透析の新規患者を年間3万5000人に減少すべく、慢性腎臓病対策を充実せよ―厚労省



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 「2028年までに、年間新規透析導入患者数を3万5000人以下に減少させる」(現在は3万9000人)という目標を設定する。その上で、目標達成に向けて、「国民全体に慢性腎臓病(CKD)対策の重要性を普及啓発する」「地域のかかりつけ医療機関と腎臓専門医療機関との連携を強化する」「腎臓療養指導士を育成し、かかりつけ医と連携した指導を行う体制を構築する」「関係学会で診療ガイドラインを作成し、効果的・効率的な治療を推進する」などの施策を展開していく必要がある―。

 厚生労働省は7月12日に、こういった提言を盛り込んだ「腎疾患対策検討会報告書—腎疾患対策の更なる推進を目指して―」(以下、報告書)を公表しました(厚労省のサイトはこちら(報告書)こちら(報告書・概要)こちら(病期に応じた腎疾患対策の全体像)。

透析の新規患者数は2016年時点で3万9000人、2028年までに10%減を目指す

 昨今の生活習慣病予防対策や腎不全対策(透析・移植等)により、「年齢調整後の新規透析導入率が減少する」などの成果が出ていますが、残念ながら「透析患者数そのものの減少」にまでは至っていません(関連記事はこちらこちらこちら)。

透析患者総数は2016年末で33万人弱である。伸び率は鈍化しているが、減少にまでは至っていない
透析患者総数は2016年末で33万人弱である。伸び率は鈍化しているが、減少にまでは至っていない
 
報告書では、この「透析患者数そのものの減少」を目指す必要があるとし、そのためには明確な慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease、CKD)対策を打ち出し、国全体で計画的に推進していくべきと提言しています。

まず「透析患者数そのものの減少」という大目標の達成に向けて、「2028年までに、年間新規透析導入患者数を3万5000人以下に減少させる」(2016年時点では約3万9000人)という数値目標を打ち出しました。

新規の透析導入患者数(年間)は、2016年末で3万9000人強である。グラフからはここ10年ほどで、年間の新規患者数が大きく変化していない(増加していない)ことが分かる
新規の透析導入患者数(年間)は、2016年末で3万9000人強である。グラフからはここ10年ほどで、年間の新規患者数が大きく変化していない(増加していない)ことが分かる
 
さらに、この数値目標の実現に向けた施策として次の5本の柱を打ち立て、具体的な取り組み内容にも言及しています。
(1)普及啓発
(2)地域における医療提供体制の整備
(3)診療水準の向上
(4)人材育成
(5)研究開発の推進

医療従事者、患者など対象を明確にし、CKDの正しい知識を普及せよ

 まず(1)では、CKDの正しい知識(▼生命を脅かし、患者数も多い▼早期発見・早期治療が重要で、「治療可能」である―など)について、医療従事者や行政機関はもとより、国民全体(患者・家族、成人・小児を問わず)に普及啓発し、より多くの人がCKD対策を実践するような体制の構築を目指すものです。

このため、国(厚労省)には「関連学会等と連携した普及啓発内容の検討整理を行い(医療関係者と一般国民では当然内容が異なる)、資材の開発・普及を図る」ことを、学会には「普及啓発を含めた地域の腎疾患対策の中心的役割を担う『担当者』を、都道府県ごとに決定し、担当者を中心として自治体と連携して普及啓発等を行う」よう要請しています。

こうした取り組みの進捗状況を把握し、確実な施策推進に結びつけるため、例えば▼各都道府県における普及啓発活動の実施数▼市民公開講座等の実施数▼CKDの認知度—などを指標として、評価・改善を行うことになります。

かかりつけ医から専門医への患者紹介基準などを普及し、連携を促進せよ

また(2)の医療提供体制に関しては、CKD患者数が多い(2016年末で32万9609人)ことから、「かかりつけ医」と「腎臓専門医療機関」との連携体制を各地域で構築し、強化していくことを訴えています。

具体的には、関連学会や関係団体等が、国や自治体と連携して、「かかりつけ医から腎臓専門医・腎臓専門医療機関への紹介基準」、「かかりつけ医から糖尿病専門医・専門医療機関への紹介基準」を広く普及するとともに(紹介率・逆紹介率などを指標に進捗状況を把握し、改善を促す)、健診の受診勧奨、適切な保健指導の実施、かかりつけ医への「腎臓専門医療機関等の情報」発信の強化などを行うよう求めています。ここでは上記(1)の「学会における各都道府県の担当者」が重要な役割を果たすことが期待されます。

かかりつけ医から、腎臓病専門医等へ患者を紹介する際の基準(概要)
かかりつけ医から、腎臓病専門医等へ患者を紹介する際の基準(概要)
かかりつけ医から、糖尿病専門医等へ患者を紹介する際の基準(概要)
かかりつけ医から、糖尿病専門医等へ患者を紹介する際の基準(概要)
 

関連学会が合同で「診療ガイドライン」などを整備せよ

また(3)では、効果的・効率的なCKD治療を行うために、学会に対して▼推奨内容を合致させたガイドライン等を作成する(関連学会の合同作業となる)▼患者、メディカルスタッフ、かかりつけ医など、対象を明確にしたガイドライン等を作成し、普及に努める▼関連疾患(糖尿病など)の専門医療機関等との連携基準等を作成し、普及に努める―よう強く求めています。

現在のガイドラインには、「推奨内容に不一致な部分がある」「メディカルスタッフ等には浸透していない」といった課題があり、これらを関連学会が合同して解決するよう求めるものです。

看護師や薬剤師、PTなどはCKD知識を得て、療養指導士として活躍せよ

一方、(4)の「人材」については、「腎臓病専門医の不足」「CKD診療を担うメディカルスタッフの数が不足と偏在」「CKD診療を担うメディカルスタッフと、CKD関連疾患の診療を担うメディカルスタッフとの連携が不十分」という課題があることを指摘し、学会に対して▼「腎臓病療養指導士」など、CKDへの基本的な知識を有する看護師/保健師、管理栄養士、薬剤師等のメディカルスタッフ育成▼かかりつけ医等と腎臓病療養指導士等との連携、腎臓病療養指導士等と関連する療養指導士(糖尿病療養指導士など)等との連携推進—を図るよう求めています。

看護師や薬剤師、管理栄養士、理学療法士などメディカルスタッフの視点に立てば、その活躍の場が、今後10年で大きく広がると期待できます。

オールジャパン体制で研究開発を推進せよ

さらに(5)では、関連学会、関係団体等、国、地方公共団体、企業等が密接に連携した「オールジャパン」体制で、▼データベース間の連携構築(DKD(Diabetic Kidney Disease、糖尿病性腎症)に関する日本腎臓学会、日本糖尿病学会の連携のみならず、日本循環器学会等の心血管疾患の関連学会との連携も重要)▼研究・診療へのICT導入、ビッグデータの活用▼国際共同試験を含めた臨床試験の基盤整備▼病態解明に基づく効果的な新規治療薬の開発▼再生・オミックス(ゲノム等)研究の推進▼基礎研究や国際競争力の基盤強化—などが進むよう、期待を寄せています。

 
なお、報告書では、2009年には295人であった新規透析導入患者を、2016年には243人に減少させた(7年間で18%の減少)「熊本市」など、好事例の内容を全国に共有することや、先行している「糖尿病性腎症対策」を今般おCKD対策と連動させること、などの重要性も指摘。また、上記のうち(1)「普及啓発」や(3)「診療水準の向上」などの取り組みは、CKD以外の他疾患でも活用できることを強調しています。
 
 

 

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