消費増税補填不足問題、次回増税時には同様の事態が生じないような対策を―日病協



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 2014年度の消費増税に合わせた特別の診療報酬プラス改定(以下、消費増税改定)で、急性期病院を中心とした「補填不足」が明らかとなった。4年も放置されてきたことに強い憤りを覚えるが、次回の消費増税時(2019年10月予定)には、こういった事態が生じないよう、原因の究明と万全な対策を行うよう強く求める―。

 7月27日に開催された日本病院団体協議会の代表者会議では、こういった考えで一致したことが、山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長)から明らかにされました。

7月27日の日本病院団体協議会・代表者会議後に記者会見を行った山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長、向かって右)と長瀬輝諠副議長(日本精神科病院協会副会長、医療法人社団東京愛成会理事長・同回高月病院院長、向かって左)
7月27日の日本病院団体協議会・代表者会議後に記者会見を行った山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長、向かって右)と長瀬輝諠副議長(日本精神科病院協会副会長、医療法人社団東京愛成会理事長・同回高月病院院長、向かって左)
 

「本音を言えば、過去の補填不足分を返してほしい」と山本議長

 メディ・ウォッチでもお伝えしているとおり、7月25日の診療報酬調査専門組織「医療機関等における消費税負担に関する分科会」(以下、消費税分科会)において、2014年度の消費増税改定では急性期病院等を中心に補填不足があることが判明しました。

 従前、▼病院全体では102.36%▼一般病院では101.25%▼特定機能病院では98.09%―などといった補填がなされている(2014年度ベース)と説明されていましたが(2015年11月)、計算に誤りがあり、実際には▼病院全体では85.0%▼一般病院では85.4%▼特定機能病院では61.7%―などにとどまっていたのです(2018年7月)。

医療関係団体、とくに病院団体では、厚生労働省を強く非難しており、7月27日の日病協代表者会議(国立大学附属病院長会議や日本精神科病院協会、日本病院会、全日本病院協会などの病院団体で構成)でも、厳しい意見が相次いだことが、会議終了後の記者会見で山本議長から報告されました(関連記事は こちら)。

日病協では、2014年度の消費増税改定の後、2015年2月に補填状況に関する調査結果を公表しており、そこでは▼病院全体の補填率は84.2%▼大規模病院ほど補填率が低い(200床未満では平均99.2%、200-399床では87.2%、400床以上では70.5%)—などといった結果が出ています。これが、修正後の補填状況調査(2015年7月)に極めて近い数字であったことから、日病協の代表者会議では「日病協の数字をもとに適切に補填状況を検証していれば、その後の2016年度、2018年度の診療報酬改定で何らかの手当てが可能であった。このチャンスをすり抜けてここまで来てしまったことに強い憤りを覚える」との意見が相次いだと言います。

また、修正後の補填状況調査をもとに病院全体の補填不足額を試算すると「4年間分で888億円」にのぼります(例えば「特定機能病院の不足額9239万8000円×病院数」+「子ども病院の不足額3161万9000円×病院数」・・といった試算)。

2014年度の消費増税対応改定の効果(2016年度の補填率等、抜粋その2)
2014年度の消費増税対応改定の効果(2016年度の補填率等、抜粋その2)
 
この不足額について山本議長は「本音を言えば返してほしい。特定機能病院では赤字経営を余儀なくされ、本体の大学そのものの経営にも影響を及ぼしている。経営にどれだけの苦労をしているか分かってほしい」とコメント。ただし、「財源確保が容易でないことは分かっている」と述べ、日病協では「次の消費増税時(2019年10月予定、8%→10%)には、こうした事態が生じないよう、補填不足が生じた原因を詳しく分析し、万全の対策をとってほしい」との考えで意見が一致していることを明らかにしました。

補填不足の原因として、厚労省保険局医療課保険医療企画調査室の矢田貝泰之室長は▼課税経費率の変化▼診療報酬算定回数における見込みと実際との差―などが考えられる、と7月25日の消費税分科会で説明しています(関連記事はこちら)。

この点、山本議長と長瀬輝諠副議長(日本精神科病院協会副会長)は、「精神科病院や慢性期病院(補填不足は全体では生じてない)では、1日単価に占める入院基本料等の割合が高い(精神科病院では80%程度と長瀬副議長は説明)が、急性期病院では入院基本料等の割合が低く、ほかの手術や麻酔などの収益部分が大きい。その差が補填不足の原因の一つではないか」と分析しました(関連記事はこちらこちら)。

 
今後、消費税分科会を中心に、補填不足の原因分析や対応策の検討が進みます。山本議長は、「日病協では、『遅くとも年末の2019年税制改正大綱までに、「控除対象外消費税への対応に関する医療界の意見」をまとめ、政府に提言する必要がある。逆に言えば、それまでに医療界の意見がまとまらなければ、現行の対応方法(診療報酬プラス改定)が継続してしまう』との危機感を持っている」ことも併せて紹介。今後、消費税問題に対する議論がさらに活発になると予想されます。

  
なお、7月27日に日病協代表者会議では、「救急医療管理加算の在り方を、深く検討する」ためのワーキンググループを設置することが決まりました。2020年度の診療報酬改定に向けた議論が早くも始まっています。
 
 

 

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