費用対効果を判断するための「支払い意思額調査」、聞き方も含めて再検討—中医協・費用対効果評価専門部会



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 医薬品などの費用対効果の良し悪しを評価する際の基準を定めるために、国民が「健康のためにどのくらいの費用負担を許容できるか」(支払い意思額)を調査するが、その調査方法については中央社会保険医療協議会・費用対効果評価専門部会で出された意見を踏まえ、改めて検討する—。

26日に開催された専門部会で、厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨企画官はこういった方針を示しました。後述するように支払い意思額調査について、委員からさまざまな意見・懸念が示されていることを考慮したものです。

7月26日に開催された、「第44回 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」
7月26日に開催された、「第44回 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」

支払い意思額調査、委員の意見・懸念を考慮し、調査方法を再検討

医療保険財政が厳しくなる中で、医療技術(ここでは医薬品、医療材料、高額な医療機器を用いた医療技術)の保険収載にあたり費用対効果評価を行って価格(薬価など)を設定する仕組みの検討が進んでいます。

費用対効果の流れは、▼メーカーと公的組織(再分析グループ)とで、それぞれ医療技術の効果と費用について分析を行う▼分析結果をもとに、「科学的観点からの検証」「倫理的、社会的影響などに関する検証」「総合評価」を行い、費用対効果を評価する(総合的評価、アプレイザル)▼評価結果をもとに医療技術の価格を決定する—というものです。このように費用対効果を評価して、ある医療技術について「費用対効果が良い」「悪い」といった判断を行いますが、そのための基準を設ける必要があります(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

費用対効果評価は、(1)企業によるデータ提出(2)再分析(3)総合的評価—という流れで行われる
費用対効果評価は、(1)企業によるデータ提出(2)再分析(3)総合的評価—という流れで行われる
 
厚労省は、この基準を定めるために「国民が健康を得るためにどの程度までなら支払ってもよいと考えるか」(支払い意思額)を調査することとしており、具体的には国民3000人以上を対象として、「ある人が病気にかかっており死が迫っています。しかし、この病気に対する新しい治療法が開発されました。そのためこの治療を受ければ、完全に健康な状態で1年間だけ寿命を延ばすことができます。この治療法の費用を公的医療保険から支払おうと考えています。治療全体で一人○円ですが、この費用を公的医療保険で支払うべきだと思いますか?」と問う形での調査を行う考えでした(関連記事はこちら)。
国民が健康のためにいくらなら支払ってもよいと考えているかを調査する
国民が健康のためにいくらなら支払ってもよいと考えているかを調査する
ICERの値を支払い意思額調査に基づく受託確率曲線に照らし、費用対効果の良し悪しを判断する
ICERの値を支払い意思額調査に基づく受託確率曲線に照らし、費用対効果の良し悪しを判断する
 
しかし専門部会では、「医療保険制度や保険財政の現状に詳しくない国民も多い。例えば高額療養費を知っている人と知らない人では、回答に大きなバラつきが出るのではないか」「自己負担がいくらになるか、という観点で調査をすべきではないか」「『死が迫っている』『完全な健康』という設定では、多くの国民が『いくらかかってもよい』と判断してしまうのではないか」など、さまざまな意見・懸念が示されています。そこで眞鍋企画官は、中医協委員の十分な納得を得てから調査を進める必要があると判断し、「どのような聞き方をするのか」も含めて、調査方法を見直し、近く改めて専門部会に提示する考えを示しています。

 ところで、費用対効果評価については▼13品目の医薬品・医療技術を対象として現在行われている「費用対効果評価の試行」(2018年度改定時に価格の再評価として導入される)▼2018年度からの制度化—の2段階で導入されます。上記の「基準値」に関する議論は、前者の「試行」結果を判断する際に用いられ、後者の「制度化」でも準用・継続されるかは決まっていません。眞鍋企画官は、「試行的導入における増分費用効果比(ICER)の評価基準の設定手法(支払い意思額調査の実施やその活用のあり方を含む)の検討は、制度化に向けた検討と分けて整理し、まず試行的導入に係る事項について必要な検討を行う」ことを明確にしています。

試行における総合的評価など、制度化に先んじて優先的に検討

 費用対効果評価は、▼試行▼制度化―の2段階で導入されますが、時間を考慮すれば「試行の結果を評価し、制度化に向けた検討を行う」ことはできません。「試行」の結果は2018年度の薬価・材料価格見直し時に「再評価」という形で具現化し、その時点では「制度化」がスタートしていなければならないからです。

 そこで眞鍋企画官は、まず▼総合的評価(アプレイザル)における「増分費用効果比(ICER)の評価基準の設定手法(支払い意思額調査の実施やその活用のあり方を含む)」「倫理的、社会的影響等に関する検証のあり方」▼価格調整のあり方―を、今後、専門部会で優先的に議論し、「制度化については、試行の検討状況を踏まえながら別途検討する」という方針を示しました。

 これまで「価格調整のあり方」については、薬価専門部会や保険医療材料専門部会で議論することとされていましたが、費用対効果評価専門部会で「医薬品や医療技術などに共通する」部分について議論し、後に薬価専門部会などでそれぞれ具体的な算定ルールに落とし込むことになります。

こうした進め方について支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)や診療側の万代恭嗣委員(日本病院会副会長)は、時間がないためスピード感を持った議論をする必要があると指摘。万代委員は「試行論議と制度化論議は同時並行的に進めるべき。試行に関する検討・検証は費用対効果評価専門組織で進められていると思うが、途中経過などを専門部会にも報告してほしい」と要望しました。もっとも診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「同時並行的に議論を進めれば、支払い意思額などがよくわからないまま進んでしまうおそれがある。性急な議論は好ましくない」と釘を刺しています。

 
なお支払側の間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)からは、薬価制度抜本改革の基本方針で言及されている「費用対効果評価結果に基づく価格の引き上げ」についての質問が出されました。費用対効果評価の結果、「極めて費用対効果が良い」などと判断された場合、メーカー希望価格などよりも高い価格を設定するのか、というテーマです。この点について眞鍋企画官は「今後、価格調整のあり方を議論する中で厚労省の考えを示していきたい」とコメントするにとどめています。

  

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