公立・公的病院の役割、調整会議で見直せるのか?―社保審・医療部会 第59回(3)



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 公立・公的病院が2025年に担う役割や、機能ごとの病床数について、地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で今年度(2017年度)中に協議し、明確化させる―。

 1月24日に開催された社会保障審議会・医療部会では、厚生労働省医政局地域医療計画課の佐々木健課長が、「地域医療構想に関するワーキンググループ」(医療計画の見直し等に関する検討会の下部組織)が整理した「地域医療構想の進め方」を踏まえ、このような内容の通知を都道府県に宛てて発出する考えを示しました(関連記事はこちらこちら)。

 医療部会では、公立・公的病院の将来の役割などを調整会議で優先的に話し合う方向性に複数の委員が賛同した一方で、公立病院などの役割を見直すことが本当にできるか疑問視する声も上がっています。

1月24日に開催された、「第59回 社会保障審議会 医療部会」
1月24日に開催された、「第59回 社会保障審議会 医療部会」

公立・公的病院の役割、「他病院では担えないか」確認

厚労省は、「地域医療構想に関するワーキンググループ」が整理した「地域医療構想の進め方」の内容を通知にまとめて、都道府県に宛てて発出する方針だ
厚労省は、「地域医療構想に関するワーキンググループ」が整理した「地域医療構想の進め方」の内容を通知にまとめて、都道府県に宛てて発出する方針だ

 地域医療構想に関するワーキンググループが整理した「地域医療構想の進め方」についてはメディ・ウォッチでお伝えしています。おさらいすると、調整会議で次のような協議を行うよう求めています。

▼公立・公的病院の2025年時点の役割などについて、調整会議で今年度(2017年度)中に協議する
▼医療機能などを大きく変更する予定のある医療機関の役割についても、速やかに協議する
▼遅くとも来年度(2018年度)末までに、全医療機関の2025年時点の役割について協議する

 このうち、公立病院に関する協議では、公立病院が策定した「新公立病院改革プラン」(地域医療構想を踏まえた自院の役割などを明記)を基に、公立病院が2025年に、地域でどのような役割を担うべきかを話し合います。

 公立病院には「補助金などの財政補てん」や「税制上の優遇」がなされていることから、「民間医療機関では担えない分野」に重点的に取り組むことが求められます。そこで、例えば「近隣にある民間医療機関のA病院が救急医療に力を入れているが、公立B病院でも同様の役割を担うべきか」といった観点で検討し、「B病院ではA病院が対応できない患者をカバーする」のように公立病院の役割を見直す必要があります。

公立・公的病院の役割を協議するに当たっては、「補助金などの財政補てん」や「税制上の優遇」の状況も重視することが求められる
公立・公的病院の役割を協議するに当たっては、「補助金などの財政補てん」や「税制上の優遇」の状況も重視することが求められる

 一方、「公的医療機関等2025プラン」は、公立病院以外の公的医療機関(日本赤十字社、社会福祉法人恩賜財団済生会、厚生農業協同組合連合会などが開設する医療機関)や、地域医療支援病院などが策定することになっています。

 これら医療機関にも「税制上の優遇」などがなされていることから、「公的医療機関等2025プラン」に記載された「自院の今後の役割」が、ほかの医療機関で担えない内容か調整会議で確認し、「税制上の優遇」などに見合う役割にする必要があります。

公立病院などの方針に「おかしい」と言えるか疑問も

 今般の医療部会では、加納繁照委員(日本医療法人協会会長)が、「公立病院や公的医療機でなければ担えない分野に重点化すべきことが明記され、非常に良いことだ」と述べたほか、中川俊男委員(日本医師会副会長)も、「民間との役割分担を踏まえて公立病院などの役割を確認する良い仕組みになった」と述べ、公立病院などの役割をめぐる議論が、各地の調整会議で進むことへの期待を示しました。

 ただし加納委員は、「繰入金の規模が、公立病院の役割を見直す上での重要な資料となるが、調整会議に示していない都道府県もある。繰入金情報を出すようにお願いしたい」と要望。中川委員は、「新公立病院改革プラン」や「公的医療機関等2025プラン」が調整会議で議論されない懸念があると訴え、佐々木課長は「全国で議論が進むように、さまざまな形で取り組みたい」と応じました。

 また、相澤孝夫委員(日本病院会会長)は、自身が理事長を務める地域医療支援病院が策定した「公的医療機関等2025プラン」について調整会議で今月協議したところ、「プランに対して何の意見も出なかった」ことを紹介しています。その理由を相澤委員は、「病院が『こうしたい』と言えば他の病院は『おかしい』と言えないし、『頑張る』と言われれば『頑張って』と言わざるを得ない」ためと考察し、厚労省から調整会議で協議するよう求めるだけでは、公立・公的病院の役割を適切に見直すことが、実際にはできないのではないかと問題提起しています。公立・公的病院の役割見直し論議を実際に進めるために、どのような方策が有効なのかが、今後の重要な検討課題となりそうです。

将来の病床過剰状態を防ぐため、都道府県知事の権限強化へ

 今般の医療部会には、2025年時点の必要病床数を超える病床新設を「許可しない権限」を都道府県知事に付与する方針も佐々木地域医療計画課長から報告され、了承されています(関連記事はこちら)。

赤枠の部分の権限を都道府県知事に付与するため、厚労省が、医療法などの改正を目指す
赤枠の部分の権限を都道府県知事に付与するため、厚労省が、医療法などの改正を目指す

 現行制度では、地域における病床数上限となる「基準病床数」を、現在の病床数が上回る地域(病床過剰地域)で、増床や病院新設を認めない権限が、都道府県知事に付与されています。ただし、「基準病床数」が直近の人口をベースに計算されているために、人口が今後大きく減少すると見込まれる地域(東京都の「島しょ医療圏」など)では、「2025年時点で必要とされる病床数<現在の病床数<基準病床数」という状況になっています。そうした地域では、知事が病床新設を認めざるを得ず、2025年時点で「実際のベッド数が、必要病床数よりもかなり多い」(過剰)状態になってしまいかねません。

 そこで、厚労省は医療法などを改正し、「2025年時点の必要病床数<現在の病床数<基準病床数」となっている地域で、病院新設が実質的に認められなくなるように、都道府県知事の権限を強化する方針で、今年(2018年)の通常国会への法案提出を目指します(関連記事はこちら)。

准看護師試験、都道府県が外部機関に委託できる制度に

 今般の医療部会では、准看護師試験の事務(出願受付や、試験・合格発表の実施など)を、都道府県が外部の「指定試験機関」に委託することを認める方針が、厚労省医政局看護課の島田陽子課長から示され、了承されています。

都道府県に掛かる准看護師試験の事務負担を軽減するため、厚労省は、保助看法改正を目指す
都道府県に掛かる准看護師試験の事務負担を軽減するため、厚労省は、保助看法改正を目指す

 現行制度では、准看護師試験を他の都道府県と共同で行うことが可能で、昨年度(2016年度)は全国6グループに分かれて実施され、1万7841人が受験しています。しかし、共同で実施しても都道府県側の事務負担が大きいままという指摘があることから、厚労省は、2019年度の試験から、外部の「指定試験機関」への委託を認める考えで、今年(2018年)の通常国会への保助看法(保健師助産師看護師法)改正案の提出を目指します。日本医師会や病院団体は「准看護師の重要性」を以前より強調しており、この見直しで「都道府県の負担が減り、准看護師育成が継続される」ことを歓迎しているとみられます。

 

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