がんの5年生存率、全体で65.2%、乳がんで92.7%、肺がんで39.1%―国がん



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 2008年にがんと診断された患者の5年生存率(がん以外の死亡原因を除去)は、全体では65.2%となり、5大がんについて見ると、▼胃がん:70.4%▼大腸がん:72.6%▼乳がん:92.7%▼肝臓がん:38.5%▼肺がん:39.1%—となった―。

国立がん研究センター(国がん)が9日に公表した「がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2015年全国集計、2008年5年生存率集計公表」から、このような状況が明らかになりました(国がんのサイトはこちら)。部位別に大きなバラつきがあることが改めて確認できます。

5年生存率、前立腺がんは97.7%、膵臓がんは9.9%

 今般の集計は、全国のがん診療連携拠点病院(2015年4月末で425施設)のうち、患者の生存状況把握割合が90%以上などの209施設を対象に、2008年にがんと診断された患者28万3012症例を対象に行われました。

生存率には、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた「実測生存率」と、がん以外の死亡原因を除去して計算した「相対生存率」があります。前者の実測生存率では、平均的な患者について疾患の経過を一定程度見通すことができ、後者の相対生存率では、がん対策の効果などを把握することができます。

まず、がん全体の5年生存率を見ると、相対生存率65.2%、実測生存率58.0%となりました。全国推計である「地域がん登録におけるがん全体の5年相対生存率62.1%」(2006-2008年)よりやや高く、がん専門施設の集計である「全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)の相対生存率69.4%」(同)よりもやや低くなりました。国がんでは「施設により対象患者の背景が異なることに影響している」とコメントしています(関連記事はこちら)。

2008年にがんと診断された患者における、5年生存率の概況
2008年にがんと診断された患者における、5年生存率の概況
 
 部位別(全臨床病期)に見てみると、5大がんでは、▼胃がん:70.4%(相対)、61.2%(実測)▼大腸がん:72.6%(相対)、63.6%(実測)▼乳がん:92.7%(相対)、88.8%(実測)▼肝臓がん:38.5%(相対)、33.9%(実測)▼肺がん:39.1%(相対)、34.5%(実測)―となり、バラつきがあることが改めて確認できます。

 その他の部位では、▼食道がん:43.4%(相対)、38.5%(実測)▼膵臓がん:9.9%(相対)、8.8%(実測)▼子宮頸部がん:75.6%(相対)、72.7%(実測)▼子宮体部がん:82.8%(相対)、79.8%(実測)▼前立腺がん:97.7%(相対)、81.7%(実測)▼膀胱がん:71.2%(相対)、58.8%(実測)―という状況です。

 また病期別に見ると、ステージが上がるにつれて5年生存率は大きく低下することも改めて明確にされています。早期診断に基づく、適切な治療の重要性を再確認できます。

病気別の5年生存率を見ると、ステージが上がるほど、生存率は低くなる(その1)
病気別の5年生存率を見ると、ステージが上がるほど、生存率は低くなる(その1)
病気別の5年生存率を見ると、ステージが上がるほど、生存率は低くなる(その2)
病気別の5年生存率を見ると、ステージが上がるほど、生存率は低くなる(その2)
 
 なお、都道府県別・施設別の5年生存率も公表されましたが、国がんでは「患者の年齢や病期などで大きく変動するため、単純な比較はできない」旨を強調しています。「がん生存率第1位は●●病院」などといった不確かな情報に踊らされないようご注意ください。

高齢がん患者増加の中で、75歳以上では「無治療」も多い

 国がんでは、がん診療連携拠点病院(427施設)や都道府県の推薦病院(318施設)、小児がん拠点病院(15施設)において2015年の1年間にがんと診断された症例(約90万件)の分析も行っています。

 そこからは、「75歳以上、85歳以上の高齢患者では、部位や病期にもよるが『治療なし』の割合が多い」ことなどが明らかになりました。国がんでは、「75歳以上の高齢患者では、併存疾患の有無、全身状態などから若い年代と同様の積極的な治療を行うことが難しい」と推測しています。

75歳以上、85歳以上と高齢のがん患者では、治療無しの割合が多くなる(その1)
75歳以上、85歳以上と高齢のがん患者では、治療無しの割合が多くなる(その1)
75歳以上、85歳以上と高齢のがん患者では、治療無しの割合が多くなる(その2)
75歳以上、85歳以上と高齢のがん患者では、治療無しの割合が多くなる(その2)
75歳以上、85歳以上と高齢のがん患者では、治療無しの割合が多くなる(その3)
75歳以上、85歳以上と高齢のがん患者では、治療無しの割合が多くなる(その3)
75歳以上、85歳以上と高齢のがん患者では、治療無しの割合が多くなる(その4)
75歳以上、85歳以上と高齢のがん患者では、治療無しの割合が多くなる(その4)
 
今般の集計では65歳以上の高齢がん患者が増加していることがわかり、さらに、第3期がん対策推進基本計画においては「年齢などに応じたがん医療の提供」にも言及する予定となっていることに鑑みれば、今後、高齢者における標準的治療の策定なども重要な課題の1つとなりそうです。
65歳未満のがん患者が減少し、逆に65歳以上の高齢がん患者が増加している
65歳未満のがん患者が減少し、逆に65歳以上の高齢がん患者が増加している

   

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