輸血時は「患者のE型肝炎感染リスク」も考慮せよ―厚労省



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 輸血用血液製剤を使用する際には、患者がE型肝炎ウイルス(HEV)に感染するリスクを考慮し、患者の様子を経過観察する必要がある―

 厚生労働省は2月1日に通知「輸血用血液製剤の使用時の安全確保措置の周知徹底について」を発出し、このような事項を医療機関が遵守するように、注意喚起しています(厚労省のサイトはこちら)。

HEV混入した人赤血球液使用し、患者が死亡

 人の血液を原料とする輸血用血液製剤に感染症を引き起こすウイルスが混入しないように、▼ウイルスのスクリーニング検査を行う▼献血時に健康状態を確認する―などの対策が講じられています。しかし、感染リスクを完全に排除することはできず、添付文書などで注意喚起が行われています(関連記事はこちら)。

 E型肝炎を引き起こすHEVは、加熱が不十分な豚肉などから感染することがあります。今般、生のシカ肉を食べたとされる人の血液を用いた輸血用血液製剤「人赤血球液」を、抗がん剤投与中の患者に使用した後、患者がHEVに感染し、劇症肝炎となって死亡した事例が、薬事・食品衛生審議会薬事分科会の血液事業部会運営委員会に報告されました。

必要に応じてHEVのマーカー検査も実施を

 この事例を重く見た厚労省は、今般の通知で、肝炎ウイルスの感染リスクに関して次の事項に注意するよう医療機関に求めています。

▼輸血用血液製剤の使用により、HEVやB型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)等の肝炎ウイルスに感染し、発症することがある。HBVとHCVの感染が疑われる場合などには、患者の輸血前後の肝炎ウイルスマーカー検査などを実施し経過観察を行うこととされている(製剤の添付文書)が、HEVについても必要に応じて、肝炎ウイルスマーカー検査などを実施し、患者の経過観察を行う

▼感染が認められた場合や、症状があらわれた場合には、適切な処置を行う。なお、原疾患治療などのために免疫抑制が必要な場合は、肝炎ウイルス感染による肝障害などのリスクを適切に考慮する

▼HEVについては、検査方法や治療方針などを、必要に応じて肝疾患診療連携拠点病院などの肝臓専門医に相談することも考慮する

▼輸血用血液製剤は、HBVやHCVについての検査には適合しているが、供血者が「ウインドウ期」(ウイルスに感染してから、検査で検出できるようになるまでの空白期間)にある場合などには、感染リスクが存在することに留意する

▼肝炎ウイルスの感染が疑われる場合は、製造販売業者が行う、輸血用血液製剤の適正使用のために必要な情報の収集に協力するよう努める

副作用発現に予め備えることも必要

 さらに今般の通知では、輸血用血液製剤を使用する際に、肝炎ウイルスのリスクに限らず、次の事項にも注意する必要があると注意喚起しています。

▼輸血中は患者の様子を適宜観察する。少なくとも輸血開始後約5分間は患者の観察を十分に行い、約15分経過した時点で再度観察する

▼輸血に際して、副作用発現時に救急処置をとれるように予め準備する

▼輸血には同種免疫などによる副作用や、ウイルスなどに感染する危険性があり得るので、他に代替治療法などがなく、有効性が危険性を上回る場合にのみ実施する

▼輸血を行う場合は、その必要性とともに感染症・副作用等のリスクについて、患者本人・家族らに文書で分かりやすく説明し、同意を得る

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