新薬の原価計算方式、診療・支払双方が改めて問題点指摘—中医協・薬価専門部会



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 薬価制度の抜本改革に向けて、中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で具体的な制度設計論議が続けられています。26日の専門部会では、これまでに議論した▼効能効果の追加などに伴う市場拡大への対応▼外国平均価格調整のあり方▼薬価算定方式の正確性・透明性—などについて整理を行っています。

委員からは、とくに「原価計算方式」について現行方式の問題点などを指摘する意見が数多く出されました。次回の会合では、▼後発医薬品の薬価のあり方長期収載品の薬価のあり方新薬創出適応外薬解消等促進加算のあり方—などについて、これまでの議論を整理する模様です。

7月26日に開催された、「第136回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」
7月26日に開催された、「第136回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

支払側委員「原価計算方式はメーカーの言い値」と主張、厚労省は「厳格基準」強調

 昨年(2016年)末に行われた塩崎恭久厚生労働大臣、麻生太郎財務大臣、菅義偉内閣官房長官、石原伸晃内閣府特命担当大臣の4大臣会合で「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」がまとめられました。▼国民皆保険の持続性確保▼イノベーションの推進▼国民負担の軽減▼医療の質の向上―の4本を柱とするもので、中医協でこの基本方針の具体化に向けた検討が今年(2017年)1月から、これまでに11回に及ぶ議論を行っています。

 26日の専門部会では、これまでの議論の中でも(1)効能追加等に伴う市場拡大への対応(2)外国平均価格調整(3)薬価算定方式の正確性・透明性(類似薬効比較方式および原価計算方式)(4)薬価調査(5)中間年の薬価調査・薬価改定
―について、論点や委員の意見などが整理されました。

このうち(3)の薬価算定方式の正確性・透明性、中でも「原価計算方式」については、委員から現行制度に関する問題点を指摘する意見が数多く出されています(関連記事はこちら)。

新薬の薬価は、類似薬と同一価格(1日薬価)に設定する「類似薬効比較方式」による設定が原則ですが、類似薬がない場合には原価を積み上げる「原価計算方式」が採用されます。具体的には、▼製品製造原価(原材料費、労務費、製造経費)▼一般管理販売費(研究開発費など)▼営業利益▼流通経費▼消費税—などを積み上げて計算しています。26日の専門部会では、厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官から、各項目の計算方法の具体例(仮想例)が提示されました。例えば、一般管理販売費の中の研究開発費のうち、法律で定められた市販後調査を行うための経費(PMS費)については、MRによる現場訪問の費用などを計上することが認められますが、研究開発以外の一般管理費・販売費については、MRによる訪問の費用は「実質的な販売促進経費」であるため計上は認められない、ことなどが説明されています。

原価計算方式におけるPMS費計上の考え方
原価計算方式におけるPMS費計上の考え方
原価計算方式における一般管理費・販売費計上の考え方
原価計算方式における一般管理費・販売費計上の考え方
 
この点について支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「全体として『製薬メーカーの言い値』という印象である。例えば、研究開発費について事例では償却期間を8年に設定して見込み患者数を設定し『研究開発費総額÷総患者数』などを計算して、原価に計上している。しかし特許期間の中で研究開発費を回収するのであるから、償却期間の設定を8年とすることはおかしい。また、見込み患者数が実際の投与患者数とどれだけ乖離したのかも検証もされていないようだ」など、具体的な指摘を行いました。
原価計算方式における研究費計上の考え方
原価計算方式における研究費計上の考え方
医薬品1規格当たりの研究開発費算出の方法
医薬品1規格当たりの研究開発費算出の方法
 
これに対し中山薬剤管理官は「類似薬が生じた場合には投与患者が減ることもある。大きく変動した場合には市場拡大再算定などで対応している」など説明したほか、一定の基準を定めて原価計上を行うもので「決して、言い値を認めているわけではない」ことを強調しました。またメーカー代表の立場で中医協に参画している加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬株式会社常務執行役員)は、「実際にはさらに経費が生じており、すべての原価が認められるわけではない」旨を強調しています。

しかし幸野委員はこうした説明に納得せず、改めて「原価計算方式における『営業利益』は、優良メーカーのみの数字を平均したものだ。一般企業との乖離が大きく、整合性を検討すべきである」と強く要望しています。

また診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)からも、「原価計算方式の流通経費は、卸業者によって医薬品がメーカーから医療機関・患者に届くことを評価するものであり、この点は理解できる。しかし、言わば『卸業者の利益が上がれば、流通経費、つまり薬価が高くなる』仕組みとなっている。これを薬価に乗せることに違和感を覚える」とのコメントが出ています。中山薬剤管理官や厚労省医政局経済課の三浦明課長は「流通経費は、言わば卸業者の粗利に着目している。ここには様々な経費が含まれており、営業利益ではない」ことを強調しています。

英国、ドイツ、フランスは、米国価格を参照せずに薬価を設定

 また(1)の市場拡大への対応(年4回の新薬収載のタイミングを活用して、薬価を引き下げる)ついては、「対象となる医薬品をどう把握するか」「どのように薬価を引き下げるか」「いつから制度を導入するか」などの論点に沿って議論を行っています。中山薬剤管理官は、医薬品の販売数量の把握方法について「NDB(National Data Base)の活用が現実的」との考えを示しました。一部委員からはIMS社のデータ活用を求める声も出ていましたが、薬価引き下げなどにそのデータを用いるための契約締結などに極めて高いハードルがあるためです。

IMSデータを用いて、市場が大幅に拡大した医薬品を探知することは極めて難しい
IMSデータを用いて、市場が大幅に拡大した医薬品を探知することは極めて難しい
 
一方、(2)の外国価格調整については、支払側委員から「米国価格は参考にとどめ、価格調整のデータからは除外するべき」との考えが改めて示されました(関連記事はこちら)。この点、中山薬剤管理官は「英国、ドイツ、フランスでは、医薬品価格の設定において米国価格を参照していない」ことが紹介されています。もっとも専門委員やメーカーからは「世界最大の医薬品市場である米国を価格設定から除外すべきではない」との強い意見が出されており、今後の調整が注目を集めます。
英国、ドイツ、フランスでは米国価格を参照せずに薬価を設定している
英国、ドイツ、フランスでは米国価格を参照せずに薬価を設定している
 
次回会合では、▼後発医薬品の薬価のあり方▼長期収載品の薬価のあり方▼新薬創出適応外薬解消等促進加算のあり方—などについて、これまでの議論が整理されますが、中医協の議論は、まだ具体的な改革案を練る段階には達していないようです。今後、どのような議論・調整が進んでいくのか、専門部会の議論を注意深く見守る必要があります。

 

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