医療費増抑制のために患者負担増やフリーアクセス制限を受け止める人は少数—健保連



Pocket

 国民の4分の3が「医療費負担が高い」と感じており、医療費増を抑えるために「ジェネリック医薬品の普及」や「残薬の解消」「病気予防」などを進めるべきと考えている人が多い。また「軽症時の自己負担増」や「フリーアクセスの制限」が必要との声もあるが、小さいものにとどまっている。またいわゆるゲートキーパー制に対しては、およそ7割の人が不安を覚えている—。

 健康保険組合連合会が9月25日に公表した「医療・医療保険制度に関する国民意識調査」から、こういった状況が浮かび上がってきました(健保連のサイトはこちら(要旨)こちら(概要版))。

増加する医療費、患者負担増や公費増で賄うべきとの意見が多い

 今般の調査は、全国の2000人を対象にインターネットを用いて今年(2017年)6月に実施されました。男女比はほぼ半々で、年齢構成をみると、▼20代:13.6%▼30代:16.1%▼40代:20.0%▼50代:16.4%▼60代:19.3%▼70代:14.7%—となっています。

 まず我が国の医療費水準に関する認識を見ると、「非常に高い」が32.3%(6年前の2011年調査時点に比べて8.7ポイント増)、「やや高い」が36.1%(同5.5ポイント減)で、7割弱の人が「高い」と感じていることが分かりました。年齢階級別に見ると、高齢者で「高い」と感じる人が多く、65歳未満では「高い」と感じる人が64.9%なのに対し、65歳以上では79.7%の人が「高い」と感じています。

 また1人当たりの医療費負担については、37.8%(同10.6ポイント増)が「非常に高い」、36.7%(同10.2ポイント減)が「やや高い」と感じており、74.5%の人が「高い」と感じています。年齢階級別に見ると、やはり高齢者で「高い」と感じる人が多く、65歳未満で「高い」と感じる人は72.4%ですが、65歳以上で「高い」と感じる人は80.7%に達します。いずれも「非常に高い」と感じる人の割合が増加しています。

1人当たり医療費の負担感について、65歳未満では7割弱が「高い」と感じているのに対し、65歳以上では8割強が「高い」と感じている
1人当たり医療費の負担感について、65歳未満では7割弱が「高い」と感じているのに対し、65歳以上では8割強が「高い」と感じている
 
 どの点で医療費負担が重いと感じるかを見ると、「保険料」の高さを感じる人が最も多く60.1%(同6.4ポイント増)、次いで「医療費そのもの」53.6%(同1.2ポイント増)、「自己負担」43.4%(同5.9ポイント増)と続きます(いずれも複数回答)。

 では、医療費の増加を抑えるためにどのような方法が適切と考えているかというと、▼ジェネリック医薬品の普及46.6%▼残薬(飲み残し)の解消34.5%▼特定健診・保健指導などによる病気予防29.1%▼在宅医療の充実26.0%▼ITによる効率化25.5%▼介護サービスの充実23.1%—などが目立ちます。このほか、▼軽症時の自己負担増17.4%▼入院期間の短縮14.2%▼OTC類似医薬品の保険給付からの除外7.6%▼フリーアクセスの制限7.5%▼病床数削減6.3%—といった意見もありますが、その声は小さいものにとどまっています。

増加する医療費を抑えるために、「ジェネリック医薬品の使用促進」「残薬解消」などをすべきとの声が多い
増加する医療費を抑えるために、「ジェネリック医薬品の使用促進」「残薬解消」などをすべきとの声が多い
 
 また、増加する医療費をどのように賄うべきかについては、▼患者負担増27.0%▼公費負担増(税金の引き上げは甘受する)25.0%—が多く、「保険料引き上げ」を求める声は8.5%にとどまっています。
増加する医療費増を賄う方策として、公費負担増や患者負担増などが考えられるが、若年層と高齢者層では考え方が若干異なる
増加する医療費増を賄う方策として、公費負担増や患者負担増などが考えられるが、若年層と高齢者層では考え方が若干異なる
 
 年齢階級別に見ると、「患者負担増」を求める声は若干ながら若年層に多く(20代では30.9%、30代では29.8%だが、60代・70代では25%強)、「公費負担増」を求める声は明らかに高齢者層で多くなっています(20代・30代では20%未満だが、60代では31.4%、70代では33.0%にのぼる)。なお、公費負担増を求める人の4割強は、「消費税で賄うべき」と考えていますが、その割合は2011年調査時点に比べて大幅に減少しており、消費税率の段階的引き上げが影響していると考えられます。

 
 ところで医療費増の大きな要因は、(1)医療技術の進歩(画期的な抗がん剤の開発など)(2)高齢者増—と考えられますが、(2)の高齢者増に伴う医療費をどのように負担していくべきかについては、▼患者負担増28.4%▼公費負担増23.8%▼高齢者自身の保険料増21.1%—が多く(年齢による大きな差はない)、「若人からの支援金増」で賄うべきとの声は7.2%にとどまっています。

ゲートキーパー制には7割弱の人が「不安」を覚える

次に「医療機関へのかかり方」をどのように考えているのか見てみると、次のような状況が浮かび上がってきました。

▼かかりつけ医(日頃から決まって診察を受ける医師・医療機関)がいる人の割合は高齢になるほど高い

かかりつけ医の有無について、65歳未満と65歳以上では、大きな差がある
かかりつけ医の有無について、65歳未満と65歳以上では、大きな差がある
 
▼「症状の程度に関わりなく、自分の選んだ医療機関を受診する」と考えている人は23.4%、「最初に決まった医師を受診し、必要に応じて専門医療機関を受診する」と考えている人は55.1%

▼「病期に応じて、急性期や回復期などに機能特化した医療機関に入院する」べきと考える人が44.7%、「病期にかかわらず1つの医療機関に継続入院する」べきとの考える人は30.4%

▼「事前に診療所の医師を選んで登録し、最初にその医師を必ず受診する。救急以外は病院を自由に受診できない」という仕組み(いわゆるゲートキーパー制)が仮に導入されたとして、28.1%の人は不安を感じないが、67.2%の人は不安を感じる

いわゆるゲートキーパー制について、7割程度の人は「不安」を感じている
いわゆるゲートキーパー制について、7割程度の人は「不安」を感じている

終末期医療を受ける場所、自分は自宅を希望するが、家族となると・・・

 また「終末期医療」に対する希望を見てみると、自分自身や家族が「痛みが伴い、治る見込みがなく死期が迫っている」場合に、治療目的の検査・手術・延命処置をしてほしいと考える人は1割程度にとどまり、疼痛緩和中心の症状コントロール、精神的援助などをしてほしいと考える人が6割弱となっています。

終末期医療について、自身が受ける場合でも家族が受ける場合でも、6割弱は「疼痛ケア中心」を希望している
終末期医療について、自身が受ける場合でも家族が受ける場合でも、6割弱は「疼痛ケア中心」を希望している
 
 さらに終末期医療を受ける場所については、自分自身については▼自宅29.2%▼病院14.9%▼緩和ケア施設(ホスピスなど)27.8%▼介護施設3.2%—などですが、家族については▼自宅25.0%▼病院17.5%▼緩和ケア施設(ホスピスなど)30.4%▼介護施設0.3%—などとなっており、家族の自宅での看取りには若干の躊躇が伺えます。
終末期医療を受けたい、受けてほしい場所について、自分自身と家族とで若干異なっている
終末期医療を受けたい、受けてほしい場所について、自分自身と家族とで若干異なっている

 
 このほか、▼かかりつけ薬剤師・薬局のいる人は13.4%にとどまる▼かかりつけ薬剤師の仕組みを知らない人が62.3%にのぼる▼特定健診・保健指導を詳しく知っている人は25.8%(2011年調査に比べ4.8ポイント増)、名前だけ知っている人は44.0%(同11.6ポイント増)、知らない人は30.2%(同16.5ポイント減)▼医療保険者からのサービスに満足している人は41.1%、不満な人は22.7%▼医療保険者に充実してほしいサービスとしては「がん検診・人間ドックなどの費用補助」23.0%、「医療費自己負担補助」(付加給付)21.7%などが目立つが、半数は特にない—といった状況も明らかになりました。

かかりつけ薬剤師・薬局は、一般国民にはまだまだ浸透していない
かかりつけ薬剤師・薬局は、一般国民にはまだまだ浸透していない
 

 

【関連記事】

2017年、健保組合全体で後発品割合は70%を概ねクリア—健保連
2016年度、1か月当たりの医療費最高額は1億694万円―健保連
2016年度の健保組合決算は黒字だが、2025年に向けて医療保険改革が必要不可欠―健保連
健保組合の2017年度予算、全体で7割が赤字予算、赤字総額は3060億円に膨張―健保連
健保組合の16年度予算、全体で1384億円の赤字、平均保険料率も9%超―健保連推計
大企業の従業員が加入する健保組合、平均保険料率が初めて9%超える―15年度健保組合予算早期集計結果
かかりつけ医以外の外来受診、新たな定額負担の是非について年内に結論を出す―社保審・医療保険部会
高齢者のフレイル(虚弱)対策に向け、管理栄養士や看護師など専門職による相談・訪問指導を実施―医療保険部会
大病院受診、紹介状なしの定額負担など16年度から-医療保険部会で改革案まとまる

Pocket