糖尿病性腎症の重症化予防、市町村と医師会などとの連携が特に重要—厚労省



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 人工透析患者の原疾患の半数近くを占める糖尿病性腎症の重症化予防に向けて、市町村などにおいて計画策定→対策の実施→事業評価→次年度計画の修正というPDCAサイクルを回すことが重要となり、とりわけ地域医師会などの関係者と密接に連携することが求められる—。

 厚生労働省は10日、省内に設置した「重症化予防(国保・後期広域)ワーキンググループ」(以下、ワーキング)が行った取りまとめを公表し、このような提言を行っています(厚労省のサイトはこちら(概要)こちら(本文)こちらには先進的自治体の取り組みも紹介されている)。

継続的な指導のためには、かかりつけ医との連携が不可欠

OECD Health Statistics 2015によれば、我が国は、先進諸国の中でもっとも「人口当たりの人口透析患者数」が多いとされています。また日本透析学会によれば、透析の医療費は年間で約1兆5700億円に上り、「透析の予防」が極めて重要な課題となっています。

さらに日本透析学会は、透析患者では「原疾患が糖尿病性腎症である者」が43.7%と最多を占めている状況も明らかにしており、糖尿病性腎症の重症化予防が、透析患者の抑制に大きな効果を与えると推測できます。

厚労省は昨年(2016年)4月に「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を作成、あわせて日本医師会・日本闘病対策推進会議と重症化予防をかかる連携協定を締結しています(関連記事はこちら)。今般、ワーキングでは、こうした取り組みをさらに推進・展開するために、(1)市町村(2)広域連合(3)都道府県(4)糖尿病対策推進会議(5)関係団体(6)国民健康保険団体連合会—の各団体に向けて提言を行っています。

まず(1)の市町村に対しては、何よりも「糖尿病性腎症の重症化予防」に向けた高い意識を持つことが重要とし、首長・幹部に「施策の優先順位を上げる」よう求めています。さらに▼担当課(健康増進担当と国民健康保険担当)の縦割り排除▼指導対象者の抽出基準の明確化―などの重要性も指摘しています。

こうした前提に立って、▼重症化予防の計画策定→▼対策の実施→▼事業評価→▼次年度計画の修正―というPDCAサイクルを回すことが重要ですが、そこでは、とりわけ「地域医師会」などの関係者と密接に連携することが必要です。重症化予防に向けては、対象患者への継続的な指導を行いますが、▼受療中断者▼治療中の患者―を対象とする場合は、個別にかかりつけ医に連携を求め、協力を得ることが必要となります。ワーキングでは、「計画の企画段階から医師会などと協議し、実施体制の構築に向けた合意形成を得る」よう求めています。さらに、計画を稼働させる中では、「かかりつけ医・専門医などの連携が円滑に進むよう、地域の連携体制の整備が必要」とも訴えています。

重症化予防に向けては、計画・準備→実施(受診勧奨や保健指導)→評価→改善(計画の修正など)というPDCAサイクルを回すことが重要となる
重症化予防に向けては、計画・準備→実施(受診勧奨や保健指導)→評価→改善(計画の修正など)というPDCAサイクルを回すことが重要となる
 
(2)の広域連合は、75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度の運営主体であり、健診・医療情報を市町村に積極的に提供することなどが求められます。

医師会との連携に向けたノウハウ提供や仲介など、都道府県が市町村の支援を

また(3)の都道府県に対しては、何よりも「市町村への支援」が求められます。規模の小さな町や村では、人材不足・財源不足に陥っているところもあり、人的・財政的支援を積極的に行うことが期待されます。さらに医療施策は、従前から「都道府県の所管」であるため、市町村には「地域医師会との連携」に向けたノウハウが不足しているケースもあります。そこでワーキングでは、▼市町村単独では対応が困難な都道府県医師会や都道府県糖尿病対策推進会議等と市町村との連携を仲介する▼糖尿病対策推進会議などの地域の実情に応じた組織を柔軟に活用して連携の枠組みを作り、市町村に具体的な連携方法などを情報提供する▼都道府県医師会・糖尿病対策推進会議等などと連携協定を締結する—よう具体的な要請を行っています。

重症化予防に向けた市町村への支援の実施状況については、都道府県間のバラつきがある
重症化予防に向けた市町村への支援の実施状況については、都道府県間のバラつきがある
 
さらに、都道府県版の重症化予防プログラムを策定することを求め、これは国民健康保険における保険者努力支援制度(医療費適正化に積極的な自治体に経済的インセンティブを付与する仕組み)で評価されることを強調しています。
都道府県の中でも、重症化予防プログラムの策定状況にバラつきがある
都道府県の中でも、重症化予防プログラムの策定状況にバラつきがある
保険者努力支援制度の概要
保険者努力支援制度の概要
 
また(4)の糖尿病対策推進会議は、都道府県(行政)・医師会・学会・栄養士会・薬剤師会など地域の関係者が集う、糖尿病対策(発症予防、合併症防止など)を一層推進することを目的とした会議体です。ワーキングでは、推進会議に対して▼市町村とのさらなる連携(市町村担当者が直接相談できる一元的な窓口の提示など)▼かかりつけ医や専門医などを含めた構成員の拡大―を行うよう要望しています。

重症化予防に向けた取り組みの「診療報酬での評価」にも言及

さらにワーキングは国に対して、▼重症化予防に向けた研究の推進▼先進的事例の収集と横展開▼各地域での取り組みの支援▼保険者努力支援制度などの進化▼関係施策との連携―などを行うことも指示しました。また、医療機関と市町村の情報共有、薬局における薬剤情報の一元管理、医療機関と地域包括支援センターの連携体制構築等、医療機関・薬局が地域と連携した取組が、「診療報酬の充実」などで評価される仕組みが期待されるとも指摘。中央社会保険医療協議会でも「かかりつけ医機能の充実」や「生活習慣病対策の充実」が重要論点の1つとして掲げられており、今後の改定論議にも注目が集まります(関連記事はこちらこちらこちら)。

 
ところで、重症化予防は医師を初めとする専門家だけで行うものではなく、患者・家族はもとより住民の積極的な参画が必要となります。そこで、▼対象者(患者)・家族、近隣住民、地域の企業などへの周知徹底▼対象者(患者)自身が自主的に取り組むような個人インセンティブの併用▼健康な街づくり(保健指導員や健康づくり推進員の養成、催しの開催、、要望の吸い上げなど)―も重要であると提言しています。

 

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