2018年度予算案は前年度比0.3%増の97.7兆円に―厚労省分は1.4%増の31.1兆円



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 一般会計歳出として97兆7128億円(前年度当初予算と比べ2581億円・0.3%増)を計上する来年度(2018年度)政府予算案が12月22日に決まりました。このうち厚生労働省の予算案は、31兆1262億円(同4389億円・1.4%増)となっています。

社会保障関係費は4997億円増、薬価引き下げ等で「目安」を遵守

 政府全体の社会保障関係費は32兆9732億円で、一般会計歳出の3分の1に当たります。前年度当初予算と比べて4997億円・1.5%の増加となり、「社会保障関係費の伸びを5000億円程度に抑える」(2016-18年度の3か年で1兆5000億円の増加に抑えるため、単年度で5000億円増となる)という、政府の財政健全化に向けた目安が守られています。

一般会計歳出の3分の1を、社会保障関係費が占める
一般会計歳出の3分の1を、社会保障関係費が占める
 社会保障関係費の内訳は、「年金給付費」が11兆6853億円(社会保障関係費全体の35.4%)、「医療給付費」が11兆6079億円(同35.2%)、「生活扶助等社会福祉費」が4兆524億円(同12.3%)、「介護給付費」が3兆953億円(同9.4%)、「少子化対策費」が2兆1437億円(同6.5%)などで、前年度当初予算からの伸び率は、「介護給付費」の2.7%(823億円)や「年金給付費」の1.8%(2022億円)と比べて、「医療給付費」は0.9%(1068億円)と低い状況です。

 「医療給付費」の伸び率が低いのは、2018年度診療報酬改定で、薬価等の価格が大きく引き下げられるためです。改定率については、メディ・ウォッチでお伝えしたとおり、12月18日の加藤勝信厚生労働大臣と麻生太郎財務大臣の折衝を経て、▼本体プラス0.55%▼薬価マイナス1.65%▼材料価格マイナス0.09%―と決定しています(関連記事はこちら)。

 このうち、薬価の改定率を詳しく見ると、(1)市場実勢価格との乖離を埋めること等でマイナス1.29%(2)市場拡大再算定の通常分でマイナス0.05%、高額薬剤に対する特例再算定(いわゆる巨額再算定)でマイナス0.02%(3)【新薬創出・適応外薬解消等促進加算】見直しなどの「薬価制度の抜本改革」でマイナス0.29%―となります。改定率を国費に換算すると、(1)と(2)で計1456億円、(3)で310億円が圧縮されます。また、材料価格のマイナス改定で99億円を縮減しています。

2018年度診療報酬改定では、薬価・材料価格が大きく引き下げられる
2018年度診療報酬改定では、薬価・材料価格が大きく引き下げられる
 今年(2017年)8月時点の概算要求時点では、高齢化等によって社会保障関係費が6300億円程度伸びると想定されていました(関連記事はこちら)。上述の薬価・材料の価格引き下げで1800億円超を圧縮(その時点で、社会保障関係費の伸びを5000億円程度に抑える目安を達成)し、診療報酬のプラス0.55%改定(国費ベースで588億円増)などに財源を充てた形です。

 これらの改定率を踏まえて、来年度(2018年度)の医療費の国庫負担として、11兆4839億円(前年度当初予算比381億円・0.3%増)が計上されています。医療費の25%が国庫負担と仮定すると、「2018年度の医療費は46兆円程度になる」と政府が見込んでいることが伺えます。

地域医療介護総合確保基金の積み増し額アップ

 次に、2018年度厚労省予算案の主要事項を見ていきましょう。一般会計の予算額は31兆1262億円(前年度当初予算比4389億円・1.4%増)で、ほとんどを社会保障関係費の30兆7073億円(同4590億円・1.5%増)が占めます。

厚労省の2018年度予算案では、一般会計で前年度当初予算比1.4%増の31兆1262億円を計上している
厚労省の2018年度予算案では、一般会計で前年度当初予算比1.4%増の31兆1262億円を計上している
 安倍晋三内閣が、▼人づくり革命:人材育成などのための施策拡充▼生産性革命:企業などの生産性アップを目指す施策推進―に関する事業に予算を重点的に配分する方針を掲げていることを踏まえて、厚労省の予算案では、「働き方改革」や「質の高い効率的な保健・医療・介護の提供」に向けた事業に予算が計上されています。

 「働き方改革」の関連では、新規事業として、【医師不足地域における若手医師のキャリア形成支援】(7億5800万円)や【医療従事者の勤務環境の改善】(5800万円)の予算が計上されています。前者は、医師不足地域に派遣される若手医師に、休暇や自己研鑽の時間が十分与えられるように、「週4日勤務制」や「休日代替医師の派遣」「テレビ電話等を活用した診療支援」などをモデル的に実施するための経費を支援するもので、医師の地域偏在解消に向けた事業とも言えます。

 後者の【医療従事者の勤務環境の改善】では、病院実態調査を行い、その結果を「医療勤務環境改善支援センター」(医療従事者の勤務環境を改善させたい医療機関を支援するために、各都道府県が設置)による効率的・効果的な支援につなげます。

 一方、「質の高い効率的な保健・医療・介護の提供」に向けては、都道府県ごとの地域医療介護総合確保基金(医療分)への積み増し金額を、622億円(前年度当初予算比20億円増)に増額しています。基金は、(1)地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設・設備の整備(2)在宅医療の提供体制の整備(3)医師や看護師等の医療従事者の確保・養成―を対象に、費用助成を行うものですが、(2)の「在宅医療の提供体制の整備」のための積み増し額が、前年度当初予算と比べて20億円(地方が負担する分を含めた公費ベースでは30億円)増え、各地での在宅医療提供体制の整備が強く後押しされます。ちなみに、介護分の同基金への積み増し金額としては、前年度当初予算と同じ483億円(公費ベースで724億円)が計上されています。

 地域医療介護総合確保基金を積み増すための予算は、消費税率8%への引き上げによる増収の一部などを活用した、「社会保障の充実」のための財源1.87兆円の中から充てられます。

地域医療介護総合確保基金の積み増しなどには、消費税率8%への引き上げによる増収などが活用される
地域医療介護総合確保基金の積み増しなどには、消費税率8%への引き上げによる増収などが活用される
 このほか、医療・介護に関係する事項を見ると、次のような項目が計上されています。

▼データヘルス改革の推進のための予算を85億円(前年度当初予算は17億円)計上し、健康・医療・介護のビックデータを連結したプラットフォーム(保健医療データプラットフォーム)の構築に向けた、データ分析環境の整備等を行う(関連記事はこちら

▼最先端技術を活用したゲノム検査装置や、AI(人工知能)を活用した診断プログラムなどを適切・迅速に評価するために、4800万円を計上し、評価指標を作成するための体制や、承認審査の体制を整備する

▼「分娩取扱施設がない二次医療圏」などに新規開設する分娩取扱施設等に対して、施設・設備の整備費用や産科医師の派遣を受けるための費用を助成する必要があることなどから、小児・周産期医療体制の充実に向けた予算4.2億円を計上(前年度当初予算は2.6億円)する

▼患者からの相談に適切に対応できる医師らの養成など、国民が人生の最終段階を穏やかに過ごすことができる環境の整備を進めるために8300万円(同1億円)を計上する(関連記事はこちら

▼特定行為に係る看護師の研修制度の推進に4.1億円(同4.3億円)を計上し、指導者育成のための費用や、eラーニングの導入経費などを支援する(関連記事はこちら

▼薬剤耐性(AMR)対策を推進するために7.1億円(同6.1億円)を計上し、AMRに関する情報を医療専門職らにオンラインで提供したり、研修を行ったりする「臨床情報センター」の運営などに充てる

▼がん対策の予算358億円(同314億円)を計上し、今年(2017年)10月に策定された「第3期がん対策推進基本計画」に基づき、がんゲノム医療を牽引する高度な機能を有する「がんゲノム医療中核拠点病院」の整備(3.3億円)などに充てるほか、仕事と治療の両立支援のための研修を受けた相談支援員を専任配置する「がん相談支援センター」のモデル事業を実施(3100万円)する(関連記事はこちら

▼新たな難病の医療提供体制を推進するために予算5.5億円(前年度当初予算は1.9億円)を計上し、都道府県における医療機関の連携体制構築などを支援する(関連記事はこちら

▼200億円を計上して、介護保険の保険者(市町村など)を対象とする「保険者機能強化推進交付金」を創設し、高齢者の自立支援や重度化防止などに関する取り組みを推進する(関連記事はこちら

▼介護サービス事業所が、生産性向上や業務改善に組織的に取り組みやすくするためのガイドライン作成と普及啓発に、3.2億円を計上する

▼介護ロボットなどの開発・普及の加速化を図るための予算を3.7億円(前年度当初予算は3億円)計上する

▼「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)に基づく認知症施策の推進などに15億円(前年度当初予算は14億円)を計上し、認知症の早期診断などを行う「認知症疾患医療センター」の整備などを促進する

 

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