「電子カルテの標準仕様」、国を挙げて制定せよ―社保審・医療部会の永井部会長が強く要請



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 現在の電子カルテは、製造販売業者(ベンダー)によって仕様が区々であり、コストも高く、何よりも地域医療連携等の妨げになっている。核(コア)となる部分と、その「標準仕様」を、国を挙げて定める必要がある。次世代電子カルテシステムの構築を国のプロジェクトとして立ち上げてほしい―。

 7月27日に開催された社会保障審議会・医療部会で、永井良三部会長(自治医科大学学長)は厚生労働省に対し、このように強く要請しました。

7月27日に開催された、「第63回 社会保障審議会 医療部会」
7月27日に開催された、「第63回 社会保障審議会 医療部会」
 

現在の電子カルテ、ベンダー間のデータ連結が困難で地域医療連携等を阻害していないか

 現在では、多くの病院で電子カルテを初めとする病院情報管理システムが導入され、医師が診療する過程で、検査などのオーダーを出したり、過去の検査データを閲覧・分析して最適な治療方針を決定する、さらに医事会計システムと連動し、迅速な会計処理を可能とするなど、重要な役割を果たしています。

 しかし現在の電子カルテには、病院団体等から▼価格・維持費ともに極めて高額である(さらに個別病院に合わせたかスタマイズの費用も莫大である)▼ベンダーごとに仕様が区々で、データの連結が極めて難しい―といった課題が指摘されています(関連記事はこちら)。7月27日の医療部会でも、この点が改めて問題視されました。

 前者の価格について加納繁照委員(日本医療法人協会会長)は、「ざっと試算すると、電子カルテ等の購入費・維持費は、病院収益の1.5%を占めており、急性期病院の利益率を上回っている」と説明。

また後者の「データ連結の難しさ」は、地域医療連携等に大きな弊害を及ぼしていると猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は強調。さらに、例えば、ある病院でA社の電子カルテを導入し、数年が経った後に「使い勝手が良くない。良い評判を聞くB社の電子カルテに買い替えよう」と考えても、過去のA社でのデータをB社の電子カルテと連結することができず、買い替えが進まないとの指摘もあります。いわば「囲い込みになっているのではないか」と見る向きもあります。

このため、加納委員・猪口委員は「電子カルテの標準仕様を定めるべきではないか」と提案。標準仕様の制定により、▼コスト低減による医療費の適正化▼地域医療連携等の推進―が可能になると期待を寄せました。

この提案に対し、同じく医療提供者である中川俊男委員(日本医師会副会長)も諸手をあげて賛同するとともに、患者・国民代表の立場で参画している山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)も標準化の必要性を認め、賛意を表明しました。

さらに永井部会長は、「電子カルテのコア部分を規定し、その標準化を行う、いわば次世代電子カルテシステムの標準仕様構築は、非常に重要なテーマである。国(省庁)を挙げて、一大プロジェクトとして取り組む必要がある」と厚労省に強く要請しました。永井部会長は、昨今「画像診断報告書の確認不足で、重大な病変を見落としてしまった事例」が問題となっている点にも触れ(2004年から80例も報告されている)、「電子カルテの標準仕様の中に、例えば『検査報告の中に、○○の疑いなどのキーワードが出現した場合には、アラートを鳴らす』といった機能を盛り込むことなども検討してはどうか」との具体的な提案も行っています。今後の重要施策の1つとなりそうです。

医療被曝線量の管理と記録、2020年4月から医療機関に義務付け

 また、7月27日の医療部会では、「医療放射線の適正管理」に関する厚生労働省令(医療法施行規則)の改正方針が了承されました。

 X線撮影やCT撮影、がん放射線療法など、放射線を用いた検査・治療を行うに当たっては、「この患者には、この検査・治療が必要である」との判断(正当化)と、「当該検査等では、この程度の線量が好ましい」との判断(最適化)をあわせて行うことが求められ、適切な判断がなされている限り、検査・治療などに伴って患者が受ける放射線被曝(医療被曝)においては、線量限度(どの程度まで、放射線を受けてよいか)は設定されません。

もっとも、放射線等に関する知識の乏しい一般国民・患者が「CT検査等を何度も受けているが、健康上の問題はないのか」という不安も生じかねないため、厚労省は「医療放射線の適正管理に関する検討会」を設置し、これまで以上に「正当化」「最適化」を適切に判断する体制を担保し、患者に適切な情報提供を行う方針を固めました。具体的には、医療法施行規則(厚生労働省令)で規定している「医療機関等の管理で確保すべき安全管理体制」の中に、新たに次のような「医療放射線に係る安全管理」を加えてはどうか、というものです(管理者は、ほかに▼院内感染対策▼医薬品の安全管理▼医療機器の安全管理▼高難度新規医療技術―に関する体制を整える必要がある)(関連記事はこちら)。

【医療放射線に係る安全管理】
▽医療放射線の安全管理責任者の配置
(医療放射線の安全管理に関する知識・経験を持つ医師・医師会士を責任者とし、診療放射線技師と連携して、安全管理業務を行う)

▽医療放射線の安全管理のための指針の策定(個別医療機関で、▼医療放射線の安全管理に関する基本的考え方▼従事者への安全管理研修の基本方針▼改善方策▼過剰被曝などの事例発生時の対応方針▼患者との情報共有方針—などを策定する)

▽放射線従事者等(医師、歯科医師、診療放射線技師等)に対する「医療放射線に係る安全管理のための職員研修」の実施(年に1回、▼医療被曝の基本的な考え方▼放射線診療の正当化▼防護の最適化▼放射線障害への対応▼患者への情報提供―に関する事項について研修を実施する。ただし、他の医療安全研修と併せて実施する子も可能)

▽医療被曝に関する安全管理のために必要となる業務(医療被曝の線量管理、医療被曝の線量記録)の実施等

医療被曝の線量管理・線量記録の対象は、今回は被曝線量が相対的に高い▼CT・X線装置▼血管造影検査に用いる投資用X線装置▼診療用放射性同位元素▼陽電子診断撮影診療用放射性同位元素―に限定される見込みです。

医療法施行規則を改正し(2020年4月施行予定)、医療機関の管理者に「医療放射線に係る安全管理」を義務付ける(その1、全体像)
医療法施行規則を改正し(2020年4月施行予定)、医療機関の管理者に「医療放射線に係る安全管理」を義務付ける(その1、全体像)
医療法施行規則を改正し(2020年4月施行予定)、医療機関の管理者に「医療放射線に係る安全管理」を義務付ける(その2)
医療法施行規則を改正し(2020年4月施行予定)、医療機関の管理者に「医療放射線に係る安全管理」を義務付ける(その2)
医療法施行規則を改正し(2020年4月施行予定)、医療機関の管理者に「医療放射線に係る安全管理」を義務付ける(その3)
医療法施行規則を改正し(2020年4月施行予定)、医療機関の管理者に「医療放射線に係る安全管理」を義務付ける(その3)
医療法施行規則を改正し(2020年4月施行予定)、医療機関の管理者に「医療放射線に係る安全管理」を義務付ける(その4)
医療法施行規則を改正し(2020年4月施行予定)、医療機関の管理者に「医療放射線に係る安全管理」を義務付ける(その4)
 
医療部会での了承が得られたため、厚労省医政局地域医療計画課の佐々木健課長は、「近く、医療法施行規則改正案についてパブリックコメントを募集。その結果を踏まえて今秋(2018年秋)に改正医療法施行規則を公布し、1年半程度の周知期間をとって、2020年4月に施行したい」とのスケジュールを発表しました。周知期間において、個別医療機関が「医療放射線の安全管理のための指針」を策定する際の拠り所となるガイドラインの整備なども進められます。

 
なお、放射性薬物(放射性同位元素などを含有する医薬品)を人体に投与する場合には、医療機関は放射線防護体制(例えば退室基準の遵守など)」をとることが求められます(医療法第15条、医療法施行規則第24条)。しかし未承認の放射性薬物については、「治験」以外は、この体制確保の対象となっていません(人体への投与を想定していないRI法(放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律)の適用となっている)。

佐々木地域医療計画課長は、治験以外の場面でも未承認放射性薬物を人体に投与する場合には、医療提供の観点から適切な対応を求めることが必要とし、「▼臨床研究法で規定する特定臨床研究▼「再生医療等の安全性の確保に関する法律」で規定する再生医療等▼先進医療▼患者申出療養―においても、未承認放射性薬物を投与する場合には、医療法の適用を受ける(つまり必要な防護をとることなどが法律上求められることになる)」よう医療法施行規則を見直す方針を提案。医療部会で了承されたため、詳細を詰めて、近く医療法施行規則の改正が行われます。

治験以外にも、先進医療等で未承認の放射線薬物を用いる場合、医療機関に必要な体制を求めることができるように医療法施行規則の見直しを行う
治験以外にも、先進医療等で未承認の放射線薬物を用いる場合、医療機関に必要な体制を求めることができるように医療法施行規則の見直しを行う
 
 

 

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