新専門医制度、偏在対策の効果検証せよ―医師養成と地域医療検討会



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 来年度(2018年度)から全面スタートする新専門医制度では、医師の地域偏在を助長しないように5都府県に専攻医採用の上限を設定したが、その数字や算出根拠となるデータを明らかにして、上限設定によって実際にどの程度偏在を抑えられたか検証する―。

 1月29日に開催された「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(以下、検討会)で、松原謙二参考人(日本専門医機構副理事長、吉村博邦委員:日本専門医機構理事長の代理出席)が、このような考えを明らかにしました。公表されたデータを基に、新専門医制度が医師の地域偏在を本当に助長しないか、検討会などで確認することになります。

1月29日に開催された、「第6回 今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」
1月29日に開催された、「第6回 今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」

専攻医の偏在防ぐため、東京などでは採用者数「過去の実績の平均以下」に

 2018年度から新たな専門医制度が全面スタートします。専門医の養成・認定はこれまで各学会が独自に行ってきましたが、「質の担保」「国民への分かりやすさ」を目指し、学会と日本専門医機構が協働して、統一的な基準で養成・認定する仕組みへと変わります。

 ただし、「質を追求するあまり、専門医を養成する施設の基準が高くなり、地域間・診療科間の医師偏在が助長されてしまうのではないか」との声が医療現場に根強く、日本専門医機構、学会、都道府県、厚生労働省が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」こととしています

 偏在が生じる原因の一つとして、「医師の大都市集中」があげられます。これを新専門医制度が助長しないよう、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の5都府県では、基本領域ごとの専攻医採用数を「過去5年間の後期研修医採用実績等の平均値以下に抑える」ことになっています(上限設定)。ただし、大都市においても不足が懸念される外科・産婦人科・病理・臨床検査の4領域では、この上限から除外されます。

上限値など確認し、今後の偏在対策に生かす

 日本専門医機構では、昨年(2017年)11月15日までの1次登録での採用状況(7791人分)を公表しています。その後18人が辞退したほか、今年(2018年)1月15日までの2次登録に応募した569人について、採用者の選考が進められています。2次登録の応募状況などはまだ公表されていませんが、1月29日の検討会で、松原参考人は「現時点では5都府県での上限が遵守され、都市部への専攻医集中が抑制されている」と説明しています(関連記事はこちら)。

1次登録での採用専攻医数(基幹施設の所在地・診療領域別)。7791人のうち18人は採用を辞退したという
1次登録での採用専攻医数(基幹施設の所在地・診療領域別)。7791人のうち18人は採用を辞退したという

 しかし、検討会の渋谷健司構成員(東京大学大学院国際保健政策学教授)は、「採用者数の上限がどのように設定され、専攻医の地域選択にどのような制御が働いたのか、数字で明らかにすべき」と指摘。その数字などに基づいて「偏在が明らかになった場合には、学会や日本専門医機構に是正を求めるとともに、今後の専攻医偏在対策に生かすべき」と主張しています。

 渋谷構成員の指摘を受けて、松原参考人は、▼各領域の5都府県の上限値▼上限値の根拠―などのデータを、次回の検討会に示す考えを述べています。

 領域ごとの上限値は、各基本領域学会が算出していますが、「5都府県それぞれで上限値は何人なのか」が明示されておらず、四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会で構成)なども公開を求めています(関連記事はこちら)。上限値などを踏まえた検討会での議論が注目されます。

医学生が臨床実習中に「実施すべき医行為」を明確に

 ところで、専門医研修をめぐって立谷秀清構成員(相馬市長、全国市長会副会長)からは「後期研修医として専攻医に来てもらうが、基本的な診療能力が備わっていない」との批判が以前からなされています。この背景には、▼初期臨床研修のプログラムが必ずしも十分に統一されていない▼大学医学部在学中の臨床実習中に学ぶべき医行為が十分に学べていない―という2つの課題があるようです。初期臨床研修までの養成過程を充実させれば、後期研修において「医師として」活躍できると期待されるのです。

 この点について、厚労省と文部科学省は共同して、医師の養成過程の見直しに着手しました。例えば後者の「臨床実習中に実施すべき医行為」については、臨床実習内容の実態調査結果を踏まえた上で、今年度内(2018年3月末まで)にも明確化させる考えです。

厚労省と文科省は、医師の養成過程を一体的に見直す
厚労省と文科省は、医師の養成過程を一体的に見直す
今年度(2017年度)の厚生労働科学特別研究事業で、臨床実習での医行為実施の実態を調査している。今後、この調査結果を踏まえて「臨床実習中に実施すべき医行為」が明確化される
今年度(2017年度)の厚生労働科学特別研究事業で、臨床実習での医行為実施の実態を調査している。今後、この調査結果を踏まえて「臨床実習中に実施すべき医行為」が明確化される

 現在、「医学生が実施してもよい医行為」(1991年)をベースに各大学において、医学生に「臨床実習でどのような医行為を実施させるか」を決めていますが、今後は、上記の「臨床実習中に実施すべき医行為」の中で示される▼実施すべき医行為▼実施が望ましい医行為▼実施すべきでない医行為―の具体例をもとに、臨床実習の内容を充実させていくことになるでしょう。

「医学生が実施してもよい医行為」は、1991年に取りまとめられた「臨床実習検討委員会最終報告」で例示されている
「医学生が実施してもよい医行為」は、1991年に取りまとめられた「臨床実習検討委員会最終報告」で例示されている

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