生活習慣病管理料、エビデンスに基づく診療支援の促進を目指した見直し―中医協総会(2)



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 高血圧症や糖尿病といった生活習慣病の重症化を予防するために、B001-3【生活習慣病管理料】について、▼療養計画書に血圧の目標設定や特定健診などの受診勧奨情報などを記載する欄を設ける▼ガイドラインやデータに基づく診療支援を促す―といった見直しを行ってはどうか―。

11月1日に開催された中央社会保険医療協議会の総会では、こういった方向が了承されています。

11月1日に開催された、「第367回 中央社会保険医療協議会 総会」
11月1日に開催された、「第367回 中央社会保険医療協議会 総会」

生活習慣病管理料の療養計画書にも、特定健診受診勧奨などの記載欄設ける

入院医療費の37%(およそ5兆7000億円)、入院外医療費の32%(およそ4兆5000億円)が生活習慣病(ただし、大腸・肺以外のがん患者も含む)で占められており、(1)生活習慣病のそもそもの予防(生活習慣の改善)(2)重症化予防(3)治療—の総合的な推進が重要テーマの1つとなっています。

このうち(2)の重症化予防については、糖尿病腎症から腎不全、透析という経過を防止するために、昨年(2016年)4月に日本医師会・日本糖尿病対策推進会議・厚労省が協働して「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定したほか、市町村と地域医師会とが連携した重症化予防への取り組みが重要との報告書がまとめられています。

 また診療報酬上は、(3)の治療と併せて、▼B001-3【生活習慣病管理料】(治療計画を策定し、それに基づく総合的な治療管理を評価)▼B001の20【糖尿病合併症管理料】(糖尿病足病変ハイリスク要因を有する患者に対する、看護師による総合的な管理指導を評価)▼B001の27【糖尿病透析予防指導管理料】(透析に向かいつつある糖尿病患者に対する、チームでの指導管理を評価)―などが準備されています。

しかし、現在の重症化予防への取り組みには、例えば次のような課題もあると指摘されています(関連記事はこちら)。

▼生活習慣病対策では「医療機関・行政・保険者の連携」が極めて重要だが、糖尿病透析予防指導管理料などの算定患者について、保険者から医療機関に情報提供の協力を求めるケースは極めて少なく、医療機関から保険者へ情報提供が行われたケースも少ない

糖尿病透析要望指導管理料などを算定する患者について、医療機関から保険者への情報提供は極めて低調である(保険者からの情報提供の依頼自体も少ない)
糖尿病透析要望指導管理料などを算定する患者について、医療機関から保険者への情報提供は極めて低調である(保険者からの情報提供の依頼自体も少ない)
 
▼糖尿病透析予防指導管理料などの算定患者について、医療機関が「当該患者が特定健診・特定保健指導を受けたかどうか」を把握しているケースは1割程度にとどまっている
糖尿病透析要望指導管理料などを算定する患者が、特定健診・特定保健指導を受けているかどうかの把握状況は低調である
糖尿病透析要望指導管理料などを算定する患者が、特定健診・特定保健指導を受けているかどうかの把握状況は低調である
 
厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長は、この遠因として「生活習慣病管理料の算定要件である療養計画書の書式に、▽血圧の目標▽特定健診・特定保健指導の受診勧奨―などに関する記載欄がない」ことがあるのではないかと指摘しています。

また、迫井医療課長は、▽高血圧治療では降圧剤を用いるが、薬価が比較的高く設定されているARBの使用割合が比較的高い▽標準的な薬剤選択方針に基づく医薬品リスト(フォーミュラリー)を定めている病院は7.5%にとどまり、大規模病院に偏っている▽医薬品の適正使用に当たっては、正確な情報が製薬メーカーなどから提供される必要がある▽糖尿病治療に関しては、日本医師会や日本糖尿病学会などが構築しているデータベース「J-DREAMS」をもとに、クリニックに向けて情報提供が提供されている(日本医師会の「かかりつけ医糖尿病データベース研究事業:J-DOME」)―といった点にも言及。エビデンスに基づく、適切な治療・重症化予防の重要性を強調しました。

日本医師会のJ-DOME(かかりつけ医糖尿病データベース研究事業)の概要、診療現場のデータを集積し、そこから的確な情報(エビデンス)が提供され、質の高い糖尿病治療を目指す
日本医師会のJ-DOME(かかりつけ医糖尿病データベース研究事業)の概要、診療現場のデータを集積し、そこから的確な情報(エビデンス)が提供され、質の高い糖尿病治療を目指す
 
これらを総合して迫井医療課長は、2018年度の次期診療報酬改定に向けて、B001-3【生活習慣病管理料】について▼療養計画書に血圧の目標設定や特定健診などの受診勧奨情報などを記載する欄を設ける▼ガイドラインやデータに基づく診療支援を促す―といった見直しを行ってはどうかと提案しています。具体的な要件見直しなどは今後の議論を待たなければいけませんが、診療側・支払側とも「保険者と医療機関の連携が重要」など積極的な支持を表明しており、見直し方針は了承されたと言えるでしょう。

高血圧治療薬の選択にあたり「費用対効果の視点」を持たせたガイドラインを

 なお、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、高血圧症治療の薬剤で高額なARBが多く使用されている(健保連の分析では、金額ベースで1分類処方では6割、2分類処方では9割がARB)点に着目し、「高血圧治療薬の選択において、費用対効果も踏まえた優先順位を付けるよう、厚労省から関係学会に指導してほしい」との要望を行いました。ARBを安価なCa拮抗薬に置き換えた場合、医療費が830億円縮減できる、との推計結果も幸野委員は紹介しています。

健保連が高血圧治療薬の使用状況を調べたところ、もっとも多いのはCa拮抗薬であるが、ARBも使用割合も相当高く、金額ベースでは1分類処方全体の6割超を占めている
健保連が高血圧治療薬の使用状況を調べたところ、もっとも多いのはCa拮抗薬であるが、ARBも使用割合も相当高く、金額ベースでは1分類処方全体の6割超を占めている
高血圧治療薬の中でも、ARBはCa拮抗薬やACE阻害薬に比べて薬価が高額に設定されている
高血圧治療薬の中でも、ARBはCa拮抗薬やACE阻害薬に比べて薬価が高額に設定されている
 
診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)や今村聡委員(日本医師会副会長)は、「費用対効果の視点も重要」と幸野委員の要望に一定の理解を示しましたが、治療薬選択では医学的な判断が最重視されるべき旨の見解を述べています。

腎不全期に至る前の患者でも、運動指導による腎機能の維持・改善効果あり

 迫井医療課長は、糖尿病腎症の重症化予防について「B001の27【糖尿病透析予防指導管理料】における【腎不全期患者指導加算】の対象患者拡大」も提案しました。

 この加算は、eGFRという腎機能を示す指標の値が「30未満」(小さいほど腎機能が低下している)の腎不全期患者に対して、専任の医師が腎機能維持の観点で必要と考える運動指導を行うことを評価するものです。

腎不全期患者指導加算の概要
腎不全期患者指導加算の概要
 
もっとも長浜赤十字病院(滋賀県長浜市)の研究によれば、加算の対象とならない患者(eGFRの値が30-44)であっても運動療法によって腎機能を維持・改善する効果があることが分かり、迫井医療課長は「加算対象患者の拡大」を検討してはどうかと提案しているのです。
比較的eGFR値が高く、腎不全患者指導加算の対象にならない人でも、運動指導によって腎機能維持・改善の効果が見られる
比較的eGFR値が高く、腎不全患者指導加算の対象にならない人でも、運動指導によって腎機能維持・改善の効果が見られる
 
 この点、診療側の松本純一委員・今村委員は「末期の腎不全になる、もっと前から介入して重症化を予防することは重要」と迫井医療課長提案に理解を示しましたが、「1病院において、わずか247名を対象にした研究では、十分なエビデンスとは言えないのではないか」と態度を保留しています。保険給付対象とすれば算定患者も増え、その効果を検証することが「エビデンス構築」につながるとも考えられ、積極的な検討に期待が集まります。

 

 

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