2018年度から段階的に診療報酬請求事務の効率化や、診療データ活用などを進める—中医協総会



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 煩雑な診療報酬請求や施設基準届出などの事務を効率化し、またレセプトやDPCなどのデータを医療の質の向上などに向けて、例えば、診療録から拾えるデータについては、改めての届出様式への記載義務を廃止したり、レセプト様式の見直し、回復期や慢性期医療の内容も把握できるようなDPCデータ様式の見直しなどを検討していく—。

 12日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、厚生労働省からこういった方針が示されました。ただし、これらを2018年度の診療報酬改定で一度に行えば、医療現場や保険者に大きな負担が生じるため、数次の改定で段階的な対応を行うことになります。

7月12日に開催された、「第356回 中央社会保険医療協議会 総会」
7月12日に開催された、「第356回 中央社会保険医療協議会 総会」

診療報酬請求事務の効率化・合理化を目指す

 「診療報酬の請求事務を簡素化してほしい」「レセプトの様式を見直すなどし、医療内容を分析しやすくすべきである」といった指摘は、診療報酬改定の度に出されます。しかし「2年に一度」という限定された改定スケジュールの中では、思い切った見直しを行うことは難しいのが実際です。

そこで今般、厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、まずゼロベースで、診療報酬の効率化・合理化、診療報酬情報の利活用について議論を行い、それを数次の改定に落とし込んでいくことによって、こうした指摘に応えることを提案しました。提案内容は、大きく(1)診療報酬に係る事務の効率化・合理化(2)診療報酬に係る情報の利活用—の2点に分けられます。

まず(1)の請求・届出事務については、▼届出様式の中に重複する項目がある▼診療報酬の告示・通知の記載に曖昧な部分がある▼入院料算定の大前提となる入院診療計画書など、診療録に記載されているデータを改めて様式などに記載しなければならない手間がある▼レセプトの記載事項の中にはフリーテキストによる記載が求められているものや、症状詳記など別途添付が求められるものがある▼医療保険の訪問看護についてはレセプトの電子化が行われていない—などの課題が指摘されています。

 例えば、疾患別リハビリテーション料を算定するためにはリハビリテーション実施計画書(様式21-21の5)を作成する必要があります。またリハビリテーション総合計画評価料を算定するためにはリハビリテーション総合実施計画書(様式23-23の4)を作成しなければいけません。両者は異なるものですが、「後者は前者を包含した内容となっており、後者(リハビリ総合実施計画書)で前者(リハビリ実施計画書)を兼ねられるようにすれば医療現場の負担が軽減できるのではないか」とグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの森本陽介コンサルタントは指摘しています。

 厚労省もこうした課題を解決する必要があるとし、施設基準届出のオンライン化などを検討していますが、さらなる効率化・合理化を目指し、例えば「重複する届出の簡素化」「告示・通知の記載内容の明確化」「レセプト様式の見直し」などを検討していく構えです。

厚労省で検討している施設基準届出などのオンライン化のイメージ
厚労省で検討している施設基準届出などのオンライン化のイメージ

DPCデータ、回復期や慢性期の分析も可能な内容へ

 一方、(2)の情報の利活用については、レセプトが従来の「請求データ」という位置づけに加え、「効果的・効率的な医療提供や、医療の質向上につなげられるデータ」という役割も加わっていますが、後者の役割・機能を発揮するに当たっては、▼患者の住所情報がない▼傷病名や診療行為が、実臨床に即したコード体系となっておらず、標準化がなされていない—といった課題が指摘されています。

 またDPCデータについては、そもそも「急性期入院医療」の診療実績を見るものゆえ、「急性期入院医療の内容」を分析するためには大変有用です。この点、2014年度の診療報酬改定では、地域包括ケア病棟にDPCデータ提出を義務付け、療養病棟などでもデータ提出を可能(加算の算定を可能)とする見直しが行われましたが、回復期や慢性期における入院医療の分析は困難であるとの指摘があります。

そこで厚労省は、こうした課題についても対応を検討していく考えを明確にしました。このうち前者のレセプトについては、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)から「どういう疾患の患者にどういった医療行為が行われ、どの程度の費用がかかったのかを分解して分析できるよう、様式の見直しを行ってほしい」と具体的な要望を行っています。

また後者の診療情報データ(DPCデータも診療情報データの1つ)について、診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は「厚労省の所管するDPCやNDB(National Data Base、レセプトデータと健診データを格納)のほかにも、他省庁のデータベース、学会のデータベースなどさまざまなものがある。これらの全体を把握して、どういうデータベースがどのように活用されているのか、委員間で共通認識を持つ必要がある」との見解を示しました。

▼2018年度改定▼2020年度改定以降―と段階的な改革を実施

迫井医療課長は、こうしたさまざまな課題に対応するための、いわばたたき台を今秋を目途に中医協に提示し、▼2018年度改定で対応できるもの▼2020年度改定以降で対応すべきもの—に整理する考えを示しました。医療機関や保険者では、請求・審査・支払という実務が稼働しており、円滑な事務を阻害しないために「段階的な対応」が求められるからです。

この点は、診療・支払双方の委員から「現場に影響が出ないよう、時間的余裕をもった対応が必要」との指摘が出ており、一致した方向と言えます。ところで2020年度には、被用者保険加入者の診療報酬について審査・支払を行う社会保険診療報酬支払基金の「システム刷新」が予定されており(関連記事はこちら)、こうした動きとも連動した改革が行われます。

支払基金の業務効率化・高度化計画(その1)、2020年度から新システムを稼働させ、コンピュータチェックルールを順次公開していく
支払基金の業務効率化・高度化計画(その1)、2020年度から新システムを稼働させ、コンピュータチェックルールを順次公開していく
 
なお、こうした改革を進めるためには、目標と具体的なスケジュールを定め、これに則って対応していくことが求められます。迫井医療課長は「定量的な目標値を定めて取り組む」考えも明らかにしており、例えば「●年度までに、重複する届出様式を◇%削減する」などの目標が立てられることになりそうです。

 

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