2025年に向けた全病院の対応方針、2018年度末までに協議開始―地域医療構想ワーキング



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 地域の医療関係者や医療保険者らが集まって医療提供体制の再編について話し合う「地域医療構想調整会議」では、区域内にある入院医療機関すべての「2025年に向けた対応方針」の協議を、遅くとも来年度(2018年度)末までに始める。とりわけ公立病院や「公的医療機関等2025プラン」対象医療機関の対応方針の協議は、今年度(2017年度)末までに始める―。

 「地域医療構想に関するワーキンググループ」(医療計画の見直し等に関する検討会の下部組織、以下、ワーキング)は12月13日、こういった内容の取りまとめを行いました(関連記事はこちら)。「地域医療構想調整会議を進めるに当たり、都道府県がすべきこと」を整理するもので、年明けの親会議(医療計画の見直し等に関する検討会)に報告します。

 「2025年に向けた対応方針」は、例えば「2025年時点で、A病院が急性期機能の病床を200床程度持つこと」といったように定めます。都道府県は、地域医療構想調整会議で毎年度、どれだけの病院についてこの対応方針が定められたかを取りまとめます。この取りまとめが、地域医療介護総合確保基金への予算配分とリンクします。

12月13日に開催された、「第10回 地域医療構想に関するワーキンググループ」
12月13日に開催された、「第10回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

地域医療構想調整会議での「円滑な議論の進め方」を整理

 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上となり、回復期や慢性期の医療ニーズが飛躍的に高まります。このため、地域における入院医療提供体制の再編(機能分化・連携の強化)が必要となり、都道府県は、「2025年における高度急性期、急性期、回復期、慢性期の機能別の必要病床数」などをまとめた地域医療構想を策定しています。いわば「2025年における入院医療提供体制像」に当たります。

 一般病床数や療養病床数の総量が「二次医療圏」単位で規制され、一定程度の医療が「二次医療圏で完結する」ように入院医療提供体制が構築されてきていることも踏まえ、入院医療提供体制の再編は「地域医療構想区域」(おおむね二次医療圏)単位で行われます。

地域医療構想の実現に向けたプロセスでは、地域医療構想調整会議での協議がカギを握る
地域医療構想の実現に向けたプロセスでは、地域医療構想調整会議での協議がカギを握る
 再編は、各医療機関が自院の役割を再考して改める「自主的な取り組み」や、「地域の医療機関同士の協議」によって進めることが原則で、地域医療構想の実現につながる機能転換を行う場合には、都道府県に設置された「地域医療介護総合確保基金」から、病棟改修などの費用が補助されます。

 「地域の医療機関同士の協議」は、基本的に地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で行います(非公式の下部組織などを活用することももちろん可能)。12月13日のワーキングでは、調整会議での協議が円滑に進むように、「個別の医療機関に関する協議の方法」や「都道府県が提供すべき情報」を整理し、取りまとめました。

公立病院などの役割は、「民間ではできないか」厳しくチェック

 「個別の医療機関に関する協議の方法」については、(1)2025年に向けた対応方針の決定に向けた対応(2)非稼動病棟を有する医療機関への対応(3)医療機関の新設や増床の許可申請への対応―を示しました。1つずつ見ていきましょう。

 (1)の2025年に向けた対応方針の決定に向けては、まず公立病院や公的医療機関等2025プランの策定対象となっている公的医療機関などの協議を、今年度(2017年度)中に開始し、具体的な対応方針を速やかに決定します。

 公立病院の対応方針をめぐる協議では、「2025年時点で担う役割が、本当に公立病院でないと担えないか(民間医療機関でもよいのではないか)」を厳しくチェックすることが必要とされました。一般的に、公立病院には「山間へき地・離島など、民間医療機関の立地が困難な過疎地等における一般医療の提供」や「救急・小児・周産期・災害・精神など、不採算・特殊部門に関わる医療の提供」などの役割が期待されています。

 しかし、例えば、「うちの構想区域の救急患者には、民間医療機関のB病院とC病院で対応できており、しかも2025年には救急患者が減る」といったデータ(診療実績や将来の医療需要など)がある場合、「公立病院のD病院が、無理に救急医療の体制を整備する必要はない。むしろ、B病院などから転院患者を受け入れて在宅復帰させる回復期機能を担うべき」といった結論を出すこともあり得ます。

 公的医療機関などの将来の役割を決めるに当たっても、「その病院でしか担えない役割かどうか」を、診療実績や構想区域の医療ニーズ、病床稼働率などのデータを基に確認していくことが求められます。

 一方、「公立病院・公的医療機関など以外の民間医療機関」の対応方針に関する協議は基本的に、来年度(2018年度)末までに開始すればよいとされています。ただし、事業計画を大幅に変更するような事情がある(例えば、開設者が変わる)民間医療機関については「速やか」に協議することが求められます。

 都道府県は、こうした調整会議での協議の進捗状況を毎年度取りまとめる必要があります。来年度(2018年度)以降、都道府県ごとの地域医療介護総合確保基金への予算配分は、この取りまとめの状況を考慮して行われます。

病棟稼働しない理由や増床の理由もチェックし、必要なら知事が権限行使

 (2)の「非稼動病棟」は、「過去1年間に入院患者を一度も収容しなかった病床のみの病棟」を指します。「病床機能報告」(職員数や手術件数、医療機能の現状・予定などの情報を、病棟単位で、医療機関が都道府県に報告する制度)で、こうした医療機関を都道府県が把握した場合、「病棟が稼動しない理由」や「病棟を今後どうするつもりか」を、調整会議で説明するよう求めます。

 もし、「病棟建て替えによる一時的な休棟」などであれば非稼働の正当な理由があると考えられます。しかし、理由が「本当は稼動して急性期機能を担いたいが、看護職員を確保できていない」といった内容で、かつ地域においては「2025年時点で、急性期機能の病床数が過剰になると予想される」ような場合には、都道府県知事の権限を使い、医療審議会の意見を聴きながら、病床数の削減を命令(公立病院など)・要請(民間医療機関)していくことになります。

 また、(3)の「医療機関の新設や増床の許可申請」があった場合、その医療機関の関係者も交えて調整会議で協議し、「新設や増床が、地域医療構想の方向性と反しないか」(例えば、構想区域で将来過剰になると予想される急性期機能の病床を増やすことにならないか)をチェックします。都道府県知事の権限には「開設許可にあたって不足する医療機能に係る医療を提供する旨の条件を付与する」もあるため、協議の結果によって行使します。

都道府県が提供すべき診療実績データを医療機能ごとに例示

 12月13日のワーキングでは、調整会議での協議が円滑に進むように、「都道府県が調整会議に対して提供すべき情報」が、(1)個別の医療機関ごとの医療機能や診療実績(2)個別の医療機関ごとの地域医療介護総合確保基金等の活用状況(3)公立病院などの役割の協議に必要な情報―の大きく3項目に整理されました。

 このうち(1)の診療実績などについては、「高度急性期・急性期機能」「回復期機能」「慢性期機能」の3つに分けて、次のとおり具体例を示しています。例えば、「高度急性期を担う」予定のある病院の診療実績を見て、「手術症例数が、同じく高度急性期予定の他病院に比べて著しく少ない」ことが分かった場合には、調整会議で、その病院が「高度急性期」を担うべきか否かを議論する必要があるでしょう。診療実績などのデータは、このように活用されることが期待されます。

▼高度急性期・急性期機能:幅広い手術の実施状況、がん・脳卒中・心筋梗塞等への治療状況、重症患者への対応状況、救急医療の実施状況、全身管理の状況など

▼回復期機能:急性期後の支援・在宅復帰への支援の状況、全身管理の状況、疾患に応じたリハビリテーション・早期からのリハビリテーションの実施状況、入院患者の居住する市町村との連携状況、ケアマネジャーとの連携状況など

▼慢性期機能:長期療養患者の受け入れ状況、重度の障害児等の受け入れ状況、全身管理の状況、疾患に応じたリハビリテーション・早期からのリハビリテーションの実施状況、入院患者の状況、入院患者の退院先など

 また、(3)の公立病院などの役割の協議に必要な情報は、「病床稼働率」や「紹介・逆紹介率」「救急対応状況」「医師数」「経営に関する情報」―などで、都道府県が医療機関ごとに整理し、調整会議で示すべきだとしています。こうした情報に基づいて、例えば、公立X病院が「救急対応」を十分にしておらず、民間病院が救急搬送患者の受け入れの大部分を担っているような場合には、「X病院は救急機能、つまり急性期機能を担うべきなのか」さらに「そもそも公立病院を設置する必要があるのか」などの議論を行っていくことになるでしょう。

 

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