ACP、実は既に医療・介護現場で実践している「最期の過ごし方」に関する話し合い―厚労省・検討会



Pocket

 人生の最終段階において、自らの望まない医療・介護を受けることのないよう、患者本人が、家族等や医療・介護関係者らと、繰り返し「どのような医療・介護を受けたいか」を話し合っておくことが重要である。ACP(Advanced Care Planning)とは、このような、既に医療・介護現場で多くの関係者が実践している取り組みのとこであり、これをさらに広く普及していくことが重要である―。

 3月23日に開催された「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」(以下、検討会)で、こうした内容を盛り込んだ報告書が大筋でまとまりました。樋口範雄座長(武蔵野大学法学部教授)が文言等を整理し、3月中に正式版が公表される見込みです(関連記事はこちらこちらこちら)。

3月23日に開催された、「第6回 人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」
3月23日に開催された、「第6回 人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」

「人生の最終段階」を考えたくない人、話したくない人への強制は厳禁

 「人生の最終段階にどのような医療・ケアを受けたいか」は人によって異なります。しかし、例えば「自宅で家族に守られて最期を迎えたい、延命治療などはしないでほしい」と考える人であっても、その考えが家族や医療従事者に共有されていなければ、本人にとっては不本意な医療・ケアが提供される可能性があります。

そこで、国民一人ひとりが「人生の最終段階にどのような医療・ケアを受けたいかを、家族や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合い、可能であれば文書にしておく」ことが重要となります。この話し合いのプロセスがACP(Advanced Care Planning)と呼ばれるものです。

検討会では、こうしたACPの取り組みを広く国民全般に周知・普及するために、どのような方策が考えられるかを議論。今般、次のように「ターゲット」ごとに効果的な方策を提示しました(関連記事はこちらこちら)。

(1)人生の最終段階における医療・ケアの在り方を自分ごととして考える時期にある方(主に高齢者)
(2)(1)の方を身近で支える立場にある家族等(家族や親しい友人など)
(3)本人や家族等を支える医療・介護従事者
(4)国民全体

 このうち(1)から(3)の対象者では、まさに「今」から、人生の最終段階にどういった医療・ケアを受けたいかを考え、また本人をどのように支えていくかを考える必要があります。

 (1)の本人や(2)の家族等は、次のような事項について具体的に考えておくことが重要です。
▽人生の最終段階において起こりうる心身の状態の変化
▽人生の最終段階に行われる可能性がある医療・ケア方法(点滴や胃瘻などの栄養・水分補給、疼痛緩和の方法、人工呼吸器の使用、心肺蘇生処置等)
▽人生の最終段階に過ごす療養場所(医療機関、介護施設、在宅等における療養上の特徴等)

医療・介護従事者は別として、一般の人は「人生の最終段階」において、自分の身体・心に何が起こるかを十分に知りません。特に核家族化が進行し、「死」を身近に感じなくなった人ではなおさらです。このため、まず「人生の最終段階に、身体・心にどのような変化が生じるのか」を(3)の医療・介護従事者から情報提供してもらい、それを踏まえて、「どこで過ごしたいか」(自宅か、病院か、介護施設か、など)、「どのような医療・介護を受けたいか、また受けたくないか」(心肺蘇生などをしてほしいか、してほしくないか、など)を考えていくことになります。

また、ここで重要となるのが、▼一度方針を決めた後も、心身の状態の変化等に応じて、本人の意思は変化しうるものであり、方針を「繰り返し、見直し、いつでも変更可能である」こと▼人生の最終段階について「考えたくない」という人に押し付けてはいけない―などといった点です。

さらに、医療・介護従事者が話し合いなどに参加する場合には、厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(新ガイドライン)を十分に踏まえることが求められます。あわせて、「医療・ケアチームと本人との関係が、上下関係のようにならないようにする」ことも極めて重要です。もっとも尊重すべきは「本人の意思」であり、そこに本人や家族等が十分に把握していない情報(例えば、人工心肺を装着するとどういう状態になるのか、胃瘻を増設すると何が変わるのか、など)を提供することが重要です。プロフェッショナルは、無意識のうちの議論を誘導してしまうこともありますので、この点は十分に留意する必要があります。

ACP、言葉は知られていないが、内容はすでに医療・介護現場の多くで実践されている

一方、(4)の国民全体についても、例えば交通事故などに巻き込まれ「人生の最終段階」を迎える可能性があります。その際に、自分の望まない医療・ケアを提供されてしまうのは不幸なことですが、こうした点について考える、さらに家族等と話し合うといった機会は非常に少ないのが実際でしょう。

そこで検討会では、▼国によるイベント開催や学習サイトの開設▼地方自治体によるリーフレット配布やセミナーの開催▼民間団体によるセミナー開催(たとえば、特定健診等の受診時や、結婚・出産などのライフイベント時など)▼学校や大学での教育―など、さまざまな機会を通じて、「人生の最終段階」を考え、話し合うことの重要性を周知・普及していくべきと訴えています。

 
ところで、前述したACPについて、実は医療・介護従事者の中でもこの用語は十分に浸透していません。しかし、「人生の最終段階においてどういった医療・介護を受けたいか(医療・介護側からすれば提供すべきか)を、本人・家族等と繰り返し話し合う」という内容については、把握し、既に実践しているケースがほとんどであると、多くの構成員が指摘しています。また、一般国民においても、「ACPが何か」は知らずとも、これまで述べてきたことが重要であるという点については、一定程度の共通認識があると言えるでしょう。

そう考えると、「ACPの普及・啓発」はそれほど難しいことではなさそうです。今後、報告書をベースに、国や地方自治体がどういった取り組みを進めていくのか注目を集めそうです。

 

 

MW_GHC_logo

 

【関連記事】

人生の最終段階の医療・ケア方針、決定後も「繰り返し話し合う」ことが重要―厚労省
人生の最終段階の医療・ケア、ガイドライン改訂版を近く公表―厚労省・検討会
人生の最終段階にどのような医療・ケアを受けたいか、一人ひとりが考えることが重要―厚労省・検討会
人生最終段階の医療、繰り返し話し合うことや意思推定者の指名が重要―厚労省検討会
人生の最終段階の医療方針、決定後も繰り返し話し合い、修正していくことが重要―厚労省検討会
人生の最終段階の医療、国民にどう普及啓発するか2017年度内に意見まとめ—厚労省検討会
人生の最終段階における医療、患者の意思決定を基本に―厚労省
2018年度、医療・年金などの経費は6300億円増に抑え、29兆4972億円に—2018年度厚労省概算要求

療養病棟入院基本料、2018年度改定で「療養1」に一本化—中医協総会(1)

Pocket