「入院からの経過日数」を病棟機能判断の際の目安にできないか―地域医療構想ワーキング(1)



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 病床機能報告制度の下で、各病院が病棟機能報告を行うに当たっての「目安」を探る議論が、地域医療構想に関するワーキンググループ(医療計画等の見直しに関する検討会の下部組織以下、ワーキング)で始まりました。

10月26日に開催されたワーキングでは、「入院からの経過日数」に着目した指標が一例として考えられるのではないかと厚生労働省から提案されましたが、中川俊男構成員(日本医師会副会長)が猛反発。厚労省はさらなる検討を進めます。

10月26日に開催された、「第8回 地域医療構想に関するワーキンググループ」
10月26日に開催された、「第8回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

明らかに異なる機能を報告した理由を調査、報告項目の改善にもつなげる

2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となるため、これから医療・介護ニーズが急速に高まり、現在の医療提供体制ではこれらに的確に対応できないと指摘されています。そこで医療機能の分化・連携の強化が重視され、その一環として2014年度から病床機能報告制度がスタートしました。一般病床・療養病床をもつすべての医療機関が、自院の病棟がそれぞれどのような機能を持つのか(あわせて将来、どのような機能を持たせると想定しているのか)、各病棟の人員配置や診療実績などを都道府県に年1回報告するものです。

病棟の機能については、▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期—の4つが設定されていますが、例えば高度急性期では「急性期の患者に、状態の早期安定化に向けて、診療密度が特に高い医療を提供する機能」といった具合に、曖昧な、定性的な基準しか設けられていません。

厚労省は、より明確な基準を示す必要があると考え、「特定入院料と病棟機能の紐づけ」(2016年度報告から)、「一般病棟入院基本料と病棟機能の紐づけ」(2017年度報告から)を行っています。

病床機能報告の4機能と、診療報酬上の特定入院料の紐づけ
病床機能報告の4機能と、診療報酬上の特定入院料の紐づけ
▼7対1は高度急性期または急性期▼10対1は急性期または回復期▼13対1・15対1は回復期または慢性期、一部は急性期—といった基本的な紐づけが行われた。もちろん異なる報告をすることも可能である
▼7対1は高度急性期または急性期▼10対1は急性期または回復期▼13対1・15対1は回復期または慢性期、一部は急性期—といった基本的な紐づけが行われた。もちろん異なる報告をすることも可能である
 
このように病棟の機能はかなり明確になってきていますが、例えば「循環器内科などを標榜し、かつ高度急性期と報告しているにも関わらず、1か月に一度もPCIを実施していない病院がある」ことや、「外科を標榜し、急性期と報告しているにも関わらず、1か月に一度も手術を実施していない病院がある」こと、「急性期と報告しながら、幅広い手術への実施やがん・脳卒中・心筋梗塞などの治療、救急医療の実施、全身管理などをまったく実施していない病院がある」ことなども分かっています。病床機能報告は、病院が自主的に機能を選択することが基本ですが、こうした報告がどうして発生するのか明確にする必要があると厚労省は考え、「2017年度報告結果を分析する際に、高度急性期・急性期と報告した病棟のうち、『急性期医療をまったく提供していない』などの明らかに疑義が生じた病棟には、報告の理由を調査する」考えを明らかにしました。
循環器内科で、高度急性期機能と報告している病院の中には、1か月に1度もPTCAを実施していないところもあることなどが分かった
循環器内科で、高度急性期機能と報告している病院の中には、1か月に1度もPTCAを実施していないところもあることなどが分かった
(高度)急性期の外科病棟であるにもかかわらず、手術を1か月に1件も実施していない病棟がある
(高度)急性期の外科病棟であるにもかかわらず、手術を1か月に1件も実施していない病棟がある
急性期病棟として報告している病棟の中には、全身管理を全く行っていないところなどもみられる
急性期病棟として報告している病棟の中には、全身管理を全く行っていないところなどもみられる
 
具体的な調査手法は明らかにされていませんが、例えば、上記の「1か月に1件もPCIを実施していないにも関わらず高度急性期を報告した」病院を対象に、▼単なる間違いなのか▼高度急性期の定義などへの誤解があるのか▼報告すべき診療実績などの項目に不足があるのか―などをヒアリングしていくことになると考えられます。調査の結果、「この病院では、内科を中心に●●や■■といった高度な医療を提供している。しかし現在の報告項目は外科系に偏っている」といった事態が分かれば、「内科の高度急性期機能を適切に評価するために、診療報酬の●●点数や、■■医療行為の実施状況なども報告対象に含める」といった見直しに結びつく可能性もあります。

さらに厚労省は、「現在の報告項目では、回復期や慢性期に関する項目が不足している」とも考えており、今後の報告項目に「在宅復帰に向けた医療」などに関連する項目(▼市町村との連携▼ケアマネとの連携▼療養環境―など)の追加を検討するほか、「明らかに回復期機能・慢性期機能を果たしていると思われるのに、別の機能で報告している」病院を対象に、その理由(ミスか、誤解か、報告すべき診療実績項目の不足か、など)を調査する考えも明らかにしました。

これらを順次実施することで、各機能の評価に当たって重要な項目(診療報酬や実施医療内容など)がより明確になってくると期待されます。

在院日数を指標とすれば、「診療報酬算定が制限される」との誤解生じるとの指摘

さらに厚労省は、2018年度以降の報告に向けて「各機能に関するより明確な基準・指標」を模索しており、10月26日のワーキングでは「入院からの経過日数」(在院日数)に着目できるのではないか、との提案も行いました。

DPCデータから、救命救急入院料やICU、一般病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリ病棟などを届け出ている病棟の入院患者について「入院からの経過日数」別の構成割合を見ると、例えば次のような特徴があることが石川ベンジャミン光一参考人(国立がん研究センター社会と健康研究センター臨床経済研究室長)から報告されました。

▼救命救急入院料:1-7日の患者が8割程度

▼ICUなど:1-7日の患者が6割程度、8-14日の患者が2割程度

▼一般病棟(7対1・10対1):1-7日の患者が4割弱、8-14日の患者が2割強

▼地域包括ケア病棟:5週間以上の患者の6割程度

▼回復期リハビリ病棟:5週間以上の患者が8割程度

病棟の機能によって、入院患者の「入院からの経過日数」の構成割合に特徴がある
病棟の機能によって、入院患者の「入院からの経過日数」の構成割合に特徴がある
 
 この「入院からの経過日数」は平均在院日数とは異なり、調査対象期間の各日に在棟している患者が「病院に入院してから何日経過したか」を調べたものです。厚労省は、これを一つの目安として病棟の機能を判断し(例えば自院のA病棟には、●日程度の患者が最も多く入棟している。したがって■機能を選択することが好ましいのではないか、などと判断)、報告することも考えられるのではないかと提案しています。

 各病棟には、さまざまな状態の患者が入棟しています。例えば急性期であっても、相当重篤な高度急性期患者や、急性期治療を終えて在宅復帰を目指す回復期患者などがおり、厚労省は「もっとも多くの割合の患者」に該当する機能を報告してほしいと求めており、中川委員もこの考えに賛同しています。患者の状態を明確に規定する基準・目安はありません(地域医療構想の策定においては医療資源投入量に着目)が、「入院からの経過日数」がその目安となり、病棟機能を判断する際の有効な拠り所の1つとなりそうです。

各病棟にはさまざまな状態の患者がおり、厚労省は「最も多い患者の状態像」から報告することを基本としている
各病棟にはさまざまな状態の患者がおり、厚労省は「最も多い患者の状態像」から報告することを基本としている
 
 しかし中川構成員は「病床機能報告が診療報酬にもたれかかっている。病棟機能が算定できる診療報酬を制限するものではない、との認識がまた崩れてしまう」と述べ、「厚労省案に明確に反対する」と強い口調で述べました。入院からの経過日数が「平均在院日数」と読み替えられ、「施設基準で定められた平均在院日数」を基に病棟機能の基準が診療報酬で定められてしまうのではないか、といった点を懸念した発言と推察されます。例えば、「●●機能の平均在院日数が21日程度」などのデータが出る→「平均在院日数21日は、一般病棟10対1の施設基準要件の1つである」→「●●機能として報告した場合には、10対1の届け出は可能であるが、7対1の届け出はできない」といった実しやかな噂・情報が流布してしまうケースを恐れていると言えそうです。

厚労省医政局地域医療計画課の佐々木健課長は、この指摘を踏まえ「病床機能報告の際に、各病院がより判断しやすい基準を探している。さらなる検討を進める」と返答しています。

 

 

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