各医療機関の「診療の質」情報を公開するだけで、「診療の質」が向上する―医療情報提供内容検討会(2)



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 医療機能情報提供制度、つまり都道府県の医療機関検索サイトについて、掲載情報の見直しを2019年度以降行ってはどうか。あわせて、将来に向けて「診療の質」(QI)に関する情報についての掲載についても検討してはどうか、「診療の質」情報を掲載・公表するだけで、各医療機関の「診療の質」が向上することが見込まれる―。

 5月31日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」では、こういった議論も行われました(関連記事はこちら)。

厚生労働省は、今秋(2018年秋)を目途に、「2018年度診療報酬改定などを踏まえて、医療機能情報提供制度の報告項目」見直し内容を固める考えを示しており、各都道府県で予算を確保した上で、2019年度以降に医療機関検索サイトの見直しなどを行うことになりそうです。

 なお「医療の質」に関する項目についても報告を求め、公表するのか、と言ったテーマについては、より根本的な議論をする必要があり、決着までにはしばらく時間がかかりそうです。

5月31日に開催された、「第9回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」
5月31日に開催された、「第9回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」
 

2018年度診療報酬改定等踏まえ、医療機能情報提供制度の項目を2019年度以降見直し

あまり知られていないようですが、各都道府県では管内医療機関から報告された情報(医療機能情報提供制度)をもとに「医療機関検索サイト」を構築しています。各都道府県のホームページからはもちろん、厚労省のサイト「医療機能情報提供制度(医療情報ネット)について」から、各都道府県の検索サイトにたどり着くこともできます(厚労省のサイトはこちら)。
医療情報提供内容検討会(2)3 180531
 
厚労省は2007年に医療機能情報提供制度(医療情報ネット)を立ち上げ、各医療機関に対し、少なくとも毎年1回以上、次のような情報を提供することを求めています(医療機関から都道府県に報告)。
▼基本情報(名称、所在地、電話番号、診療科目、診療時間、ベッド数など)
▼アクセス情報(交通手段、駐車場の有無、予約診療の有無、時間外対応など)
▼院内サービス・アメニティ(対応可能な外国語、障害者サービス、受動喫煙防止策、相談線体制など)
▼費用負担等(保険診療、選定療養、治験の有無と実績、先進医療の有無と実績、クレジットカード利用の可否など)
▼診療内容、提供する保健・医療・介護サービス(医師等の保有資格、設備、対応可能な疾患と治療の内容、対応可能な在宅医療、対応可能な介護サービス、セカンドオピニオン、地域連携体制など)
▼医療の実績、結果(人員配置、看護配置、医療安全対策、患者数、平均在院日数、死亡率、再入院率、疾患別・治療行為別の平均在院日数、患者満足度調査結果、日本医療機能評価機構による認定の有無など)

 各都道府県では、この情報を整理し医療機関検索サイトを構築しています。例えば、東京都では「ひまわり」(医療機関案内サービス)、「t-薬局いんふぉ」(薬局案内サービス)を構築し、「キーワード(地域や診療科など)入力」による検索のほか、▼場所・日時▼診療科目▼対応できる外国語▼診療領域—などから医療機関を探せる環境を構築しています。

 そこでは、診療科や診療領域など別に、「自宅等を中心に、半径●メートル以内の医療機関」「●●駅付近の医療機関」を探すことができ、上述した医療機関情報を見ることが可能です。

 
厚労省は今般、この検索サイトの基礎情報となる「医療機関からの報告項目」について、次のような見直しを行ってはどうかを考えています。さらに「スマートフォンやタブレットへの対応」「外国語対応」なども検討してくことになります。
(1)報告内容の中には診療報酬に関連する事項(指導料や加算の届け出の有無など)もあり、2018年度診療報酬改定を踏まえた見直しを行う
(2)医療現場の負担軽減を行うため、他制度(例えば病床機能報告制度)で収集している項目との整理を行う
(3)患者の利便性を高めるため、海外の類似制度で盛り込まれている項目を追加する

 
まず(1)については、例えば「オンライン診療」を実施しているか否か、などを新項目といて追加する考えが、厚労省から例示されています。また医療機能の評価について、JCI(Joint Commission International、医療機関の国際的評価機関)による認証もあり、これらの整理もなされる見込みです(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

「診療の質」情報を公開するだけでも、医療機関の質は向上する

一方、(3)については、例えば米国では、連邦政府と医療保険者(高齢者向けのメディ・ケア、低所得は向けのメディ・ケイド)が協働して「Hospital Compare」というサイトを構築。全米の83.1%の病院が参加し、▼死亡率▼医療安全▼再入院率▼患者の声▼治療の効果▼治療に関する時間▼効率的な検査の利用―など57項目にわたる情報を掲載されています。さらに、個別医療機関の情報にとどまらず、例えば「骨折し、医療機関に係ってから鎮痛剤を投与されるまでの時間」や「救急搬送されて処置等を終え、退室するまでの時間」などについて、当該病院の数値はもちろん、「州平均値」「合衆国平均値」なども併記され、当該病院の機能や立ち位置を見ることが可能になっています。
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救急室に入ってから退室するまでの時間を、「当該病院の経年比較」(下部の青い棒グラフ)、「競合病院との比較」(上部の薄緑色の表)可能となっている
救急室に入ってから退室するまでの時間を、「当該病院の経年比較」(下部の青い棒グラフ)、「競合病院との比較」(上部の薄緑色の表)可能となっている
 
また英国では、NHS(National Health Service)が全医療機関を対象に1925項目にもおよび情報を公開しており、そこでは患者の口コミなどをもとに医療機関を「星印」でいわばランク付けしています。

これらの中には「診療の質」に関する情報も数多く含まれており、我が国の医療機能情報提供制度や海外の状況を調査研究している福井次矢参考人(聖路加国際大学学長)は、「我が国の医療機能情報提供制度(医療機関検索サイト)を利用したことのある人(195名)の9割近くは『診療の質』に関する情報の追加によって検索に役立つと考えている。我が国でも、診療の質を示す指標(QI、Quality Indicator)の公開を検討すべき」と提言しています。

この点、平川則夫構成員(日本労働組合総連合会総合政策局長)らは、「医療機関によって患者の構成が異なる」点などを指摘し、工夫が必要との見解も示しています。例えば「がんの5年生存率」1つをとっても、「早期患者のみを受け入れる」病院と「ステージの高い進行した患者も積極的に受け入れる」病院とでは、数字の意味が異なっていくという指摘です。

福井参考人も「患者構成等の標準化など、技術的対応はまだ完成の域には達していない」とし、工夫の余地が多くあることを認めています。もっとも福井参考人は「数字を公表することで、各病院の『診療の質』が明らかに高まっている」と強調。しかも「DPCデータなどから抽出するのではなく、各病院がQI指標を実際に計算し、公表することで『診療の質』が改善していると感じる」とも指摘。生存率や治癒率などは「単純比較できない」点をしっかりと明示した上で、QI指標を公表していくことの重要性(数字を公表するだけで改善する)を強く訴えました。

検討会では、こうした『診療の質』に関する情報について、▼医療機関からの提供をどう求めていくか(負担を考慮すればDPCデータ等からの抽出が考えられるが、nonDPC病院をどうするか、DPCデータでない方が好ましいという指摘もある点などを検討する必要がある)▼提供されたデータをどう公開するか(単純比較できないとの但し書きを設けても、数字の公表に懸念を示す向きも少なくない)—といった点を、ある程度、時間をかけて検討していくことになります。したがって、(1)や(2)の項目見直しと同時期(検討会で今夏までに見直し内容を固め、今秋に都道府県に通達し、都道府県で2019年度以降、サイトの改修等を行う)に追加されることは考えにくそうです。

 この点に関連して尾形裕也構成員(九州大学名誉教授)は「米国では、医療機関同士を比較可能となっている。選択は『比較』の後に行われるもので、我が国でも大いに参考にすべきである」と指摘しました。非常に重要な視点ですが、システムの構築などに費用・時間もかかると思われ、中長期的な目標と考えられます。

 なお山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「地域医療構想を国民にも理解してもらうため、例えば、『この病院は、どこから患者が来て、どこに退院していくのか』(急性期であれば、自宅等から入院し、回復期等の病棟へ転院することが多い、など)という機能も明示すべき」と、やや異なる視点からの提案を行っています。

都道府県の医療機関検索サイト、認知度は10%程度

 ところで、冒頭に述べたように医療機能情報提供制度(医療機関検索サイト)を知っている人は、それほど多くないようです。

 福井参考人の研究(全国の20歳以上の男女2875名を対象にしたアンケート調査)によれば、認知度は11.0%。東京都や滋賀県でも、同程度の認知度にとどまっています。

 この数字の評価はさまざまですが(患者ではなく、一般国民の1割強が認知しており、相当高いとの見方も可能)、山口構成員は「6年ほど前の状況と変わっていない。広報を強化するなど、周知に力を入れる必要がある」と指摘。

 木川和弘構成員(アンダーソン・毛利・友常法律事務所、弁護士)は「民間サイトと競争するのではなく協働すべき」、石川広己構成員(日本医師会常任理事)は「例えば『頭痛』など症状から医療機関を検索できるような工夫をしてはどうか」と提案しています。

 患者や一般国民が医療機関をインターネットで探す際には、例えば検索サイト(googleやyahooなど)で「症状や場所」を入力し、検索することがあるでしょう。その際、検索結果に「医療機能情報提供制度(医療機関検索サイト)」が上位に上がれば、認知度も高まってくると思われますが、一定の専門知識が必要となり、また事業者への依頼する場合には費用もかかります。

 メディ・ウォッチでも「医療機能情報提供制度(医療機関検索サイト)」の普及に、微力ながら協力していきたいと思います。

「医療機能情報提供制度(医療機関検索サイト)」は、こちらから!
 
 

 

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