2018年8月までに1102件の医療事故報告、国民の制度理解が今後の課題―日本医療安全調査機構



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 今年(2018年)8月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は41件。医療事故調査制度発足から、累計1102件の医療事故が報告され、うち71.4%の787件で院内調査が完了。各医療機関の調査スピードがますますアップしている。ただし国民は、本制度を必ずしも十分には理解していない―。

 日本で唯一のセンターである「日本医療安全調査機構」が9月5日に、こういった状況を公表しました(機構のサイトはこちら)。

2018年8月の医療事故報告件数、外科で7件、内科や消化器科で5件

 すべての医療機関は、院長など管理者が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」のすべてをセンターに報告する義務を負います(医療事故調査制度、2015年1月スタート)。医療事故調査制度は、事故の原因を調査・分析する中で「再発防止策」を構築し、広く共有することを目的としています。

センターでは、これまでに重大な事故について詳細を分析し、(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析(3)注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析(4)気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入に係る死亡事例の分析—という4つの再発防止策を公表しています。

 医療事故調査制度の流れをお浚いすると、次のように大まかに整理できます(関連記事はこちら)。

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける
医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

▼医療事故の発生を確認した管理者は速やかに、センターに事故発生の旨を報告する

▼当該医療機関で事故原因を調査【院内調査】し、調査結果をセンターに報告する

▼当該医療機関は、調査結果に基づいて事故の内容や原因について遺族に説明する(調査結果報告書を提示することまでは不要とされている)

▼センターが事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを練る

 
 我が国唯一のセンターである日本医療安全調査機構は、毎月、医療事故報告の状況を極めて迅速に公表(前月の状況はこちら、前々月の状況はこちら)。今年(2018年)8月には、新たに41件の医療事故が報告され、制度発足からの累計報告件数は1102件となりました。

 2018年8月に新たに報告された事故の内訳は、病院からが40件、診療所からが1件で、制度発足からの累計では、病院から1036件(事故全体の94.0%)、診療所から66件(同6.0%)となっています。

 2018年8月に新たに報告された事故を診療科別に見ると、▼外科7件▼内科5件▼消化器科5件▼整形外科3件―などで多くなっています。制度発足からの累計を見ると、▼外科190件(同17.2%)▼内科137件(同12.4%)▼消化器科96件(同8.7%)▼整形外科92件(同8.3%)―などという状況です。
医療事故の現況(2018年8月)1 180905
 

センターへの相談件数は累計5629件、「国民の制度への理解」が依然、重要課題

 前述のとおり、センターに報告しなければならない医療事故は、医療機関内で生じたすべての死亡・死産事例ではなく、そのうち「院長などの管理者が▼予期しなかった▼医療に起因し、または起因すると疑われる—もの」に限定されます。火災などで瀕死の状態で救急搬送され、適切な治療を施したにも関わらず死亡してしまった場合には、一般に「死亡が予期される」ため報告する必要はありません。しかし、そうした患者であっても、明らかな処置上のミスなどがあり、通常の過程とは異なるプロセスで死亡した場合には、「予期しなかった」ものとして報告が必要となります。

 この点、医療現場では「患者が死亡したが、報告すべき医療事故に該当するのだろうか?」という疑問が生じるケースがあるでしょう。また、初めて事故報告をする際には「センターへどのように報告すればよいのだろうか?」と疑問を感じることがあると思われます。一方、遺族側が「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていない。もしかしたら事故を隠蔽しようとしているのではないか?」といった疑念を抱くことがあるかもしれません。

 こうした疑問・疑念を放置しては制度の信頼が揺らいでしまうため、センターでは相談対応を行っています。今年(2018年)8月には、新たに155件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計では5629件にのぼっています。

 2018年8月に寄せられた新たな相談の内訳は、▼医療機関から72件▼遺族などから75件▼その他・不明8件―となっています。

 医療機関からの相談内容を見てみると、最も多いのは「報告の手続き」に関するもので43件(医療機関からの相談の59.7%)。次いで「院内調査に関するもの」が22件(同30.6%)、「報告すべき医療事故か否かの判断」が10件(同じく13.9%)となりました。医療現場に制度が浸透してきたため、また制度の運用改善(医療事故該当性の判断などを標準化するための「支援団体等連絡協議会」を設置するなど)が行われたことにより、事務的な相談が多くなっています(関連記事はこちらこちら)。

 一方、遺族などからの相談内容に目を移すと、依然「医療事故に該当するか否かの判断」が大半を占め、61件(遺族などからの相談の81.3%)となっています。また、こうした該当性に関する相談の中には、「制度開始前の事例」「生存事例」など、そもそも報告対象とならないものも含まれており、「医療現場と一般国民との医療事故調査制度に対する認識のズレ」は、埋まるどころか、広まる一方と言えるかもしれません。医療現場が正しく報告を行い、適切に制度を運用していても、一般国民の信頼がなければ制度の礎は脆弱になってしまいます。これまで以上に、一般国民に医療事故調査制度を周知していくことが必要です。
医療事故の現況(2018年8月)3 180905
 

センターへの調査依頼は新たに3件、全73件中7件でセンター調査が完了

 前述したように、医療事故調査制度の目的は「再発防止」にあります。このため、まず事故が発生した医療機関が、自ら原因究明に向けた調査【院内調査】を行ことが求められます。院内調査の過程で自院の体制を点検し、再発防止策を構築することが再発防止の近道と考えられるからです。

 今年(2018年)8月に新たに院内調査が完了した事例は32件で、制度発足からの累計では787件となりました。これまでに報告された全1102件の医療事故のうち71.4%で院内調査が完了しており、院内調査のスピードは増加の一途を辿っており、医療機関サイドの努力が伺えます。
医療事故の現況(2018年8月)2 180905
  
 ところで、遺族の中には「院内調査の結果に納得できない」「院内調査が遅い。時間稼ぎをしているのではないか」と感じる人もいることでしょう。またクリニックなど小規模医療機関等では「自院で院内調査を実施することが難しい」ケースもあります(医師会や病院団体などの支援団体によるサポート体制もある)。

 そこで、センターでは、「遺族や医療機関からの調査依頼を受け付ける」体制も整えています。ここでは「院内調査が時期・内容ともに適正に実施されたか」という観点での調査が中心となります。

 今年(2018年)8月に、センターになされた調査依頼は遺族からの3件でした。制度発足からの累計調査依頼件数は73件(遺族から58件・79.5%、医療機関から15件・20.5%)です。進捗状況を見ると、▼センター調査終了が7件▼院内調査結果報告書の検証中(院内調査が適切に行われたかどうかを確認)が64件▼院調査結果報告書の準備作業中が2圏—となり、順調にセンター調査が行われている状況が分かります。

 
 

 

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