医療事故調査センター、焦点は再発防止策-報告書に記載すべきか 意見平行線、厚労省検討会



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 医療事故調査制度の10月施行に向けた検討が大詰めを迎えています。5日に開かれた「医療事故調査制度の施行に係る検討会」では、医療機関や医療事故調査・支援センター(センター)が行う調査について細部にわたる検討が行われましたが、センターがまとめる報告書に再発防止策などを記載すべきかどうかで意見に大きな隔たりがあり、最終的な一本化は難しそうです。厚生労働省医政局総務課医療安全推進室の大坪寛子室長は、「次回2月25日の会合で最終的な議論をしていただきたい」と希望しています。

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2月5日に開催された、第5回「医療事故調査制度の施行に係る検討会」
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院内調査報告書、遺族へ文書で示すべきか

 10月から施行される医療事故調査制度は、(1)医療事故が発生した場合、医療機関がセンターに報告する(2)医療機関は院内調査を行い、その結果をセンターと遺族に報告する(3)遺族や医療機関から依頼があった場合にはセンターが調査を行い、その結果を遺族・医療機関に説明する(4)センターは事故情報を集積・分析し、医療事故の再発防止に関する普及啓発を行う-という仕組みです。

 5日の検討会では、(2)の医療機関調査と(3)のセンター調査について集中的な検討を行いました。

 (2)の医療機関調査は、▽診療録その他の診療に関する記録の確認▽医療従事者からのヒアリング▽その他の関係者からのヒアリング▽解剖・Ai(死亡時画像診断)の実施▽医薬品、医療機器、設備等の確認▽血液、尿などの検査-の中から必要と思われるものを医療機関の管理者が選択して実施します。

 この調査は「医療事故の原因を明らかにする」ために実施されますが、医療機関単独での調査能力には限界があることから、原因が明らかになるとは必ずしも限りません。

 調査結果はセンターと遺族に報告され、その内容は▽調査項目や手法▽臨床経過(客観的事実の経過)▽原因を明らかにするための調査の結果▽管理者が講ずる再発防止策-などです。

 これまでの議論では「個別医療機関で再発防止策などは立案することは難しく、(報告書への)記載を求めるべきではない」といった意見も出されていましたが、「任意的記載事項」とする方向が固まりました。ただし、有賀徹委員(全国医学部長病院長会議「大学病院の医療事故対策委員会」委員長)ら医療提供側からは、「医療事故の原因などはさまざまな要素が複雑に絡み合って生じる。『分かる範囲で書けばよい』と法律家の委員は述べるが、臨床現場では、それがとても難しいことを理解してほしい」と付言しています。

 また、報告書に担当医の氏名などは記載されず(匿名化)、ヒアリングの内容など院内調査の内部資料は報告対象に含まれません。

 調査結果の遺族への報告方法について、厚労省は「口頭または文書」と提案しましたが、大坪室長は「文書を提示する場合でも、口頭での報告・説明が大前提」と強調しており、次の2つから管理者が選択することになります。

▽口頭による報告・説明を行う

▽口頭による報告・説明と併せて文書も提示する

 選択にあたって「遺族の意向」を踏まえるべきかどうかをめぐり、意見は割れており、今後、調整が図られます。この点、永井裕之委員(患者の視点で医療安全を考える連絡協議会代表)や高宮眞樹委員(日本精神科病院協会常務理事)らは「病院と遺族との信頼関係を壊さないために、遺族の意向を踏まえて選択すべきだ」と強く主張していますが、松原謙二委員(日本医師会副会長)らは慎重姿勢を崩していません。

センター報告書に再発防止策などを記載すべきか

 (3)のセンター調査は、遺族や医療機関の管理者の依頼を受けて行われるもので、センターが自主的・能動的に行うものではありません。例えば「遺族が院内調査の結果に満足できない」「医療機関の管理者が自らの調査能力に不安を感じる」「院内調査がなかなか行われない」といった場合などにセンター調査が行われるとみられます。

 前二者は院内調査の後に行われるもので、「院内調査の検証」が中心となります。後者は「院内調査の進ちょく状況を確認する」など、医療機関とセンターが連携して、院内調査を同時並行的に行います。いずれのケースでも、医療機関にはセンターの調査に協力する義務が課されます。

 センターによる調査の結果は遺族・医療機関に報告されますが、そこに▽原因を明らかにするための調査の結果▽再発防止策-を含めるべきかどうかについて、意見に大きな隔たりがあります。

 永井委員や加藤良夫委員(南山大学大学院法務研究科教授・弁護士)らは「医療事故の再発を防ぐための仕組みであり、(再発防止策などを)必ず記載すべき」と強く主張しています。

 一方、大磯義一郎委員(浜松医科大学医学部教授)は「事故の原因や再発防止の中には、医療関係者個人の過失を記載するケースも出てくる。それを契機に刑事・民事訴訟が提起されることもあり、医療関係者には大きな精神的負担になる」と述べ、センター調査の報告書にも再発防止策などは記載すべきでないとしています。

 こうした意見の隔たりは検討会の発足当初からあり、埋まる気配はありません。このため大坪室長は「一本化は難しいかもしれない」と会合終了後にコメントしています。その場合、検討会の報告書には賛否両論を併記し、最終的に厚労省が取り扱いを決定することになります。

 また、厚労省はセンター調査の報告書の取り扱いについて、「法的義務のない開示請求に応じない」こととしてはどうかと提案しました。例えばマスコミなどが開示を求めてもセンターはこれを拒めますが、民事訴訟において文書提出命令が出た場合には拒むことはできません。

 この提案は委員に了承されましたが、「センター調査報告書以外の資料」の取り扱いは明らかになっておらず、次回の会合であらためて整理されるもようです。

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