必要病床数を超える増床や新設を「認めない権限」を知事に付与―医療計画検討会(1)



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 医療法などを改正し、2025年時点の必要病床数を超える病床新設を「許可しない権限」を都道府県知事に付与する―。

 厚生労働省は1月22日に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」で、このような案を示し、了承を得ました。厚労省は、1月24日の社会保障審議会・医療部会に報告した上で、今年(2018年)の通常国会に提出する法案の準備を進めます。

1月22日に開催された、「第12回 医療計画の見直し等に関する検討会」
1月22日に開催された、「第12回 医療計画の見直し等に関する検討会」

必要病床数の実現に向けた課題を解消

 今年(2018年)4月から第7次医療計画がスタートし、そこでは事実上の地域における病床数上限となる「基準病床数」が記載されます。基準病床数は、「病床数の地域偏在」を是正し、我が国のどの地域でも良質な医療が受けられるようすることを主な目的として設定されます。例えば、A医療法人が病院の新設などを考えたとき、すでに地域の病床数が「基準病床数」を上回っていれば(病床過剰地域)、病床新設は実質的に認められません。これにより病床が過剰になることが防止されます。その場合、A医療法人は、病床が不足している地域(非過剰地域)に病院を新設する、といった手段をとることもでき、「病床数の地域偏在」が是正されると期待されるのです(関連記事はこちら)。

 また、基準病床数は、▽医療計画作成時点の人口や患者数をベースにする▽患者が要する医療の違い(急性期患者が多いか慢性期患者が多いかなど)は特段考慮しない―などという考え方に基づいて算定されます。

 一方、各都道府県が策定する地域医療構想では、2025年における▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期—の機能ごとに「病床の必要量」(必要病床数)を定めています。必要病床数は、「2025年に見込まれる医療需要(患者数)に見合った病床数」を地域ごとに推計するもので、計算に当たっては、▽2025年時点の推計人口や患者数をベースにする▽医療提供内容の変化も考慮する(例えば、慢性期患者の一定数は在宅医療などに移行する前提を置く)―ことなどとされています。

 地域医療構想は医療計画に包含されるので、第7次医療計画には「2023年度までの基準病床数」と、「2025年の必要病床数」とが記載されますが、両者は計算の基礎となる人口の時点(基準病床数は「直近」、必要病床数は「2025年」)などが異なるため、一致しません。

 例えば総人口や高齢者人口が今後大幅に増える都市部では、「基準病床数よりも必要病床数が多い」状況が生まれ、例えば東京都や大阪府の二次医療圏の多くでは「現在の病床数<基準病床数<必要病床数」という事態が生じます。これらの地域では、2025年に病床不足になることを防ぐために、病床を増やしていくことが必要となります。そこで、第7次医療計画の計画期間(2018-23年度)中、「高齢者人口が急速に増加する地域」などでは、基準病床数を毎年計算し直す(再計算により、ベースとなる人口が2025年時点に近づき、必要病床数との差も縮まる)ことなどが求められています(関連記事はこちら)。

 一方、人口が大きく減少していく地域(第6次医療計画段階では、東京都の「島しょ」など29医療圏)では、「必要病床数よりも基準病床数が多い」状況になりますが、このうち「必要病床数<現在の病床数<基準病床数」という地域では、「基準病床数までの範囲で病床を増やせる」ために、2025年時点で「実際のベッド数が、必要病床数よりもかなり多い」(過剰)状態になってしまいかねません。

 このため厚労省は昨年(2017年)6月に通知「地域医療構想を踏まえた病床の整備に当たり都道府県が留意すべき事項について」を発出し、「現在の病床数が必要病床数を上回る地域でも、安易に病床を新設すべきでない」旨を強調していますが、医療機関が病床新設を申請した場合には、現行制度上は都道府県知事が許可せざるを得ないのです。

厚労省の通知では、「現在の病床数が必要病床数を上回る地域でも、安易に病床を新設すべきでない」旨を強調している
厚労省の通知では、「現在の病床数が必要病床数を上回る地域でも、安易に病床を新設すべきでない」旨を強調している

 そこで、厚労省は医療法などを改正し、「必要病床数<現在の病床数<基準病床数」となっている地域で、公的医療機関等が増床や新設を申請した際に、「都道府県医療審議会の意見」を聴いたうえで申請を却下できる権限を、都道府県知事に与えてはどうかと提案したものです。

都道府県の権限。赤枠の部分を新設するため、厚労省は医療法などの改正を目指す
都道府県の権限。赤枠の部分を新設するため、厚労省は医療法などの改正を目指す

 さらに申請者が民間医療機関であっても、知事が申請中止などを促し、厚生労働大臣が保険医療機関として指定しないことによって「実質的に増床や新設を認めない」仕組みとなる見込みです。医療提供体制の整備について、都道府県知事の権限を大幅に強化する法改正と言えるでしょう。

 

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