患者等の求めに応じたカルテ開示、合理的な範囲で「開示内容の確認などに係る人件費」も含めて請求可能―厚労省



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患者や家族等の求めに応じてカルテ開示を行う際、あくまで「合理的な範囲内」という条件付きではあるが、「開示内容等の確認のために生じる医療機関サイドの人件費」も費用(実費)に含めて請求することが可能である。一方、カルテ開示の際に「医師の立ち合いを必須」とすることは、開示の機会を不当に制限することになりかねず、不適切である―。

 厚生労働省は7月20日に通知「診療情報の提供等に関する指針について」を発出し、こうした点を明確にしました(厚労省のサイトはこちら)。

開示の費用は、あくまで「合理的であると認められる範囲内」であることが必要

 医療訴訟などの場面に端を発し、「診療録(カルテ等)は誰のものか」(患者のものか、医療機関のものか)という議論が従前、活発に行われました。その際、「法的な診療録の所有権」論議とは別に、「医療サイドと患者との間に信頼関係が構築されることが重要であり、そのために、医療サイドは積極的に患者に診療情報などを提供していくことが求められる」との認識が確固たるものとなりました。

厚労省は、こうした議論を受けて2003年に通知「診療情報の提供等に関する指針の策定について」を発出し、例えば次のような考え方を明確にしています(厚労省のサイトはこちら)。

▼医療従事者等は、患者等が理解しやすいように(理解を得やすいように)、懇切丁寧に診療情報を提供するよう努めなければならない

▼診療情報の提供は、(1)口頭による説明(2)説明文書の交付(3)診療記録の開示—等、具体的な状況に即した適切な方法により行われなければならない

▼医療従事者等は、患者等が患者の診療記録の開示を求めた場合には、原則としてこれに応じなければならない

▼医療機関の管理者(院長など)は、申立人から「診療記録の開示に要する費用」を、実費を勘案して合理的であると認められる範囲内の額で徴収することができる

▼医療従事者等は、診療情報の提供が「第三者の利益を害するおそれがある」(患者・家族との人間関係悪化が予想されるなど)、「患者本人の心身の状況を著しく損なうおそれがある」(病名を患者が知った場合、大きなショックを受けると予想されるなど)場合には、診療情報を提供しないことができる

 
 このうち、「診療記録の開示に要する費用」について、医療現場からさまざまな疑問が出ていることを受け、厚労省は今般の通知で、次のような考え方を明らかにしました。

●「実費」には、内容確認などに生じる人件費も含まれ得る。ただし、「手数料として徴収することができる費用の額」は、これらの費用を含めた実際の費用を勘案して「合理的であると認められる範囲内」とすることが必要である

 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)でも、▼個人情報取扱事業者が開示請求を受けたときは手数料を徴収することができる▼手数料は「実費を勘案して合理的と認められる範囲内」において定めなければならない―旨が規定され、この「実費」には「内容確認等の開示請求に対応する際に生じた費用も含み得る」ことが個人情報保護委員会によって確認されていることなども踏まえた考え方です。あくまで「合理的と認められる範囲内」との条件付きですが、人件費も実費に含めて請求可能であることが明確にされています。

カルテ開示の際、「医師の立ち合いを必須」とすることは不適切

 ところで、厚労省は昨秋(2017年)、全国の特定機能病院・大学病院(87病院)を対象に「医療機関における診療録の開示に係る実態調査」を実施。そこからは、次のような状況が明らかになりました。

【開示費用】(モノクロ1枚を請求した場合)
▼999円以下:67% ▼2000-2999円:2% ▼3000-3999円:15% ▼5000円以上:16%

【開示方法】
 「閲覧」または「写し(コピー)の交付」が82%

【医師の立ち合い】
 ▼必須:5% ▼患者サイドから求められれば応じる:57%

【遺族に対する診療情報の提供】
ほぼすべての医療機関で、遺族である(申し立てを行える人である)ことを明らかにしてもらうために、戸籍謄本や身分証明書の提示を求めている(一部医療機関では、謄本記載者や法定相続人全員の同意の上で提供しているところもある)

【開示までの日数】
▼2週間程度:38% ▼3週間程度:37% ▼4週間程度:25%

【開示の決定者】
ほぼすべての医療機関で「医療機関の管理者」である。主治医や診療科長を決定権者にしている場合でも、「部分開示」「非開示」決定は院長の出席する診療情報開示委員会などに諮問が行われている。

 
厚労省は、こうした調査結果を踏まえ、さらに次の2点に留意するよう求めています。

▽診療記録開示に要する費用は、実際の費用から積算される必要があるが、個々の申し立てに応じその費用が変わり得るため、かえって「開示に要する費用を一律に定めることは不適切となる」場合がある

▽開示に当たり「医師の立ち会いを必須」とすることは、患者等が診療記録の開示を受ける機会を不当に制限するおそれがあるため、不適切である
 
 

 

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