6割超の特養ホームで介護職員不足、うち5%では入所者受け入れ制限を実施―福祉医療機構



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特別養護老人ホームの6割超で介護職員等の不足を感じており、うち5%超の施設では入所者の受け入れ制限を行っている。地域の特養ホーム増加による「競合」で退職者が増加し、一方、新規採用数が年々減少していることなどが要員と考えられる。新規採用の増加に向けては、学生への積極的なアピールや、若手職員の働きやすさ確保、キャリアアップ支援策などの工夫を凝らす必要がある―。

このような状況が、福祉医療機構(WAM)が7月27日に公表したリサーチレポート「平成29年度『介護人材』に関するアンケート調査の結果について」から明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

平均9床分のベッドで受け入れ制限、中には事業の縮小・廃止を検討するところも

介護人材不足が指摘されて久しく、また厚生労働省は「2025年度には約245万人の介護人材が必要で、これを充足するには毎年6万人程度の人材確保が必要」との推計を行っています(関連記事はこちら)。

こうした中でWAMでは、特別養護老人ホーム(628施設)を対象にした看護人材に関するアンケート調査を今年(2018年)2-3月に実施しました。回答者の施設形態は▼従来型:42.5%▼個室ユニット型:45.7%▼一部個室ユニット型:11.8%—、定員規模は▼29人以下:17.2%▼30-49人:3.2%▼50-79人:40.6%▼80-99人:22.0%▼100人以上:17.0%―という状況です。

今年(2018年)1月1日時点の要員状況を聞いたところ、全体の64.3%が「不足している」と回答。そのうち5.0%の施設では本体・一部ユニットで、7.4%では併設施設で「入所者の受け入れを制限している」ことも分かりました。

またベッドの利用率および空床数を見ると、「要員不足がない」と回答した施設では96.3%・2.4床、「要員が不足しているが、受け入れ制限はしていない」施設では97.0%・2.0%ですが、「要員が不足しており、本体・一部ユニットで受け入れを制限している」施設では85.3%・11.1床となっています。単純計算になりますが、約9床(空床数の差)分について「入所者を受け入れず、空床にしている」状況が伺えます。

単純計算で、「介護人材の不足が大きな場合、平均して1施設9床分程度二ついて入所者の受け入れ制限を行っている」ことが分かる
単純計算で、「介護人材の不足が大きな場合、平均して1施設9床分程度二ついて入所者の受け入れ制限を行っている」ことが分かる
 
「要員が不足している」施設において、「不足要員は何人なのか」また「不足はどの職種なのか」を聞いたところ、不足人数は▼1人:8.2%▼2人以上3人未満:27.2%▼3人以上4人未満:22.5%▼4人以上5人未満:10.9%▼5人以上6人未満:18.4%―などで多くなっていますが、「受け入れを制限していない」施設の不足人数は平均5.22人なのに対し、「受け入れを制限している」施設では8人超(本体・一部ユニットで制限している施設では8.32人、併設施設で制限している施設では8.12人)となっており、「深刻な人員不足感が、受け入れ制限につながっている」ことが分かります。
入所者の受け入れ制限を行っている特養ホームでは、介護人材の不足数が大きい
入所者の受け入れ制限を行っている特養ホームでは、介護人材の不足数が大きい
 
また不足職種(複数回答)としては、▼介護職員:99.0%▼看護職員:38.4%▼リハビリ専門職:6.9%▼介護助手:4.5%―などとなっており、「介護職員の確保」に苦労している施設が多い状況を再確認できます。

さらに、「人員不足感のある業務」(複数回答)としては、▼夜勤:74.8%▼入浴介助:73.5%▼食事介助:66.3%▼排泄介助:54.2%―などが目立ちます。

こうした不足に対し、ほとんどの施設では「求人活動の実施」を行っていますが、すぐに採用が決まるものでもなく、「時間外労働の増加」(48.5%)、「労働時間の変更・調整」(40.3%)、「派遣職員の採用」(32.9%)、「法人内部での異動」(27.0%)などでやりくりしていますが、中には「事業の縮小・廃止」を考えている施設もあります(6.4%)。

地域内の施設数増で介護職員のヘッドハンティングが生じ、退職者増となるケースも

 人手不足は、▼退職者の発生▼新規入職者の不足―の2側面に分けて考えることができます。

 前者の「退職者」の状況を見ると、2016年度には、施設ごとに▼ゼロ人(退職者なし):6.4%▼1-3人:31.8%▼4-6人:25.3%▼7-9人:14.8%▼10人以上:21.7%―という状況です。

その理由(複数回答)を見ると、「他の介護施設・事業所への転職」が最も多く60.9%、ほか「職場の人間関係」42.5%、「体調不良」41.7%などが目立ちます。介護業界内での異動が目立つことから、WAMでは「地域の施設数の増加等によって、競合が起こっている」と分析しています。

特養ホーム職員の最大の退職理由は「他の介護事業所・施設への転職」で、地域内の特養ホームが増加し、「優秀なスタッフのヘッドハンティング」などが生じているようだ
特養ホーム職員の最大の退職理由は「他の介護事業所・施設への転職」で、地域内の特養ホームが増加し、「優秀なスタッフのヘッドハンティング」などが生じているようだ
 

「学生への積極的な働きかけ」「キャリアアップなどの支援」を、学生側が見ている

 一方、後者の「新規採用」状況(新卒、平均)を見ると、▼2015年度:1.56人▼2016年度:1.38人▼2017年度:1.27人▼2018年度(予定):1.12人―と年々減少していることが分かりました。また、この4年間、連続して新卒採用者がゼロの施設も127(全体の19.6%)あります。

 また、新卒者以外の2016年度採用実績を見ると、▼ゼロ人(採用なし):9.4%▼1-3人:33.6%▼4-6人:27.4%▼7-10人:12.1%▼10人以上:17.5%―となっており、「中途採用が主力」と言えそうです。

 施設側は、学生の意識・行動について▼ホームページやSNS等から情報収集している▼給与だけでなく、通勤や残業時間、休日数も重視するようになっている▼雰囲気、居心地の悪そうな施設は明確に避けている▼各種手当やスキルアップ制度などを、他施設と比較している▼夏頃からの採用活動開始では遅い―という印象を持っています。

 また採用経路としては、▼ハローワーク:95.7%▼法人ホームページ:72.8%▼職員からの紹介:68.0%▼合同説明会参加・出典:54.5%―などが多くなっていますが、「効果」から見ると▼学校訪問(就職課):63.1%▼学校訪問(説明会):45.4%▼養成校教員等の推薦:43.0%▼資格取得実習受け入れ:40.3%—などを推す声が多く、実態と効果(いわばコストパフォーマンス)に鑑みた「採用活動の見直し、工夫」が必要と言えそうです。

採用経路と、その効果(左側のグラフが新卒者、右側のグラフが非正規者)
採用経路と、その効果(左側のグラフが新卒者、右側のグラフが非正規者)

 さらに、都市部(介護報酬の地域区分1-7級地の地域)・地方部(その他の地域)別に「採用の成果アップに向けた取り組み」を見てみると、都市部では▼資格実習受入▼学校訪問(説明会)▼合同説明会▼人事考課制度の導入▼事業所内保育所の整備▼単身寮の整備―などに力を入れている施設で、地方部では▼学校訪問(説明会)▼人事考課制度の導入▼都道府県共済への加入▼資格取得祝い金の支給―などを行っている施設で、比較的芳しい採用実績を上げていることが分かりました(もちろん、実施が必ず採用に結びつくというわけではない)。

 WAMでは、「学生の採用活動に対する積極的な姿勢」「職員の成長や働きやすさへの支援」が学生から見られていると指摘。現在、バブル期なみの「売り手市場」になっていると指摘され、「学生側に施設が見られている」という意識を持つことが不可欠のようです。

 なお、退職の項で「競合が生じている」点に関連し、特養ホームの「再編・統合」が進む可能性が伺えます。介護職員においては「処遇改善」のみが注目されますが、「働き方改革」も重要テーマであり、その一環として「施設・事業所を集約することで、1人当たりの負担を減らす」方策も検討項目の一つとなっており、今後の動向を注視する必要がありそうです。
 
 

 

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