2019年度予算、介護福祉士取得等に向けた支援や処遇改善加算拡充など実施せよ―老施協



Pocket

 介護人材の確保に向けて、介護福祉士等を目指す介護職員へのバウチャー(いわばクーポン券)支給、元気高齢者を介護職員等として雇用した場合の助成金拡充、介護職員処遇改善加算の充実と対象職種の拡大、ICT等導入事業者への支援や評価などを行うことで、介護職を「なりたい職業」にステップアップする必要がある―。

 全国老人福祉施設協議会(老施協)は8月17日に、来年度(2019年度)の予算概算要求・税制改正に向けて、こういった要望を厚生労働省に宛てて行いました(老施協のサイトはこちら)。
老施協の2019年度予算概算要求要望 180817の図表
 

介護人材確保に向け、若者・元気高齢者・外国人のそれぞれへのアプローチが必要

 深刻な介護人材不足が指摘され、例えば特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の5%では「人材不足のために、施設に一部で入所制限を行っている」といった実態も明らかになっています(関連記事はこちら)。安倍晋三内閣もこうした点を重く見て、アベノミクスの新三本の矢の1つに「介護離職ゼロ」を位置付け、さまざまな対策を講じていますが、まだ十分な効果は現れていないようです。

老施協では、介護人材確保のためには「現実的な選択肢として介護職を『なりたい職業』にステップアップする」ことが唯一の道であるとし、政府が「目に見える『介護への注力』を行う」ことが必要不可欠と訴えます。そのために、来年度(2019年度)予算概算要求において、まず次の10項目に重点的な配分を行うよう要望しています(関連記事はこちら)。

(1)新規従事者や介護福祉士資格者等の質のさらなる向上に向けた支援
(2)特養における【処遇改善加算】の係数見直し(引き上げ)
(3)3年間介護従事者として就労した場合に、介護福祉士養成校等の学費・奨学金等の一部を免除(返還)する
(4)高齢者(アクティブシニア)の採用にかかる助成金の充実
(5)介護職員総体としての負担軽減に向けた研究・導入助成の強化
(6)「全世代型」介護人材の参入促進・育成とリカレント教育の充実
(7)社会における介護の学術的な存在感を高めていくため、政府あるいは国家機関主導の学会の開催
(8)介護人材定着のための介護技術研修への支援
(9)外国人材の受入れに係る言語教育と住環境等の整備に係る支援
(10)介護従事者に対するハラスメントへの対応

 
老施協では、介護人材確保に当たっては(a)若者については、賃金・待遇等の向上を軸に、介護職の将来を具体的にイメージできるようにする(b)アクティブシニア(元気高齢者)については、働きやすい環境と介護への就労に関する現実感を生み出す(c)外国人材の活用—の3つのルートが考えられるとしています。

上記要望のうち、とくに(1)や(3)は(a)「若者対策」に該当すると言えるでしょう。(1)の資質向上支援では、例えば「介護従事者に対し教育バウチャー(いわばクーポン券)を支給し、介護福祉士やケアマネジャー等の資格や、博士課程等の学位取得に向けたチャレンジを促す」「介護福祉士資格保有者には、入職から3年間、待遇改善(OJTや研修派遣等にかかる費用の助成)を行う」「新規入職者へのOJT・マネジメントを担う教育・指導担当職員として、介護福祉士が中心となったチューターや中間管理職者養成のためのコンサルテーション等費用の助成を行う」ことなどを提案しています。

また(4)は(b)「アクティブシニア対策」に該当します。具体的には、▼高齢者の雇用に対し支給される雇用関係助成金「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」の拡充と要件緩和▼「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)」給付額の増額▼ユニバーサル就労支援を応用し、シニア世代と事業所とのマッチング・フォローへの助成▼セカンドキャリアとしての「介護」就業に向けた採用活動等への費用助成—を行うよう提案しています。

さらに(9)は(c)「外国人対策」として、例えば「受入れ事業者が、日本語習得のための研修体制整備、住環境整備を行う場合の支援」などを行うことを求めています。

一方、(5)では介護職員全体の負担軽減に向けて、▼介護ロボットやリフト等の導入支援充実▼介護ロボット・ICT導入に係るマネジメント職員の採用費用の助成—を提案。また(a)から(c)のすべての介護人材に対する教育を充実する必要があるとし、(6)では▼初任者研修の受講料全額補助▼生活援助従事者研修の推進にかかる費用助成▼喀痰吸引や認知症介護実践研修等の充実に向けた費用助成—などを行うよう求めています。

地域医療・介護連携、認知症ケアの充実、処遇改善や消費増税対応なども忘れずに

 このほか来年度(2019)年度に重点的に予算配分を行うべき事項として、次のような点も掲げています。

▽地域包括ケアの構築・推進に向けた医療・介護連携をこれまで以上に促すために、例えば「介護記録のICT化を促進し、介護サービス実績を医療とつなげるネットワークの構築」や「事業所における生産性向上に係るツールやIoT機器等の確保ならびに医療・介護連携に資する ICT等の基盤整備に係るコスト」などを支援する

▽認知症ケア充実のために、認知症高齢者の「発症時からの医療・介護情報」を共有するためのシステム・フォーマット・手帳等を導入している施設・事業所を評価する

▽人生の最終段階における医療介護の連携を促すため、「介護従事者等が医師・看護師等と連携して行う研修会開催にかかる費用」や「利用者等への情報共有、住民への普及啓発のための取り組みに向けた費用」を助成する

▽看取り介護の推進とQOD(Quality of Death、死の質)向上に向けた取り組みへの支援を行う

▽消費税増税(2019年10月予定)に伴い、各サービスの介護報酬の単価引き上げを行うとともに、【処遇改善加算】の算定対象職種を拡大する。さらに、地域区分の人件費割合をサービス実態に合わせて見直す

▽地域支援事業を推進するために、「認知症施策の推進」「生活支援の充実・強化」「在宅医療・介護連携の推進」「地域ケア会議の開催等」にかかる費用の助成を行う(認知症初期集中支援チームと各サービス職員、認知症サポーター等との有機的な連携を図るための研修、医療機関、栄養ケアステーション、介護保険施設等における管理栄養士等との連携や栄養改善・口腔ケアに関する研修、医療機関・介護保険施設等における理学療法士や機能訓練指導員等との情報共有・連携のための研修などの費用助成)

▽地域密着型特養ホーム等の介護サービス基盤整備、広域型特養ホーム等における建て替え等を支援する。

▽「自立支援に資する介護」(科学的介護)への評価の確立

▽小規模社会福祉法人への事業経営支援

▽過疎地・山間僻地の事業所における、介護報酬で賄いきれない人件費や燃料・光熱費負担などへの支援を行う

▽サービス付き高齢者向け住宅など、高齢者住まいへの指導監査を充実する(一部に過剰な給付等があると指摘される)

訪問介護や通所介護の費用も、医療費控除の対象とすべき

 一方、税制改正に向けては、次の5項目を要望しています。

(1)空き家抑制のための特例措置(特養ホーム等に入所したために、入所者の居住地が空き家となった場合でも、空き家抑制のための特例措置(空き家の譲渡所得の3000万円特別控除)を適用する)
(2)介護医療保険料控除額の増額
(3)医療費控除の見直し(医療系サービスと併用すれば控除が認められる【訪問介護】【通所介護】など、医療費控除が全く認められない【訪問介護(生活援助中心型、認知症対応型共同生活介護等)】についても医療費控除の対象とする
(4)給与所得者に対する介護や保育に係る費用の特定支出控除
(5)過疎地域等における介護職員の所得税優遇措置
 
 

 

MW_GHC_logo

 
 

【関連記事】

介護保険の被保険者年齢引下げなどで財源確保し、介護報酬プラス改定を―老施協

2019年度予算の概算要求基準を閣議了解、社会保障費は6000億円増の要求が可能

6割超の特養ホームで介護職員不足、うち5%では入所者受け入れ制限を実施―福祉医療機構

Pocket