格に行うことが求められると考えられる。それによって、かえって審査が長期化してしまわないような工夫も必要となる」との見解を示しています。

NDBの第三者提供件数は年々増加し(グラフ向かて左側)、データ抽出などに係る時間は短縮している(グラフ向かって右側)
NDBの第三者提供件数は年々増加し(グラフ向かて左側)、データ抽出などに係る時間は短縮している(グラフ向かって右側)
 
 さらに、これは(iii)や(v)の「人材育成」にも関連するテーマとも言えます。例えば申請者が、探索目的で広範なデータ提供を申請してきた場合、「研究目的とデータとの関連」が曖昧になりがちで、審査時間も必然的に長くなります。そこで、山本隆一座長代理(医療情報システム開発センター理事長)や石川広己構成員(日本医師会常任理事)、松田晋也構成員(産業医科大学医学部公衆衛生学教授)らは「研修の重要性」を改めて強調しました。例えば「NDBへのデータ格納様式」や「●●研究目的のためには、○○に着目するとよい」などの基礎知識が研究者に浸透することで、結果として審査時間の短縮が実現すると考えられるのです。

 
 また(iv)は、現在DVDで研究者に提供されているデータを、例えば「クラウド環境」で提供することができないか、という論点です。構成員からは「安全性」に十分に配慮すべきとの指摘が出されています。この点に限りませんが、「国民への十分な説明」も重要になると思われます。セキュリティ確保など、技術的課題とも関連するテーマで、次回以降、さらに議論が深められます。

データ提供申請書作成支援などは、国から民間に業務移管してもよいのでは

 一方、(vi)は、現在、「すべて国で実施」している第三者提供業務について、その内容によっては他の主体に移管できないか、という論点です。

 第三者提供にあっての国の業務は、大きく▼申請に当たっての研究者への支援(申請書類の作成支援など)▼申請内容の確認▼有識者による審査の運用▼厚生労働大臣による承諾▼データの抽出・処理▼研究成果物の監査、確認―に分類できます。このうち、「申請書類の作成支援」などは、例えば民間企業などにも委託が十分可能でしょう。一方、審査業務などを他に移管することは、データの性質上、極めて困難(事実上、不可能)と言わざるをえません。

NDBから第三者へのデータ提供の流れ(その1)
NDBから第三者へのデータ提供の流れ(その1)
NDBから第三者へのデータ提供の流れ(その2)
NDBから第三者へのデータ提供の流れ(その2)

 この点、武藤香織構成員(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター公共政策研究分野教授)は、例えば、研究成果などを広く国民に周知するノウハウについては「民間のほうが、国よりもはるかにうまい」と指摘。業務の内容と性質に応じて、切り分けしていくことが必要です。なお、こうした切り分けがなされた際にも、データ漏えい等に関するトラブルの「最終的責任には国にある」点が、多くの構成員から指摘されています(審査を行った有識者にも責任ありと、山本座長代理は強調)。

 
 一方、(vii)は、データの利活用が推進する中では「事務処理に係る実費程度を、申請した研究者に負担してもらってはどうか」という論点です。この点、「データの利用申請を躊躇しないような、低廉な金額とすべき。その際、▼自治体▼研究者▼民間企業―などで区分して、費用負担額に差を設けてはどうか」(武藤構成員)、「有識者で研究目的の公益性を審査しているのであるから、費用負担は求めなくともよいのではないか」(石川構成員)など、さまざまな意見が出ています。いずれにせよ「公益目的の研究者等に過大な負担は求めない」という点では一致していると言えるでしょう。

 
 

 

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