肥満者は複合的な健康リスクを抱えており、血圧・血糖のリスクは高齢になるほど高まる—健保連



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 ▼高齢者では血圧の管理、またとくに被保険者では血糖も合わせた管理▼50歳代後半から60歳代の被扶養者では脂質の管理▼被保険者全般で肝機能の管理—に重点をおいた生活習慣病対策が、健保組合加入者において効果的である—。

健康保険組合連合会(健保連)が8月2日に公表した2016年度の「健診検査値からみた加入者(40-74歳)の健康状態に関する調査分析」から、こういった点が浮上しました(健保連のサイトはこちら)(前年度の分析に関する記事はこちら、前々年度の分析に関する記事はこちら)。

被保険者本人は「肝機能リスク」が被扶養者の2倍に

健保連は、主に大企業で働くサラリーマンとその家族が加入する公的医療保険制度(健康保険組合)の連合組織です。かねてよりデータヘルスに積極的に取り組んでおり(関連記事はこちらこちらこちらこちら)、今般、2016年度に特定健康診査(いわゆるメタボ健診)を受診した335万704名(416組合)のデータをもとに、健康状態(▼肥満▼血圧▼脂質▼血糖▼肝機能)を分析しました。

2018年6月末時点の介護医療院に関する条例の施行状況等、北海道や広島県などでは医療療養から「介護医療院への転換」に一定の制限がかかっている
2018年6月末時点の介護医療院に関する条例の施行状況等、北海道や広島県などでは医療療養から「介護医療院への転換」に一定の制限がかかっている
 
【肥満】

まず肥満の状況を見ると、全体の37.1%が「肥満」となっていますが、被保険者では40.6%が「肥満」なのに対し、被扶養者では17.5%にとどまっています。

肥満者と非肥満者とで、血圧や脂質、血糖などの健康リスク保有者の割合を比べると、非肥満者では「保健指導判定値以上」は72.3%ですが、肥満者では93.8%とほとんどが「保健指導判定値以上」という状況です。またリスクの内容を見ると、肥満者では複合的な健康リスク保有者が多いことが分かります。

肥満者(向かって右のグラフ)では、非肥満者(向かって左のグラフ)にくべらて、健康リスクを抱える人が多く、かつ複数リスク保有者が多い(緑、紫、赤の帯)
肥満者(向かって右のグラフ)では、非肥満者(向かって左のグラフ)にくべらて、健康リスクを抱える人が多く、かつ複数リスク保有者が多い(緑、紫、赤の帯)
肥満者(右の円グラフ)と非肥満者(左の円グラフ)とで、保有する健康リスクの内容を比較すると、肥満者のほうが「より複雑な健康リスク」を抱えている状況だ
肥満者(右の円グラフ)と非肥満者(左の円グラフ)とで、保有する健康リスクの内容を比較すると、肥満者のほうが「より複雑な健康リスク」を抱えている状況だ
 
 
【血圧】

次に血圧の状況を見てみましょう。

全体の66.8%は基準範囲内(収縮期130mmHg未満・拡張期85mmHg未満)ですが、16.1%が「保健指導判定値」以上(収縮期130mmHg以上・拡張期85mmHg以上)、17.1%が「受診勧奨判定値」以上(収縮期140mmHg以上・拡張期90mmHg以上が12.9%、収縮期160mmHg以上・拡張期100mmHg以上が4.0%)という状況です。

健保組合加入者の4割では、程度の差こそあれ、血圧に関する健康リスクを保有している
健保組合加入者の4割では、程度の差こそあれ、血圧に関する健康リスクを保有している
 
被保険者・被扶養者ともに年齢階層が高くなるにつれて「保健指導判定値」以上、「受診勧奨判定値」以上の割合が増え、70-74歳では被保険者、被扶養者ともに約半数が「保健指導判定値」以上、「受診勧奨判定値」以上となっています。
血圧のリスクは、被保険者(上段のグラフ)・被扶養者(下段のグラフ)ともに高齢になるほど高くなる(健保組合加入は75歳まで)
血圧のリスクは、被保険者(上段のグラフ)・被扶養者(下段のグラフ)ともに高齢になるほど高くなる(健保組合加入は75歳まで)
 
 
【脂質】

脂質については、基準範囲内(LDL120mg/dL未満・HDL40mg/dL以上・中性脂肪150mg/dL未満)は38.9%にとどまり、「保健指導判定値」以上(LDL120mg/dL以上、HDL40mg/dL未満、中性脂肪150mg/dL以上)が30.0%、「受診勧奨判定値」以上が31.1%(LDL140mg/dL以上、中性脂肪300mg/dL以上が27.0%、LDL180mg/dL以上、中性脂肪1000mg/dL以上が4.7%)となりました。

健保組合加入者の実に6割強が、程度の差こそあれ脂質に関する健康リスクを抱えている
健保組合加入者の実に6割強が、程度の差こそあれ脂質に関する健康リスクを抱えている
 
 被保険者・被扶養者ともに「40歳代ではリスク保有者の割合が若干低く、50歳代・60歳代で多い」傾向にありますが、55-64歳の被扶養者では約7割が脂質リスク保有者となっています。
資質のリスクは、被保険者(上段のグラフ)で高い傾向にあり、被保険者・被扶養者(下段のグラフ)ともに50歳代・60歳代で高い
資質のリスクは、被保険者(上段のグラフ)で高い傾向にあり、被保険者・被扶養者(下段のグラフ)ともに50歳代・60歳代で高い
 
 
【血糖】

血糖に関しては、69.3%が基準範囲内(空腹時血糖100mg/dL未満、HbA1c5.6%未満)ですが、25.8%が「保健指導判定値」以上(空腹時血糖100mg/dL以上、HbA1c5.6%以上が18.5%、空腹時血糖110mg/dL以上、HbA1c6.0%以上が7.1%)、5.0%が「受診勧奨判定値」以上(空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上)となりました。

健保組合加入者の3割強で、血糖のリスクを抱えている
健保組合加入者の3割強で、血糖のリスクを抱えている
 
被保険者・被扶養者ともに年齢階層が上がるにつれてリスク保有者の割合も高くなり、とくに65歳以上の被保険者では血糖リスク保有者が半数を超えています。
血糖のリスクは、被保険者(上段のグラフ)・被扶養者(下段のグラフ)ともに高齢になるほど高くなる(健保組合加入は75歳まで)
血糖のリスクは、被保険者(上段のグラフ)・被扶養者(下段のグラフ)ともに高齢になるほど高くなる(健保組合加入は75歳まで)
 
 
【肝機能】

肝機能に目を移すと、68.3%は基準範囲内(AST31U/L未満・ALTU/L31未満・γ-GT51U/L未満)ですが、20.7%が「保健指導判定値」以上(AST31U/L以上、ALT31U/L以上、γ-GT51U/L以上)、11.0%が「受診勧奨判定値」以上((AST51U/L以上、ALT51U/L以上、γ-GT101U/L以上)となっています。

健保組合加入者の3割強で、肝機能に関するリスクを抱えている
健保組合加入者の3割強で、肝機能に関するリスクを抱えている
  
被保険者本人でリスク保有者が多く、被保険者の4割弱、被扶養者では2割弱がリスク保有者という状況です。
肝機能のリスクは、被保険者(上段のグラフ)のほうが、被扶養者(下段のグラフ)よりも2倍程度高い
肝機能のリスクは、被保険者(上段のグラフ)のほうが、被扶養者(下段のグラフ)よりも2倍程度高い
 
 
こうした状況を踏まえると、▼高齢者では血圧の管理、またとくに被保険者では血糖も合わせた管理が重要である▼50歳代後半から60歳代の被扶養者では脂質の管理が重要▼被保険者全般で肝機能の管理が重要—という具合に、生活習慣病対策において「とくに力を入れるべき項目」が分かります。各健保組合において、より効果的な生活習慣病対策を実施するために参考にすべきデータと言えます。

 
 

 

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