看護必要度データの精度向上、病院ごとに改善策を検討―自病院の課題をデータで探る「GHC分析塾」開催



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 グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)は3月27日、「病院ダッシュボードχGHC病院経営データ分析塾」を東京都内で開催しました。入院医療の評価体系が大きく見直される2018年度診療報酬改定を受け、急性期病院では入院患者の「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)のデータ精度向上が急務です。セミナーでは、GHCの病院経営分析ツール「病院ダッシュボードχ(カイ)」を用いて、看護必要度データの過剰・過小評価などを詳しく調べる方法を紹介。セミナー参加者はそれぞれ、自病院のDPCデータを実際に分析して課題を発見し、データ精度向上に向けた改善策を検討しました。

GHCアソシエイトマネジャーの八木保が分析塾の講師を務めた
GHCアソシエイトマネジャーの八木保が分析塾の講師を務めた

「病院ダッシュボードχ」リリース後、初の分析塾を開催

 病院職員が自病院の経営課題を探るためのデータ分析ツール「病院ダッシュボード」が、昨年(2017年)12月に大幅にパワーアップ。より多機能で手厚いサポートを強化した「病院ダッシュボードχ」が誕生しました(関連記事『GHCが多機能型の病院経営支援システム「病院ダッシュボードχ(カイ)」をリリース』)。

 GHCでは、不定期に「GHC病院経営データ分析塾」(以下、分析塾)を開き、「病院ダッシュボード」の使用方法などを用途ごとに伝えてきました(関連記事『専門コンサルによる勉強会で使いこなせる―事例で学ぶ、病院経営データ分析入門(6)』)。「病院ダッシュボードχ」のリリース後、初めて開催した3月27日の分析塾では、▼看護必要度の評価精度を高める方法▼機能評価係数IIをアップさせる方法―を取り上げました。

 今後、大阪市や名古屋市などでも分析塾を開催します。詳細は、近くGHCホームページなどで公表します。

セミナーの様子
セミナーの様子

改定で大きく変わる看護必要度、自病院の状況確認が求められる

 メディ・ウォッチでお伝えしているとおり、2018年度診療報酬改定では、7対1・10対1一般病棟入院基本料が7区分の【急性期一般入院料】へと再編・統合されます(関連記事『【2018年度診療報酬改定答申・速報1】7対1と10対1の中間の入院料、1561点と1491点に設定』)。従前の7対1に相当する【急性期一般入院料1】は、看護必要度評価票に基づく重症患者割合が「30%以上」でなければ届け出ることができません。従前の「25%以上」よりも5ポイント厳格化されています。

 また、重症患者割合の計算方法として、従前の「看護必要度評価票」に基づく方法(看護必要度I」と、新たなDPCデータに基づく方法((看護必要度II)の2種類が用意され、病院側がどちらかを選択できる仕組みとなったことも注目を集めています。

 3月27日の分析塾では、講師を務めたGHCアソシエイトマネジャーの八木保が、(1)改定後の重症患者割合の基準値(急性期一般入院料1で、看護必要度Iを用いた場合は30%以上)を満たすことができるか(2)「看護必要度I」と「看護必要度II」の評価結果に大きな乖離がないか―を確認するよう促しました。

どの項目・病棟で評価漏れが起こっているか確認し、対策を

 「病院ダッシュボードχ」には、自病院の改定後の重症患者割合を、「看護必要度I」と「看護必要度II」のでそれぞれで試算できる「改定シミュレーション機能」が搭載されています。

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 この機能では、重症患者割合の推移を調べることや、病棟別に比較することも可能です。

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 試算の結果、▼「看護必要度I」に基づく重症患者割合が30%に満たない病院や、▼看護必要度IIの重症患者割合-看護必要度Ⅰの重症患者割合が0.04を超える病院(評価結果に問題があり、看護必要度IIを用いることができない)—では、「評価精度に改善の余地がないか確認した方がよい」と八木は指摘します。例えば、看護必要度評価票に基づいたチェック(患者の評価)に漏れがあり、重症患者割合が実際よりも低くなっている可能性があるのです。

 GHCでは、看護必要度の精度を高めるために、従前よりHファイルとEF統合ファイルの「一致率」に注目してきました。例えば、「EF統合ファイルでは血液製剤使用が確認できるのに、HファイルではA項目について血液製剤にチェックが入っていない」「HファイルではA項目についてシリンジポンプのチェックがあるものの、EF統合ファイルでは該当する請求項目がない」といった事例が多ければ、一致率が下がってしまうと同時に、Hファイル(病棟等における看護必要度の評価)、EF統合ファイル(医事課の請求業務)に何らかの課題があることが分かります。

 2018年度改定では、看護必要度評価についてIとIIの2方式が設定されたことにより、この一致率が実務的にも重要になってきたと言えます。「病院ダッシュボードχ」では、「A項目」「C項目」について、評価項目ごとの一致率を把握し、評価漏れの有無を一目で確認できます。八木は「他病院と比べて一致率の低い項目に焦点を合わせ、その理由を分析し、評価漏れを減らす対策を考えてほしい」と呼び掛けました。

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 さらに「病院ダッシュボードχ」では、一致率を病棟ごとや疾患ごとに把握する機能を搭載しており、評価漏れなどの要因を探ることができます。例えば特定の病棟で一致率が目立って低ければ、当該病棟の業務フローや看護必要度への理解に問題がある可能性が伺えます。さらに、症例に遡って一致率を見ることも可能で、「どの項目が入院何日目でずれているのか」といった点を調べることもできます。

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「B項目」の評価精度の確認もできる

 患者の状況等を評価する「B項目」は、EFファイルとの一致率などの指標では評価精度を確認できません。しかし、「病院ダッシュボードχ」を使えば「B項目」の評価精度も確認できます。

 自病院のデータのみをもとにして、病棟別・月別にB項目の評価状況を確認し、課題のある(評価漏れの可能性がある)病棟や月をピックアップすること、はもちろん、他病院(全国の病院、同規模の病院など、さまざまに設定可能)とベンチマーク分析も可能です。八木は「他病院と比べて割合が低い場合、『B項目』の評価基準が厳し過ぎる可能性もある。院内で再検討してほしい」と述べました。

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 なお、看護必要度に関する「病院ダッシュボードχ」の機能については、関連記事『診療報酬改定後の重症患者割合を試算できる「看護必要度シミュレーション」』でも紹介しています。

機能評価係数IIアップへ、4係数の改善ポイントが明らかに

 分析塾では機能評価係数IIの改善方法も検討しました。2018年度診療報酬改定で、機能評価係数IIは▼保険診療▼効率性▼複雑性▼カバー率▼地域医療▼救急医療―の6つに整理しなおされました。これらのうち、とくに重要となる▼効率性▼複雑性▼カバー率▼救急医療―の4係数を高める上での課題を、「病院ダッシュボードχ」で探ることができます。

【効率性】
効率性係数をアップさせるためには、闇雲に在院日数を短縮させるのではなく、「全国での症例数が多い診断群分類に着目して、その在院日数を短縮する」ことが必要です。「病院ダッシュボードχ」では、在院日数をとくに短縮すべき診断群分類について、自病院と他病院の在院期間の違いを把握できます。

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【複雑性】
複雑性係数を高くするためには、「包括範囲出来高点数が全国的に高い診断群分類」の入院件数を増やす必要があります。手術や処置だけでなく、副傷病にまで着目して診断群分類を正しく選ぶことが重要です。「病院ダッシュボードχ」では、「副傷病をチェックした割合」を他病院と比較する機能を搭載。副傷病のチェック漏れがないか確認できます。

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【カバー率】
カバー率係数は、入院実績が「年間12症例以上」の診断群分類の数が多いほど高くなります。「病院ダッシュボードχ」で月当たり1症例(=年12症例)前後の診断群分類を把握でき、次のアクションにつなげられます。

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【救急医療】
救急医療係数を高めたい病院では、【救急医療管理加算】の算定件数アップが重要な対策となります。「病院ダッシュボードχ」を使えば、▼緊急入院(予定外)患者のうち何%に【救急医療管理加算】を算定できているか▼特定の診断群分類について、他病院が「どのような状態の患者について【救急医療管理加算】を算定しているか―などが明らかになり、具体的な対策につなげることができます。

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解説を担当したコンサルタント 八木 保(やぎ・たもつ)

yagi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門アソシエイトマネジャー。理学療法士、中小企業診断士。
名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻卒業。大手商社にてヘルスケア業界におけるマーケティング商品開発、中小企業のコンサルティングを経て、入社。リハビリの質と生産性向上、コスト削減、財務分析、DPC分析などを得意とする。多数の医療機関のコンサルティングを行うとともに、社内のCS向上チームや社外のCQI(Cancer Quality Initiative)研究会のサポートなどでも精力的に活動する(諏訪中央病院の事例紹介はこちら、津島市民病院の事例紹介はこちら)。

 

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