健保組合財政は改善しているが6割が赤字、2割強が協会けんぽ以上の保険料率―2018年度健保連予算



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 主に大企業のサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合では、2018年度には6割が赤字となり、2割強で「協会けんぽ以上の保険料率」が設定されている―。

 こうした状況が、4月23日に健康保険組合連合会が発表した2018年度の「健保組合予算早期集計結果の概要」から明らかになりました(健保連のサイトはこちら)(前年度の状況はこちら)。健保連では、「このままでは国民皆保険の崩壊が危惧され、高齢者医療制度改革などを実行する必要がある」と強調しています。

赤字額は2017年度に比べて1643億円減少(改善)、赤字組合は全体の6割に

 健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)では、2018年度予算データの報告があった1372組合の数値を集計・分析し、健保組合全体(1389組合)の状況を推計しています。

 2018年度は、経常収入8兆2195億円(前年度予算に比べて1657億円・2.06%増)に対して、経常支出が8兆3576億円(同14億円・0.02%増)で、健保組合全体で1381億円の赤字となる見込みです。前年度に比べて赤字総額が1643億円減少しており、財政状況の改善が伺えます。また赤字の組合数は866で全体の62.3%を占めていますが、前年度予算に比べて143・9.9ポイント減少し、やはり改善が伺えます。
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 収入増の要因は、▼被保険者数の増加(保険料収入増の67.7%を占める)▼標準賞与月額の増加(同15.2%)▼保険料率の引き上げ(同9.4%)▼標準報酬月額の増加(同7.8%)—などです。

 一方、支出については、2018年度の診療報酬マイナス改定(ネットでマイナス1.19%)により、給付費は微増にとどまる見込みです。また、健保組合財政を苦しめる拠出金の総額は3兆4925億円で、前年度から418億円・1.18%減少します。

 また、▼平均標準報酬月額(いわば給与の水準)▼平均標準賞与額(いわばボーナスの水準)▼法定給付費▼支援金・納付金等—を、「2007年度を100」として、どのように推移しているのかをみると、11年後となる2018年度には、▼平均標準報酬月額(いわば給与の水準)は99.9(ほぼ変わらず)▲平均標準賞与額(いわばボーナスの水準)は92.3(減少)—と収入のベースが減少する一方で、▼法定給付費は122.9▼支援金・納付金等は142.3—と大幅に増加しており、年度ごとの変動はあるものの「健保組合財政が厳しい」状況が継続していることが分かります。「医療費そのものを適正な水準に抑える」方策を今から採らなければ、公的医療保険制度は早晩破綻することは確実です。厚生労働省は「健康寿命と1人当たり医療費とは逆相関関係にある」(健康寿命が長くなると、1人当たり医療費は低くなる)ことに着目し、「予防・健康づくりの一体的実施」などを推進する構えで、今後の取り組みに注目が集まります。
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協会けんぽ以上の保険料率設定する組合は全体の22.81%

 健保組合の主な収入は、加入者が納める保険料です。全組合の平均保険料率は、2018年度には9.215%(前年度から0.051ポイント増加)となり、前年度に続いて4年連続で9%を超えました。

 また、主に中小企業のサラリーマンとその家族が加入する「協会けんぽ」の平均保険料率(10.0%)以上の保険料率を設定している組合は313組合で、健保組合全体の22.81%となりました。保険料率が協会けんぽよりも高くなれば、事業主・被保険者にとって「健保組合に加入・設立するメリット」がなくなり、【健保組合の解散→協会けんぽへの加入の増加】につながります。協会けんぽには多額の国費(16.4%)が投入されており、健保組合の加算は、国家財政を圧迫する要因の1つとなります。
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高齢者支援金などの負担割合、軽い方向にシフトしているが・・・

 健保組合の支出の中で大きなシェアを占めるのは、給付費(加入者が医療機関にかかった場合の7割負担分)と後期高齢者支援金(75歳以上)・前期退職者給付金(70-74歳)の2項目です。この2項目を「義務的経費」として捉え、「支援金・給付金」の占める割合を健保組合ごとに見てみると、40%以上50%未満の組合が全体の60.5%(前年度から4.1ポイント増)と最も多く、次いで50%以上60%未満の20.3%(同4.4ポイント減)、40%未満の18.9%(同0.8ポイント増)、60%以上が0.4%(同0.4ポイント減)となっています。前年度と比べて、支援金などの負担割合が小さくなる(軽くなる)方向にシフトしていますが、健保連では「50%以上の組合が20.6%、40%以上の組合が81.1%」もある現状を強く問題視しています。
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 医療保険制度の理念は「医療が必要な人を、皆で支える」ことにありますから、「負担能力のある若人」が「負担能力が小さく、傷病に罹患しやすい高齢者」を支える構造そのものは当然の仕組みと言えます。とは言え、「自らの加入者以外の医療費への負担の方が大きい」という事態が極めて長期間継続し、これに疑問を感じる人が増えれば、「社会連帯」という医療保険制度の基盤が崩れていく可能性もあります。健保連では「75歳以上の後期高齢者についても、新規に適用される人から2割負担を導入すべき」と訴えており、今後、社会保障審議会・医療保険部会などで議論の俎上に上がる可能性があります(関連記事はこちらこちら)。

 
 なお、介護保険を支えるための納付金(介護納付金)は、今年度(2017年)には1人当たり9万6496円となり、前年度から3313円・3.56%の増加となっています。納付金の計算方法(負担方法)は、後期高齢者支援金と同じ「負担能力に応じた負担」(総報酬割)に段階的に移行しています(2017年度は8月から2分の1総報酬割、2018年度は年度を通して2分の1総報酬割、2019年度から年度を通して4分の3総報酬割、2020年度から全面総報酬割)。今後も、健保組合の納付金負担は増加していく見込みですが、やはり「介護費の伸びの適正化」を考えていく必要があります。
 

 こうした厳しい財政状況を受け、健保連は「このままでは現役世代は高齢者の医療費を支えきれず、国民皆保険の崩壊が危惧される」とし、政府に対し▼高齢者医療制度改革(拠出金負担の上限設定、高齢者への応分負担)▼消費増税の実行(2019年10月)と財源配分の見直し▼保険給付範囲の見直しを含む医療費適正化▼健康な高齢者(支える側)を増やすための保健事業強化—などを行うよう要望しています(関連記事はこちらこちら)。
 
 

 

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