骨太方針2018、「後期高齢者の自己負担2割への引き上げ」は後退―健保連



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 骨太の方針2018においては、社会保障改革を軸とする「基盤強化期間」の設定など高く評価できる部分もあるが、例えば、「経済・財政再生計画」の改革工程表(2018改定版)では「2018年度中に後期高齢者の窓口負担の在り方を検討する」とされていたものが後退しかねない内容となっている。高齢者医療費の負担構造改革を早期に実現する必要がある―。

 健康保険組合連合会の佐野雅宏副会長は、骨太の方針2018(経済財政運営と改革の基本方針2018—少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現—)の閣議決定を受けて、6月18日にこういったコメントを発表しました(健保連のサイトはこちら)。

健保財政を圧迫する拠出金負担について、上限設定などに触れていない

 医療費は、国民全体で▼保険料▼自己負担(窓口一部負担)▼公費―として賄っています。「経済的能力(つまり所得)に応じた負担、応能負担」である保険料(公費もこう見ることが可能)と、「受益内容に応じた負担、応益負担」である自己負担を組み合わせることで、「公平な負担」「コスト意識の喚起」などを目指しています。

 自己負担については、主に年齢に応じて▽小学校入学前までは2割▽小学校入学以降70歳になるまでは3割▽70-74歳は2割(段階的に3割に引き上げ)▽75歳以上は1割―といった具合に設定されています。

 このうち70-74歳の前期高齢者については、2014年度から「新たに70歳に到達する人において2割負担とする」という形で段階的に自己負担割合の引き上げが行われ、今年度(2018年度)には70-74歳すべてで「原則2割」負担となります。69歳以下では「3割負担」であったので、70-74歳の自己負担割合が「1割→2割」に引き上げられたとしても、個人単位でみれば「3割→2割」への負担軽減となる形です。

70-74歳の前期高齢者の自己負担割合は、段階的に1割から2割に引き上げられているが、個人単位で「従前は1割であったものが2割にアップする」わけではない
70-74歳の前期高齢者の自己負担割合は、段階的に1割から2割に引き上げられているが、個人単位で「従前は1割であったものが2割にアップする」わけではない
 
 さらに佐野副会長は、「世代間の負担の公平性」を確保するために、75歳以上の後期高齢者においても自己負担割合を「原則2割」に引き上げるべきと提唱しています。仮に来年度(2019年度)から「新たに75歳に到達する人において2割負担とする」ことができれば、切れ目なく「70歳以上で2割負担」とすることが可能になるのです(2014年度に新たに70歳になった人は、2019年度に75歳になるため)(関連記事はこちら)。

 この点、「経済・財政再生計画 改革工程表2017改定版」では、この問題について「2018年度中に関係審議会等において検討し、結論を得る」ことが明示されていました。しかし、今般閣議決定された骨太の方針2018では「団塊世代が後期高齢者入りするまでに、世代間の公平性や制度の持続性確保の観点から、後期高齢者の窓口負担の在り方について検討する」との書きぶりになっています。団塊世代が75歳以上の後期高齢者に入るのは2022年度であることから、佐野副会長は「先送り」「後退」と見ているのです。

「経済・財政再生計画 改革工程表2017改定版」では、「2018年度中に結論を得る」とされていた
「経済・財政再生計画 改革工程表2017改定版」では、「2018年度中に結論を得る」とされていた
骨太の方針2018では「団塊世代が後期高齢者入りするまで」とされた
骨太の方針2018では「団塊世代が後期高齢者入りするまで」とされた
 
佐野副会長は、▼現行制度のままでは国民皆保険の崩壊が危惧される▼拠出金上限の設定などの負担軽減策については、具体的に触れられていない―とし、「国民皆保険の持続性確保のために、高齢者医療費の負担構造改革の早期の実現を強く求める」と強調しています。

 
今後、骨太の方針2018で示された改革案について、社会保障審議会の医療保険部会や医療部会、中央社会保険医療協議会などで具体化していくことになりますが、佐野副会長は、そうした場を通じて改革の必要性などを強く訴えていく考えです(関連記事はこちらこちら)。
 
 

 

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