16年度追加の看護必要度C項目など、妥当だが一部見直しの可能性も―入院医療分科会(2)



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 「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)の一般病棟用の評価票に2016年度診療報酬改定で追加した項目は、患者の状態を適切に反映する観点から見て妥当なものだっただろうか―。

 診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)が11月2日に開いた会合で、厚生労働省はこのような論点を挙げました。追加項目とは、A項目の「救急搬送後の入院」などとB項目の「危険行動」「診療・療養上の指示が通じる」、C項目全般です。

 会合で同省は、16年度改定後の実態をDPCデータなどで分析した結果を示しましたが、これらの項目の早期の見直しを強く求める委員はおらず、いずれも、おおむね妥当なものだったと言えそうです。ただ、同省の分析結果からは一定の課題も見受けられ、中央社会保険医療協議会(中医協)での18年度改定に向けた話し合いで今後、取り上げられる可能性もあります。

 ちなみに看護必要度をめぐっては、DPCデータに含まれる「診療報酬請求区分」の情報を活用することで、看護職員らが毎日測定する項目を減らし、負担軽減を図る案も浮上しています(関連記事はこちら)。個別の項目の定義やルールの見直しを中医協で検討するとしても、DPCデータを活用する案とセットで、医療現場に及ぼす影響が大きくなり過ぎないように配慮する必要があると言えます。

11月2日に開催された、「平成29年度 第11回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」
11月2日に開催された、「平成29年度 第11回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

A項目1点でも認知症患者には手厚い対応が必要

 看護必要度は、入院患者の重症さを数値化するものです。一般病棟で用いる評価票でチェックする項目は、▼どんな処置やモニタリングを必要とするか(A項目)▼どんなケアが必要な状態か(B項目)▼どんな手術・内科的治療を受けたか(C項目)―の3つに分類されます。

看護必要度の評価票(一般病棟用)の現行の項目
看護必要度の評価票(一般病棟用)の現行の項目
 看護職員らが毎日測定していて、「A項目で2点以上かつB項目で3点以上」「A項目で3点以上」「C項目で1点以上」のいずれかに当てはまる「重症患者」が、入院患者の25%以上を占めることが、7対1入院基本料の施設基準となっています。その満たしやすさを左右することから、診療報酬改定での評価票の見直しは、多くの急性期病院の関心事だと言えます。

 16年度改定ではB項目の評価票に、「危険行動」(あれば2点)と「診療・療養上の指示が通じる」(通じなければ1点)が加えられました。この見直しの目的は、認知症やせん妄症状を有する急性期患者に対応することが、現場の負担を増やしているといった医療現場の実態に配慮することでした。

 こうした見直しの影響を検証する必要があることから、2日の会合で厚労省は、どちらかの項目に該当した患者について、医師の診察頻度などが16年度改定後どんな状況なのか分析した結果を示しました。

 この分析は、どちらかの項目に該当した患者について、A項目が調査対象の7日間、▼継続して「なし」▼ある日とない日が混在▼継続して「あり」―の3区分にどう分けられるかを見たものです。3つの群を比べると、A項目に該当する割合が高いほど、医師が診察(処置や判断を含む)を行うペースや、指示の見直しの頻度、看護師が観察・管理を行う頻度が高い傾向が見られました。

全評価日でA項目に該当する患者は、診察などの頻度が高いことが分かる
全評価日でA項目に該当する患者は、診察などの頻度が高いことが分かる
 現行ルールでは、危険行動があってB項目に該当する患者でも、A項目が2点以上でなければ重症患者と見なされません。今回の分析結果は、危険行動などのある患者が、A項目1点であっても、医師や看護師の手厚い対応が必要なことを示唆していると言えます。

 このデータを見た武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会本部相澤東病院看護部長)は、「(危険行動がある患者らを)A項目との組み合わせで評価してもいい」と提案。ほかの委員からも、認知症を持つ患者に対応する病棟を、今よりも高く評価すべきだという意見が相次ぎました。

 入院医療分科会は月内にも、これまでの話し合いの結果を取りまとめます。それを踏まえて中医協で、危険行動があってA項目が1点の患者らを、「重症患者」だと見なすべきかが話し合われるかもしれません。

 2日の会合で厚労省は、危険行動がある患者らへの身体抑制に着目したデータも示しています。具体的には、身体抑制がある患者に限ると、A項目の加点が「継続してあり」が過半数を占めたというものです。

身体抑制がある患者の過半数は、全評価日でA項目に該当していた
身体抑制がある患者の過半数は、全評価日でA項目に該当していた
 このデータからは、「身体抑制がある場合にはB項目に該当する」という別の見直しが行われる可能性を想起させます。仮にそうなると、危険行動があって身体抑制を受けている患者はB項目が3点以上になり、「A項目で2点以上かつB項目で3点以上」という「重症患者」の基準を満たしやすくなります。

 しかし、筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)や池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長)は会合で、安易な身体抑制を促すべきではないとけん制しました。武井委員も、身体抑制しないケアの方が看護職員の負担が大きいケースがあることを強調しています。

2日間で退院するケースが多い「救急搬送後の入院」

 厚労省は2日の会合で、A項目の「救急搬送後の入院」に該当する患者の在院日数を調べた結果も示しました。「2日」や「3日」の患者が多かったと指摘しています。

在院日数が「2日」や「3日」の患者が多い
在院日数が「2日」や「3日」の患者が多い
 現行ルールでは、救急搬送で7対1病棟などに直接入院した患者には2日間、2点を獲得できます。この患者では、ほかにA項目で1点(心電図モニターの管理など)獲得するか、B項目3点を獲得できれば「重症患者」と見なされます。

 会合で厚労省は、救急搬送された入院患者の受け入れが「救急医療管理加算」でも評価されていると指摘しています。在院日数が2日のケースが多いとすれば、▼入院日だけA項目2点とする▼2日目は1点とする―といったルールに見直したとしても、救急搬送後の入院患者の受け入れを十分に評価できる、という考えが同省側にあるのかもしれません。

開腹手術などでの加点期間を短くする可能性も

 さらに厚労省は、C項目に該当する患者の退院日の状況を分析し、2日の会合で結果を示しています。

 C項目に該当する期間は、手術などの種類別に設定されています(例えば開頭手術なら7日間)。その妥当性を調べるために同省が行った分析は、C項目に該当する患者の何パーセントが、この期間中に退院したか調べるものです。

 それによると、「全身麻酔・脊椎麻酔の手術(2日間)」は0.3%、「救命等に係る内科的治療(2日間)」は0.4%などで、ほとんどがC項目に該当しなくなっても退院できずにいました。

C項目に該当する期間中に退院する割合にはばらつきが見られた
C項目に該当する期間中に退院する割合にはばらつきが見られた
 これに対し、「開胸手術(7日間)」では約1割(10.4%)、「開腹手術(5日間)」では2割近く(17.0%)が、C項目に該当する期間中にそれぞれ退院していました。この期間中の退院率のばらつきが大きいことに合理的な理由がなければ、開腹手術などは、C項目に該当する期間が18年度改定で短く見直されるかもしれません。

 

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