がんの5年生存率・10年生存率は前年調査より若干低下、乳がんでは向上―国がん



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 がんの5年生存率は、部位・病期によって大きく異なり、例えばステージIの乳がんでは100%だが、肝がんではステージIIでも35.6%に低下してしまう。また乳がんを除き、5年生存率・10年生存率ともに全体として前年調査より若干低下してしまっている―。

 国立がん研究センターが2月28日に公表した「全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について5年生存率、10年生存率データ更新」では、このような状況が明らかとなりました(国がんのサイトは関連記事はこちら)。

ステージIに限定しても、乳がんは5年生存率100%だが、肝がんは59.6%にとどまる

 国がんでは、従前から全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)と協力して、32の加盟施設(国がん中央病院、がん研有明病院、岩手県立中央病院、九州がんセンターなど)における診断治療症例について5年生存率を発表。さらに一昨年(2016年)1月から、がん研有明病院、岩手県立中央病院など20施設のデータをもとにした「10年生存率」も公表しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 今般、2007-2009年にがんの診断治療を行った13万2869症例を対象として5年相対生存率を、2001-2004年に診断治療を行った5万7147症例を対象として10年相対生存率を出しました。

 相対生存率とは、がん以外の死因によって死亡する確率を補正した生存率を意味し、「実測生存率」(死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率)÷「対象者と同じ性・年齢分布をもつ日本人の期待生存確率」で計算されます。以下の「生存率」は、すべて相対生存率をさします。

 まず5年生存率について見てみましょう。

全部位全臨床病期の5年生存率は67.6%でした。前年の69.4%(2006-2008年にがんの診断治療を行った12万1263症例が対象)から1.8ポイント低下、前々年の68.8%(2004-2007年に診断治療を行った14万7354症例が対象)から1.2ポイント低下していますが、国がんでは「1997年の62.0%から徐々に改善傾向がみられる。化学療法、放射線治療や早期発見技術の進歩が貢献していると考えられる」と分析しています。

 もっとも部位別(全臨床病期)に見ると、次のような大きなバラつきがあることが分かります。

【90%超】
▼前立腺:100%(前年から増減なし)▼乳:93.5%(同0.1ポイント低下)▼甲状腺:92.1%(同0.7ポイント低下)

【70%以上90%未満】
▼子宮体:85.6%(同0.8ポイント低下)▼大腸:76.0%(同0.3ポイント低下)▼子宮頸:74.8%(同0.2ポイント向上)▼胃:74.5%(同増減なし)―など

【50%以上70%未満】
▼卵巣:62.2%(同1.1ポイント向上)

【30%以上50%未満】
▼肺:42.7%(同2.0ポイント低下)▼食道:43.3%(同0.1ポイント低下)▼肝:35.3%(同0.9ポイント低下)

【30%未満】
▼胆のう胆道:26.4%(同1.9ポイント低下)▼膵:9.3%(同0.1ポイント向上)

 子宮頸がん、卵巣がん、膵臓がんでは5年生存率が前年より甲状していますが、他のがん種では低下してしまっています。とくに「肺がん」「胆のう胆道がん」では低下が大きく、今後の状況を注意深く見ていく必要があります(関連記事はこちらこちら)。

 
 さらに5大がんについて病期別の生存率を見ると、前年との比較による増減はあるものの、全体として「ステージが低ければ5年生存率が高い」ことを改めて認識できます。早期発見・早期治療が重要であり、第3期がん対策推進基本計画に則って検診等の推進をさらに充実していくことが求められるでしょう(関連記事はこちらこちら)。

【胃がん】
▼ステージI:97.4%(同0.7ポイント低下)▼ステージII:65.0%(同1.4ポイント低下)▼ステージIII:47.1%(同0.2ポイント低下)▼ステージIV:7.2%(同0.1ポイント低下)

【大腸がん(結腸がんと直腸がん)】
▼ステージI:97.6%(同2.3ポイント低下)▼ステージII:90.0%(同1.6ポイント低下)▼ステージIII:84.2%(同0.1ポイント低下)▼ステージIV:20.2%(同0.6ポイント向上)

【肝がん】
▼ステージI:59.6%(同0.7ポイント向上)▼ステージII:35.6%(同4.1ポイント低下)▼ステージIII:14.0%(同1.2ポイント低下)▼ステージIV:1.9%(同1.2ポイント低下)

【肺がん(腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、その他)】
▼ステージI:81.8%(同2.0ポイント低下)▼ステージII:48.4%(同1.7ポイント低下)▼ステージIII:21.2%(同1.2ポイント低下)▼ステージIV:4.5%(同0.3ポイント低下)

【乳がん(女性のみ)】
▼ステージI:100.0%(同増減なし)▼ステージII:96.0%(同0.4ポイント向上)▼ステージIII:80.8%(同1.8ポイント低下)▼ステージIV:37.1%(同2.2ポイント向上)

がんの部位別・臨床病期別5年生存率(2007-2009年診断症例)(その1)
がんの部位別・臨床病期別5年生存率(2007-2009年診断症例)(その1)
がんの部位別・臨床病期別5年生存率(2007-2009年診断症例)(その2)
がんの部位別・臨床病期別5年生存率(2007-2009年診断症例)(その2)

胃・大腸・乳がんのステージI、10年生存率は9割程度で「共生」が重要に

 では、10年生存率に目を移してみましょう。

全部位全臨床病期の10年生存率は55.5%で、前年の58.5%(2000-2003年に診断治療を行った4万5359症例が対象)から3.0ポイント、前々年の58.2%(1999-2002年に診断治療を行った3万5287症例、58.2%)から2.7ポイント低下してしまいました。

部位別(全臨床病期)に見ると、次のようになっており、やはり大きなバラつきがあることが分かります。

【90%超】
▼前立腺:92.4%(同2.1ポイント低下)

【70%以上90%未満】
▼甲状腺:86.0%(同3.3ポイント低下)▼子宮体:79.0%(同2.9ポイント低下)▼乳:82.8%(同1.1ポイント向上)▼子宮頸:69.8%(同1.6ポイント低下)

【50%以上70%未満】
▼大腸:65.9%(同3.3ポイント低下)▼胃:64.3(同3.0ポイント低下)▼腎:62.4%(同3.6ポイント低下)

【30%以上50%未満】
▼卵巣:44.5%(同1.2ポイント低下)▼肺:30.4%(同2.2ポイント低下)

【30%未満】
▼食道:28.4%(同1.0ポイント低下)▼胆のう胆道:15.2%(同2.1ポイント低下)▼肝:14.6%(同1.8ポイント低下)▼膵:5.0%(同0.1ポイント低下)
 
 乳がんを除き、すべてのがん種で10年生存率は前年よりも低下していますが、新薬の開発等も進んでおり、より長期的な分析・研究が求められます。

 
 さらに5大がんについて病期別の生存率を見ると、次のようになっています。

【胃がん】
▼ステージI:89.7%(同4.2ポイント低下)▼ステージII:52.2%(同3.6ポイント低下)▼ステージIII:36.2%(同1.9ポイント低下)▼ステージIV:6.0%(同1.0イント低下)

【大腸がん(結腸がんと直腸がん)】
▼ステージI:90.8%(同4.5ポイント低下)▼ステージII:77.5%(同4.0ポイント低下)▼ステージIII:70.6%(同3.7ポイント低下)▼ステージIV:9.5%(同1.2ポイント向上)

【肝がん】
▼ステージI:25.7%(同6.3ポイント向上)▼ステージII:15.9%(同1.8ポイント低下)▼ステージIII:7.5%(同0.7ポイント低下)▼ステージIV:2.5%(同0.4ポイント向上)

【肺がん(腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、その他)】
▼ステージI:63.3%(同5.0ポイント低下)▼ステージII:28.5%(同0.3ポイント低下)▼ステージIII:13.2%(同2.8ポイント低下)▼ステージIV:2.8%(同0.6ポイント低下)

【乳がん(女性のみ)】
▼ステージI:95.4%(同0.4ポイント向上)▼ステージII:86.0%(同0.2ポイント低下)▼ステージIII:57.8%(同3.1ポイント向上)▼ステージIV:15.4%(同0.9ポイント向上)

がんの部位別・臨床病期別10年生存率(2001-2004年診断症例)(その1)
がんの部位別・臨床病期別10年生存率(2001-2004年診断症例)(その1)
がんの部位別・臨床病期別10年生存率(2001-2004年診断症例)(その2)
がんの部位別・臨床病期別10年生存率(2001-2004年診断症例)(その2)

 女性の乳がんで10年生存率の向上が見られるほかは、多くのがん種で低下している状況です。

 もっとも、ステージIで診断治療が行われた場合、胃がんや大腸がん、乳がんの患者では9割程度が10年間以上生存しており、第3期がん策推進基本計画で重点事項の1つに掲げられた「がんとの共生」(例えば、仕事と治療の両立をサポートする体制)が、我が国において極めて重要になってくることは確実です(関連記事はこちらこちら)。

第3期がん対策推進基本計画の概要
第3期がん対策推進基本計画の概要
 
2018年度の診療報酬改定でも、この点を保険制度でサポートするために、▼【療養・就労両立支援指導料】(6か月に1回、1000点を算定可能):治療担当医と産業医が連携して、就労に必要な指導などを行うことを評価する▼【療養・就労両立支援指導料】を取得し、さらに必要な相談支援に応じる体制の整備を評価する【相談体制充実加算】(500点)―が新設されました(関連記事はこちら)。

抗がん剤はもちろん、例えば肝がんにつながるC型肝炎を完治させる画期的な医薬品などの開発も続いており、「がんとの共生」は、さらに重要性を増すと言えるでしょう。

 

 

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