注射用抗がん剤の複数回使用、「高額薬剤に限定する」など対象薬剤を検討せよ―厚労省



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 通常単回使用する注射用抗がん剤等を複数回使用すると、▼微生物学的安全性▼品質の安定性の確保▼医薬品の取り違え・用量の誤り―などのリスクが増大する。このため複数回使用は、「高額薬剤に限る」など、事前に各医療機関において対象薬剤を十分に検討した上で実施するべきである―。

 厚生労働省は6月22日に事務連絡「平成29年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)『注射用抗がん剤等の適正使用と残液の取扱いに関するガイドライン作成のための研究』結果について(情報提供)」を発出し、こう呼びかけました。

単回使用の注射用抗がん剤、複数回使用により医療安全上のリスクが増大する

 昭和大学薬学部の加藤裕久教授らによる「注射用抗がん剤等の適正使用と残液の取扱いに関するガイドライン作成のための研究」では、通常であれば単回使用である注射用抗がん剤を同時に、あるいは一定期間後に複数回にわたって患者(同一または複数の患者)に使用する際のリスク等を詳しく調べています。

 想定されるリスクとしては、例えば次のようなものがあげられます。
▼患者毎の調製・監査の手順違いにより、従来の調製手順では発生し得なかった医薬品の「取り違え」「調製用量の過誤」などが増加する
▼複数回使用を予定しているバイアルをBSC(無菌室に設置された安全キャビネットなど)内に雑然と配置させておくことによる「取り違え」が発生する
▼CSTD(曝露防止用閉鎖式薬物移送システム)を利用している場合には、バイアルの視認性低下が生じ、「取り違え」が増加する。
▼採取量の過誤による過量・過少投与が増加する。
▼複数回使用として設定した「使用期限を超過」した使用が生じる

こうしたリスクを回避するためには、通常とは異なる特別の抗がん剤の調整環境・調整方法などを採用する必要があります。

例えば、調整環境としては「無菌室(ISO Class 5)に設量された安全キャビネット(BSC)の使用」が望ましく、また調整方法としては▼曝露防止用閉鎖式薬物移送システム(CSTD)の使用▼最初の針刺し後、バイアルを保管する場合、ゴム栓・CSTD接続部を消毒用アルコール綿で丁寧に消毒し、滅菌シール等で保護した上で、ジップ付きのプラスチック袋等に入れる―ことなどが推奨されています。

また、各医療機関において抗がん剤調整の手順書を作成することが求められ、そこには、▼具体的な調製方法を混注箋に記載する(例えば、ニボルマブ150mgの場合、10mL(100mgを1V)+5mL(複数回使用バイアル))▼複数回使用バイアルと通常使用バイアルに分け、複数回使用バイアルにはマジック等で目印があることを確認する(初回使用時に目印をつける)▼残液のあるバイアルには滅菌シールで封をし、使用したバイアルをジッパー付小袋に入れ複数回使用確認票を添付する―ことなどを記載する必要があります。

ところで、こうした対応をとっても▼微生物学的安全性▼品質の安定性の確保▼医薬品の取り違え・用量の誤り―などのリスクを皆無にすることはできません。厚労省は、こうしたリスクを考慮し、注射用抗がん剤の複数回使用は、「高額薬剤に限る」など、事前に各医療機関において対象薬剤を十分に検討した上で実施するべきと提言しています。
 
 

 

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