訪問看護ステーション、さらなる機能強化に向けた報酬見直しを—中医協総会(2)



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 訪問看護ステーションのさらなる機能強化を進めるため、【24時間連絡体制加算】を廃止して、【24時間対応体制加算】に一本化してはどうか。また患者の複数の主治医がおり、それぞれが訪問看護指示書を出しているような場合に、全体像を把握できる仕組みを設けてはどうか。さらに医療的ケア児への訪問看護がより充実するような見直しを、2018年度の次期診療報酬改定で行ってはどうか―。

 11月15日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、「訪問看護」をテーマとしたこういった議論も行われました。

11月15日に開催された、「第370回 中央社会保険医療協議会 総会」
11月15日に開催された、「第370回 中央社会保険医療協議会 総会」

機能強化推進のため、24時間の『対応』体制のみを加算で評価

 訪問看護の多くは、訪問看護ステーションから提供されていることをお伝えしました。しかし、まだ小規模(従業者数5人未満)のステーションも半数近くあり、この場合、例えば「24時間対応」といった患者ニーズに十分対応できません。

訪問看護ステーションは徐々に大規模化が進んでいるが、いまだ半数近くは「5人以下」の小規模事業所であり、24時間対応などが十分に行えていない
訪問看護ステーションは徐々に大規模化が進んでいるが、いまだ半数近くは「5人以下」の小規模事業所であり、24時間対応などが十分に行えていない
 
 そこで厚生労働省は、「24時間対応やターミナルケアなどを積極的に行う」機能強化型訪問看護ステーションを2014年度の診療報酬改定で創設。また、これに先立つ2008年度改定では、訪問看護療養費(医療保険)に【24時間連絡体制加算】と【24時間対応体制加算】を設けています。前者の【24時間連絡体制加算】は患者などからの電話相談などに常時対応できる体制を整えた訪問看護ステーションを評価する(2500円)もので、後者の【24時間対応体制加算】は、この体制に加え、「必要に応じて緊急時訪問看護を行う体制」を敷いている訪問看護ステーションを評価する(5400円)ものです。
24時間の「連絡」体制を評価する加算と、24時間の「対応」を評価する加算とある
24時間の「連絡」体制を評価する加算と、24時間の「対応」を評価する加算とある
 
 厚労省の調査によれば、2016年度時点で、前者の連絡体制加算を届け出ているステーションは1割に満たず(8.3%)、大多数(91.7%)は後者の、より体制を強化した対応体制加算を届け出ていることが分かりました。厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、こうした状況を踏まえ、さらなる機能強化を推進するために、前者の【24時間連絡体制加算】を廃止し、後者の【24時間対応体制加算】に一本化してはどうかと提案。委員の多くは、この提案に賛同しています。
24時間「連絡」体制を評価する加算を届け出る訪問看護ステーションは1割未満で、ほとんどは24時間「対応」体制を敷いている
24時間「連絡」体制を評価する加算を届け出る訪問看護ステーションは1割未満で、ほとんどは24時間「対応」体制を敷いている

看護補助者と同行する訪問看護、一定の回数制限を導入

2010年度改定では、複数人で訪問看護する場合の加算【複数名訪問看護加算】が創設されました。▼保健師やリハビリ専門職などが同行する場合(4300円、専門知識・技術の伝授を期待)▼准看護師が同行する場合(3800円)▼看護補助者が同行する場合(3000円)―に大別されます。

このうち看護補助者の同行については、▼末期がん患者など(いわゆる別表第7)▼人工呼吸器装着患者など(いわゆる別表第8)▼特別訪問看護指示書による患者—に訪問する場合には回数制限がありませんが、それ以外(例えば暴力行為などが認められる)の患者には「週に1回まで」という算定制限があります。

複数名訪問看護加算の概要、看護補助者とともに、医療ニーズの高い患者へ訪問する場合には、算定回数の制限が設けられていない
複数名訪問看護加算の概要、看護補助者とともに、医療ニーズの高い患者へ訪問する場合には、算定回数の制限が設けられていない
 
末期がん患者などでは、頻回な複数名での訪問が必要になると考えられたためです。しかし、厚労省の調査では、「1か月に400回を超える複数名訪問看護加算が算定されている」事例が一部にあることが分かりました。単純計算で1日に13回以上、看護補助者を伴って訪問していることになり、多くの委員から「考えにくい算定回数である」との意見が出されています(不適切訪問の可能性もある)。
複数名訪問看護加算の多く(8割弱)は1か月に10回以内の算定だが、ごく一部、1か月に400回超算定している事例がある
複数名訪問看護加算の多く(8割弱)は1か月に10回以内の算定だが、ごく一部、1か月に400回超算定している事例がある
 
このため迫井医療課長は「算定回数の設定(制限)を行う」考えを示しています。現在の算定状況をみると、1か月に「10回以下」が77.5%(2017年度)となっており、このあたりが一つの目安となるかもしれません。

なお、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「医師による訪問看護指示書に、訪問頻度などを規定してはどうか」と提案しましたが、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)らは「訪問看護ステーション側の人員体制なども考慮する必要があり、厳密な訪問頻度指定などは実現できない可能性がある。ほとんどの医師は適正に指示しており、現状の包括的指示のままでよい」旨の見解を示しています。

 
一方、末期がんや人工呼吸器装着などには該当しないものの、「大柄で看護師1人での移乗や体位変換が困難」な患者について、【複数名訪問看護加算】を算定できるような見直しも検討されます。

ストーマ造設患者への専門知識・技術持つ看護師の対応を評価してはどうか

 同行訪問に関連して、現在、末期がん患者に対し▼緩和ケア▼化学療法中のケア▼褥瘡ケアの専門研修を受けた看護師が同行訪問した場合、【訪問看護基本療養費(I)のハ】(悪性腫瘍の利用者に対する緩和ケア・褥瘡ケアに係る専門の研修を受けた看護師による場合、1日につき1万2850円)などの高い報酬を算定できます。▼利用者により質の高いケアを提供できる▼専門研修を受けた看護師の知識・技術が、他の看護師に伝授されることが期待できる—点などを考慮したものと言えます。

迫井医療課長は、「人工肛門・人工膀胱(ストーマ)造設患者では皮膚トラブルや排泄物の漏れなどで困っている。こうした患者への訪問看護に、『皮膚・排泄ケア認定看護師などの専門研修を受けた看護師』が同行することで、より質の高いケアが提供でき、専門技術の伝授が期待できる」旨を紹介し、2018年度改定での見直しを提案しています。例えば、上記の【訪問看護基本療養費(I)のハ】で対象患者・看護師を拡大することなどが考えられます。

この点、松本純一委員は「当然の看護業務であり、診療報酬での評価拡大は筋が違うのではないか」と難色を示しました。しかし、菊池令子専門委員(日本看護協会副会長)は、「ストーマ造設患者が増え、皮膚トラブルも増加している。専門知識・技術を持った看護師による適切な装具・洗浄剤使用で解決可能である」「摂食嚥下障害の患者も、同様に拡大対象に加えてほしい」「訪問回数が限られた中で、専門知識・技術を持った看護師の同行によって、他の看護師への伝授が強く期待できる」ことを訴え、評価への理解を求めています。

一部で「リハ専門職のみの訪問看護」が横行、看護職の関与を必須に

 ところで、訪問看護は、看護師のみが実施するのではなく、訪問看護ステーションのリハビリ専門職(PT、OTなど)による訪問看護も行われています。

しかし、厚労省の調査によれば、▼訪問看護でリハビリを利用する患者の23.5%が「主たる訪問者がリハビリ専門職であり、看護師が訪問を行うことがない」▼同じく訪問管理のリハビリ利用患者の19.6%で「リハビリ計画書が作成されていない、あるいはリハビリ計画書に看護職が関与していない」―ことが分かりました(リハビリ計画書作成は義務付けられていない)。

訪問看護のリハリビを受ける利用者の2割強では、主にリハビリ専門職が訪問を行い、看護職が訪問することがないという
訪問看護のリハリビを受ける利用者の2割強では、主にリハビリ専門職が訪問を行い、看護職が訪問することがないという
訪問看護のリハビリを利用する患者のうち2割弱では、リハビリ計画書がない、あるいは、あっても計画作成に看護職が関与していない
訪問看護のリハビリを利用する患者のうち2割弱では、リハビリ計画書がない、あるいは、あっても計画作成に看護職が関与していない
 
こうした問題は介護報酬でも生じており、迫井医療課長は「看護職員の参画を必須条件とする」ような見直しを行うことを提案しています。例えば「1か月に一定以上、看護職が訪問を行う」(松本純一委員提案)ことや、「リハビリを含めた訪問看護計画に必ず看護職が関与することを求める」(迫井医療課長提案)などが考えられます。ちなみに介護報酬改定を議論する社会保障審議会・介護給付費分科会でも、同様の見直し案が示されています。

複数の主治医が訪問看護を指示する場合、全体像を把握できるような仕組みを

前述のように、訪問看護は医師の指示(訪問看護指示書)のもとに実施されます。多くの場合、指示を出す医師は1人と考えられますが、複数疾病を係る高齢者が増加していることや、医師の専門分化などを背景に、複数の主治医が訪問看護を指示することが考えられます。

迫井医療課長は、この「複数主治医の指示」について「医師間、訪問看護ステーション間で、互いに『複数の訪問看護が提供されている』ことを把握できる体制になっていない」点を問題視。何らかの形で全体像(ある患者について、どの医師が訪問看護を指示し、どの訪問看護ステーションから訪問が行われているか、など)を把握できる仕組みを構築する考えを示しました。

今村聡委員(日本医師会副会長)から「主治医間で連携するのが基本で、互いに把握できないのは稀なケースではないか」との指摘がありましたが、この提案に明確な反対意見は出ていません。どのように仕組みになるのか、今後の議論に注目が集まります。

医療的ケア児への十分な訪問看護、過疎地での訪問看護などの確保を目指す

 このほか、迫井医療課長は次のような提案も行っています。

▼1人の患者に複数の訪問看護ステーションが訪問する場合の「相互連携の具体例」(例えば訪問看護計画書の共有など)を示す

▼複数の訪問看護ステーションから訪問看護を提供する場合には【在宅患者連携指導加算】などが一方しか算定できないが、訪問看護ステーションと医療機関とが訪問看護を提供する場合には双方で算定できることとなっており、適正化を行う(一方のみの算定とする)

複数の実施主体(医療機関、訪問看護ステーション)から訪問看護を行う場合、訪問看護ステーション同士では一方しか算定できない加算があるが(表の×印)、医療機関との組み合わせでは双方算定が可能となっており(表の○印)、厚労省は「×印」に規定を揃えたい考えのようだ
複数の実施主体(医療機関、訪問看護ステーション)から訪問看護を行う場合、訪問看護ステーション同士では一方しか算定できない加算があるが(表の×印)、医療機関との組み合わせでは双方算定が可能となっており(表の○印)、厚労省は「×印」に規定を揃えたい考えのようだ
 
▼「歩行が可能な医療的ケア児」でも、(準)超重症児と同様な【長時間訪問看護加算】の算定を可能とする(週1回から週3回へ算定を拡大する)
(準)超重症児者では、長時間(90分超)の手厚い訪問看護を1週間に3回以上提供可能だが、医療的ケア児でも、歩行可能な場合などには週1回しか提供できず、より手厚い訪問看護を求める声が高まっている
(準)超重症児者では、長時間(90分超)の手厚い訪問看護を1週間に3回以上提供可能だが、医療的ケア児でも、歩行可能な場合などには週1回しか提供できず、より手厚い訪問看護を求める声が高まっている
 
▼過疎地域において【24時間対応体制加算】の基準を緩和し、過疎地以外の訪問看護ステーションが過疎地に居住する患者へ訪問看護を提供した場合にも【特別地域訪問看護加算】の算定を可能とする
訪問看護ステーションが過疎地にあれば【特別地域訪問看護加算】が算定できる(図、向かって左)が、過疎地以外のステーションから、過疎地の患者に訪問を行っても、この加算は算定できない(図、向かって右)
訪問看護ステーションが過疎地にあれば【特別地域訪問看護加算】が算定できる(図、向かって左)が、過疎地以外のステーションから、過疎地の患者に訪問を行っても、この加算は算定できない(図、向かって右)
 
▼特定相談支援事業所や療養通所介護を併設する訪問看護ステーションについて、機能強化型訪問看護ステーションとなる道を広げる(現在、「ターミナルケア20件以上」または「ターミナルケア15件以上、かつ超重症児などの利用者数4件以上」などなっている機能化型の選択要件について、例えば「ターミナルケア●件以上、かつ療養通所介護事業所の併設」などの選択肢も追加・拡大する)
機能強化型訪問看護ステーションでは、「ターミナルケア」または「重症児の受け入れ」という選択要件があるが、厚労省はここに「介護保険制度の療養通所介護」併設などの選択肢も加えたいと考えているようだ
機能強化型訪問看護ステーションでは、「ターミナルケア」または「重症児の受け入れ」という選択要件があるが、厚労省はここに「介護保険制度の療養通所介護」併設などの選択肢も加えたいと考えているようだ
 
▼自治体への情報提供を評価する【訪問看護情報提供療養費】について、算定する利用者の要件を設ける(現在は利用者要件がないが、例えば、末期がんや難病、精神科訪問看護基本療養費算定患者などに限定する)

▼訪問看護を行う看護師と、学校の看護職員や教職員との連携強化に向けた医療保険での対応・工夫を検討する

▼喀痰吸引などの特定行為を実施する介護職員との連携を評価する(介護保険では、この連携を【看護・介護職員連携強化加算】として評価している)

 
 このうち「自治体への情報提供」や「学校職員との連携」などについて診療側の松本純一委員や今村委員から「診療報酬で評価すべきだろうか」との慎重意見も出ており、今後、調整が進められます。

 

 

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