2018年度介護報酬改定、医療との連携や自立支援を柱とする審議報告を了承―介護給付費分科会 第156回



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 来年度(2018年度)の介護報酬改定に向けて審議を重ねてきた社会保障審議会・介護給付費分科会は12月13日、審議報告案をおおむね了承しました。例えば、▼居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)の医療機関との連携をさらに評価する▼施設系サービスでの「褥瘡発生予防のための管理」や「排泄に介護を要する利用者への支援」を新たに評価する―ことにより、「地域包括ケアシステムの推進」や「利用者の自立支援」を促す方向性が盛り込まれています。一方で、訪問看護や通所リハビリテーションの報酬を一部引き下げるとしています。

 審議報告には、来年度(2018年度)に加算新設などで評価を上げる項目や、逆に適正化する項目が明示されています。ただし、加算される単位数などは、改定率決定後、つまり年明けから議論されます。

12月13日に開催された、「第156回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
12月13日に開催された、「第156回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
 介護給付費分科会では、12月6日にも審議報告案について議論しており、そこから大きな見直しはありません(関連記事はこちら)。ポイントを絞って眺めていきましょう。

 まず、今回の改定は、次の4つの考え方に沿って行われます。

(1)地域包括ケアシステムの推進
(2)自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現
(3)多様な人材の確保と生産性の向上
(4)介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保

ケアマネ事業所に医療機関や老健との連携促す

 (1)では、適切な医療・介護サービスを切れ目なく提供できる体制の整備を促します。例えば、居宅介護支援では次のような評価が設けられます。

▼医療機関への情報提供(利用者の入院後7日以内)を促す【入院時情報連携加算】 について、より迅速な情報共有を目指し 、「入院後3日以内に情報提供」した場合を高く評価する。スピードを重視する観点から、情報の提供方法による評価の差(病院等を訪問して提供したら200単位、それ以外は100単位)はなくす 。また、情報提供時に活用できるフォーマット(様式例)を示し、医療機関側が知りたい情報を伝えやすくする

▼利用者の在宅復帰に当たり、病院や介護老人保健施設(老健)から情報を得ながらケアマネジメントを行う中で算定する【退院・退所加算】について、「医療機関や老健施設との連携回数に応じた単位数の差」を設け、積極的な連携を促す。さらに、利用者の情報収集を「医療機関や老健施設が開催したカンファレンスに参加」して行ったか、単に「医療機関等の職員と面談」して行ったかで単位数に差を設ける。具体的には前者を高く評価し、多職種間の顔の見える連携を促進する

▼ターミナル期にある悪性腫瘍の利用者に対するケアマネジメントなどの評価(【ターミナルケアマネジメント加算】、仮称)を新設し、▽利用者本人か家族から同意を得る▽医師らから助言を受ける▽通常よりも頻回に訪問し、利用者の状態変化や、サービス変更の必要性を把握する▽把握した情報を記録し、医師や居宅サービス事業者に提供する―ことを算定要件とする。併せて、そうした患者のケアマネジメント(プラン変更)のプロセスを簡素化することで、病状変化に対応したサービス提供を後押しする

末期の悪性腫瘍患者の状態変化に応じてサービスを変更できるよう、ケアマネジメントのプロセスも見直される
末期の悪性腫瘍患者の状態変化に応じてサービスを変更できるよう、ケアマネジメントのプロセスも見直される
▼上記【退院・退所加算】と【ターミナルケアマネジメント加算】の算定回数が一定以上の場合に、モデル的な事業所の評価である【特定事業所加算】の単位数を高くする(2019年度から施行)

介護医療院を新設、介護療養病床などからの早期転換を加算で後押し

 また、医療・介護の複合的ニーズに対応できる新たな施設サービスとして、介護医療院を設けます。その基本報酬は、現行の介護療養型医療施設(介護療養病床)の療養機能強化型並みの「I型」と、転換老健並みの「II型」に分けて設計し、それぞれ、医療処置の実施状況や重度者の受け入れ状況などに応じて単位数にメリハリを利かせます。

 基本報酬の水準を決めるに当たって、療養環境が介護療養病床より充実することも勘案します。例えば、療養室の1人当たり床面積の基準が「8.0平米以上」(介護療養病床は6.4平米以上)であることなどから、「I型」の基本報酬は介護療養病床よりも高く設定されると考えられます。

介護医療院の施設基準は、介護療養病床と比べると利用者1人当たりの床面積が広く、老健と比べると、医療のための構造設備が充実している。療養病床や転換老健が介護医療院に転換する際には、これらの基準が緩和される見通しだ
介護医療院の施設基準は、介護療養病床と比べると利用者1人当たりの床面積が広く、老健と比べると、医療のための構造設備が充実している。療養病床や転換老健が介護医療院に転換する際には、これらの基準が緩和される見通しだ
 ちなみに、療養室の床面積や廊下幅などの基準は、介護療養病床か医療療養病床から介護医療院に転換するケースでは緩和されます。また、介護療養病床・医療療養病床から転換した場合には、「最初に転換した時期」から1年間に限り算定可能な加算が設けられます。この加算は、介護医療院への早期転換を促すインセンティブであり、「2021年3月末まで」という期限が設けられます。転換支援策は、転換老健が介護医療院に転換する場合にも適用されます。

施設での褥瘡予防やADL改善目指す取り組みを評価

 (2)の「自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」に向けては、例えば、施設系サービスが取り組む「褥瘡の発生予防のための管理」や「排泄に介護を要する利用者への支援」が新たに評価されます。

 新たに評価される「褥瘡の発生予防のための管理」は、「褥瘡発生との関連が強い項目」の評価を定期的に行い、その結果に基づいた計画的な管理を行うことを指します。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)と、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、老健の3サービスが評価の対象です。

 一方、「排泄に介護を要する利用者への支援」への評価は、上記3サービスのほか介護療養病床と介護医療院も対象です。排泄に関するADL改善に向けた支援計画を、多職種が協働して作成し、その計画に基づいた支援を行うことが評価されます。

不適切な身体拘束の廃止に向けた減算を強化

 また、介護サービスの質を高くするといった観点から、老健などの【身体拘束廃止未実施減算】について、1日当たりの減算幅を「5単位」から「所定点数の一定割合」に厳しく見直します。

 現在は、身体拘束をやむを得ず実施した際に「入所者の心身の状況や態様、時間、理由を記録しなかった」場合に減算されますが、▼「身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会」を3か月ごと以上のペースで開催し、その結果を職員に伝える▼身体的拘束等の適正化のための指針を整備する▼身体的拘束等の適正化のための職員研修を定期的に実施する―のいずれかが欠けた場合にも減算するという具合に厳しくし、不適切な身体拘束を防ぐ体制整備を促します。

効率的なサービス提供目指し、介護ロボットやICTの活用を促進

 (3)の「多様な人材の確保と生産性の向上」に向けては、介護ロボットやICT(情報通信技術)の活用が促されます。まず介護ロボットの活用推進は、特別養護老人ホームの【夜勤職員配置加算】の要件を見直すものです。

 現在は「夜勤を行う介護職員または看護職員の数が最低基準を1以上上回っていること」が要件ですが、11月29日の介護給付費分科会で厚生労働省は、▼ベッド上の入所者の動向を検知できる介護ロボット(見守り機器)を、入所者数の15%以上に設置▼見守り機器の安全・有効な活用のための委員会を施設内に設置―を満たす施設に限り、「0.9人以上」上回る人員配置で【夜勤職員配置加算】を算定可能と緩和してはどうかと提案しています。

 地域密着型老人福祉施設入所者生活介護と短期入所生活介護の【夜勤職員配置加算】の要件も、特別養護老人ホームと同様に緩和します。

 また、ICT活用を促す観点から、訪問・通所リハビリテーションの質を管理する取り組みを評価する【リハビリテーションマネジメント加算(II)】の算定要件を見直し、「リハビリテーション会議」に、医師がテレビ電話などで参加することを認めます。

 これらの見直しの狙いは「サービス提供の効率化」にありますが、特に介護ロボットの活用には、「効率化の有効性を示すデータが十分に、限定的な導入にとどまった」との指摘があります。それを踏まえて「審議報告案」では、「介護ロボットの幅広い活用に向けた効果実証」などを、今後の課題として位置付けています 。

訪問看護や通所リハの報酬は一部「適正化」

 上記の見直しは、概ね「より良い介護サービスを推進するために、評価を高くする」ものですが、(4)の「介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保」に向けた見直しメニューでは、評価の引き下げが行われます。主には次のとおりです。

【訪問看護】
▼理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問看護について、「リハビリテーションを中心とした訪問に限り、看護職員の代わりに行うもの」という位置付けを踏まえて、評価を見直す

▼利用者が要支援者の場合、医療処置にかかる看護などの実施割合が低い傾向にあることから、要介護者への訪問との間で基本報酬に一定の差を設ける

▼【集合住宅減算】について、「事業所と同一敷地内か隣接敷地内の建物に利用者が住んでいる場合」や「同じ建物内に利用者が20人以上住んでいる場合」には、その建物が有料老人ホーム等以外の一般住宅であっても適用する。利用者の住居が、事業所と同一敷地内か隣接敷地内にあり、しかも50人以上の利用者が住んでいる場合には、通常(所定点数の10%)よりも厳しく減算する(訪問介護・夜間対応型訪問介護・訪問入浴介護・訪問リハビリテーションの【集合住宅減算】も同様に見直す)

集合住宅減算の対象となるケースが広がる。「10%を超える厳しい減算」(図表中の「○○%減算」)が、具体的にどう設定されるかが、年明け以降の介護給付費分科会での議論の焦点となる
集合住宅減算の対象となるケースが広がる。「10%を超える厳しい減算」(図表中の「○○%減算」)が、具体的にどう設定されるかが、年明け以降の介護給付費分科会での議論の焦点となる
【通所リハビリテーション】
▼3時間以上のサービス提供に係る基本報酬の区分を、「2時間ごと」から「1時間ごと」に見直す(通所介護の基本報酬も「1時間ごと」に改める)

【特別養護老人ホーム・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】
▼「小規模介護福祉施設」(定員30人)や「経過的地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」(定員26-29人、2005年度以前に開設)の基本報酬を、通常の特別養護老人ホーム等と合わせる。一定の経過期間を設けるが、来年度(2018年度)以降に新設される「小規模介護福祉施設」の基本報酬は、通常の特別養護老人ホームと同様にする

▼糖尿病食などの提供時に算定する【療養食加算】について、「1日単位」から「1食単位(1日3食まで)」の評価に改める(老健・介護療養病床・介護医療院・短期入所生活介護・短期入所療養介護も同様)

 これらのサービスの報酬は、来年度(2018年度)の介護報酬改定で引き下げられ、その分の財源を、上記(1)から(3)までの加算新設などに充てることになると考えられます。ただし、「加算を充実させるための財源が足りない」となれば、(4)以外の部分でも報酬が引き下げられる可能性があります。

 例えば、「ADL向上のための介助が中心の『身体介護中心型』訪問介護の基本報酬を、相対的に高くする」といった見直しメニューは、「審議報告案」では(2)の「自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」に向けた施策という位置付けです。しかし、「身体介護中心型」の報酬を引き上げるのか、主に日常生活の援助を行う「生活援助中心型」の報酬を引き下げるのかは、改定率も踏まえて年明けの介護給付費分科会で審議されます。

訪問介護の頻回利用の位置付けを変更、「質向上」に

 ところで、12月6日の「審議報告案」では、「訪問介護の利用回数が多いケアプランを市町村等で確認するルールの新設」が、(4)の「介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保」に位置付けられていました。

 このルールは、ケアプランに位置付けられた訪問介護(生活援助中心型)の回数が、平均的な利用回数とかけ離れている場合(例えば「全国平均利用回数+2SD」)に、ケアマネ事業所が市町村に届け出るものです。その後、地域ケア会議などが検証し、必要であればサービスの是正を促します。

 厚労省は、「他のサービスを使う方が利用者にとって良い場合があるかもしれない」ために検証を行うと説明しましたが、「自治体によっては利用回数が制限され、必要なサービスを受けられなくなるかもしれない」と慎重論を唱える委員もいました。

 こうした意見を踏まえて、12月13日に了承された案では、このルールが(2)の「自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」に資するものだという位置付けに変更され、「単純に訪問回数に規制をかけるものではなく、利用者の状態などに応じた適切なケアプラン作成を後押しすることが目的」であることを、明確に示しています。

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