医学生が指導医の下で行える医行為、医学の進歩など踏まえて2017年度に再整理―医師養成と地域医療検討会



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 医師免許取得後の初期臨床研修において、十分に診療行為を行えるよう、医学生の臨床実習を強化する必要がある。そのため、医学生の臨床実習で実施可能な医行為を整理しなおすとともに、臨床実習に入る前の共用試験(CBT)の位置づけを明確にしてはどうか―。

 10月20日に開催された「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(以下、検討会)では、こういった方針が固まりました。

10月20日に開催された、「第5回 今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」
10月20日に開催された、「第5回 今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」

初期臨床研修医が十分に医療提供を行えるよう、医学部教育を充実

 検討会では、これまで「新専門医制度の全面スタートによって、地域医療への弊害が生じない」ような方策を議論してきました。そこでは、「都道府県の協議会で、専門医の養成プログラムに問題がないか(これまでに研修施設となっていた医療機関が漏れていないか、など)確認する」「実際の募集定員などをみて医師偏在が助長されていないかを確認し、問題があれば是正に乗り出す」といった方向が確認され、現在、各領域で専攻医(専門医を目指す医師)の募集が始まっています(関連記事はこちらこちら)。

 このように専門医制度の問題解消について一段落がついたことを受け、10月20日には、検討会設置の主目的である「卒前・卒後の一貫した医師養成の在り方」に議題が移っています。もちろん、今後「専攻医募集状況の確認」なども検討会で行われていきます。

 医師養成の流れを見てみると、▼6年間の学部教育▼医師免許取得(医師国家試験への合格)▼初期臨床研修▼専門医研修―に整理することができます。

医師養成の大きな流れ
医師養成の大きな流れ
 
 このうち初期臨床研修では、医師免許取得後の研修であり、医療現場において実際に臨床に携わることが期待されていますが、「十分な臨床が行えていないのではないか」といった指摘があります。臨床研修で実質的に「初めて」臨床に携わることとなり、指導医が一から臨床の指導を行うため、十分な「戦力」になっていないという指摘です。この点、医師不足に悩む立谷秀清構成員(相馬市長、全国市長会副会長)は「初期臨床研修であっても、自身の責任で医療提供を行えるよう、医学部教育を充実する必要がある」と強く訴えています。

臨床研修で実質的に「初めて」臨床に携わることになる背景には、「医学部生が、まだ医師ではない」という点が大きいようです。現在、共用試験(医学医療に関する知識の修状況を審査するCBT:Computer Based Testing、技術や態度などを確認するOSCE:Objective Structured Clinical Examination)を経て、4年生以降には診療参加型の臨床実習が行われていますが、医学部によるバラつきが大きいと指摘されます。また、医師免許を取得していない医学生であっても、指導医の下で一定の基礎的医療行為を行うことは違法ではない(刑法第35条の正当行為「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」に該当する)と解されていますが、医療現場からは「法的な担保が十分ではないのではないか」といった指摘もあります。

そこで厚生労働省と文部科学省は、こうした課題を整理し、大きく次の3つの改善を行ってはどうかと提案しています。検討会では異論・反論は出ておらず、今後、両省で具体的な改善策を練っていくことになります。

(1)共用試験(CBT)の位置づけを明確にする
(2)医学生が指導医の下で行える医行為を再整理する
(3)モデル・コア・カリキュラムや初期臨床研修到達目標などの見直し時期を整理する

 まず(1)では、現在、第三者機関である「公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構」が自主的に実施(全医学部が参加)している共用試験のうち、客観性の担保されているCBTについて、何らかの「公的な位置づけ」ができないかを検討するものです。なおOSCEについては、さらなる客観性の担保が必要とされ、今般の検討対象には含まれてない見込みです。

医学部4年生からの臨床実習に入る前に、共用試験(CBT、OSCE)を受け、知識や技術、医師となるにあたっての態度に問題はないかなどが審査される
医学部4年生からの臨床実習に入る前に、共用試験(CBT、OSCE)を受け、知識や技術、医師となるにあたっての態度に問題はないかなどが審査される
 
 
 また(2)の「医学生が指導医の下で行える医行為」は、1991年に作成されたいわゆる前川レポート(臨床実習検討委員会最終報告)をもとに整理されていますが、30年近く経っており、医学・医療の進歩などを踏まえた再整理を行うことになります。厚労省医政局医事課の担当者は「本年度(2017年度)内に一定の整理を行いたい」とコメントしています。
現在、指導医の下で医学生が実施できる医行為などが整理されている(いわゆる前川レポート)(その1)
現在、指導医の下で医学生が実施できる医行為などが整理されている(いわゆる前川レポート)(その1)
現在、指導医の下で医学生が実施できる医行為などが整理されている(いわゆる前川レポート)(その2)
現在、指導医の下で医学生が実施できる医行為などが整理されている(いわゆる前川レポート)(その2)
現在、指導医の下で医学生が実施できる医行為などが整理されている(いわゆる前川レポート)(その3)
現在、指導医の下で医学生が実施できる医行為などが整理されている(いわゆる前川レポート)(その3)
 

この点に関連して検討会では、「student doctor資格を法律上、正面から位置付けて一定の医行為実施を可能にすべきではないか」といった意見も出ていますが、「医療を受ける患者・国民」がどう受け止めるのか、などといった点も踏まえた本格的な議論が必要であり、「中長期的な課題」という位置づけになるでしょう。

なお、「現在、医学部ではどのような医行為が行われているのか」といった実態調査についても今後、前向きに検討していく予定です。

 
さらに(3)は、現在、バラバラに行われている「モデル・コア・カリキュラム」(医学部教育の3分の2程度を占める、必ず学ばなければいけない事項)の改訂(2016年度に改訂、18年度から実施)、「初期臨床研修の到達目標」の見直し(2020年度に実施予定)、「医師国家試験の出題内容」見直し(直近では2017年に見直し)などを整理していってはどうかというテーマです。卒前・卒後の一貫した医師養成を進める上では、これらをセットで考得ていく必要があり、さらなる厚労省(医師国家試験、初期臨床研修などを所管)と文科省(医学部教育を所管)との連携が期待されます。

モデル・コア・カリキュラムや臨床研修医の到達目標などは、バラバラに見直されているのが実態である
モデル・コア・カリキュラムや臨床研修医の到達目標などは、バラバラに見直されているのが実態である

 
こうした見直しによって、医学生時代に十分な臨床実習が可能となれば、初期臨床研修医が「医療現場の戦力」となり、医療水準の向上はもちろん、「偏在の解消」にも一定の役割を果たすことにつながります。

 

 

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