「今厳しい病院は3年以内に消える」、経営分析システム勉強会で大道日病副会長



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 「日本病院会」は6月29日、「JHAstis」(Japan Hospital Association Strategy Tactics Information System=日本病院会戦略情報システム)の勉強会を開催しました(JHAstisの紹介ページはこちら)。同ツールの経営改善事例が紹介されたほか、「グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン」(GHC)のコンサルタントによるツール活用方法、メディ・ウォッチ編集部による2018年度診療・介護報酬改定の解説が行われました。

日本病院会の大道道大副会長
日本病院会の大道道大副会長

 勉強会の冒頭であいさつした日本病院会の大道道大副会長は、18年度以降、病院が提供する医療の生産性の見える化が進むとした上で、「今後、(生産性の)パフォーマンスの悪い病院はすぐに分かるようになる」と指摘。次期診療・介護報酬改定が厳しい内容になるなどと予測されることから、「今、病院経営は一番いい時期。今が厳しいという病院は、間違いなく3年以内に消えてしまうだろう」と見通しました。

医療等ID制度で現場の実態が明らかに

 18年度は、▼国民健康保険の財政都道府県単位化▼新たな医療計画の実施▼診療・介護報酬の同時改定―などが控えています。厚生労働省は、このことを「惑星直列」と呼んでおり、団塊世代が後期高齢者になって医療費が膨張する「2025年問題」に向けた大きなターニングポイントになる年度であると考えています(関連記事『2018年の国保都道府県化や診療報酬改定など「惑星直列」に向け、2017年が重要―厚労省・鈴木保険局長』)。財務省も5月に固めた建議でプラス改定をけん制しており、病院にとってはかなり厳しい改定になる可能性がささやかれています(関連記事『2018年度同時改定、「国民の負担増を考慮せよ」とプラス改定論議を牽制—財政審』)。

 また、マイナンバー制度と並行して進む「医療等ID制度」が導入された後の医療の現場を予見し、大道副会長は「疾患ごとに医療従事者が何人投入されたのか、どのような医療を提供したのか、すべてが明らかになる時代がくる」と指摘。その上で、「今から18年4月までに何をしてきたかで病院の将来が決まる。今後、毎月算定できる加算を逃しているような病院はもたない」と警鐘を鳴らしました。

算定対象者2人「漏らさない」だけで回収可能

 JHAstisは日本病院会が16年度・17年度の重点施策に掲げる「病院の経営支援」を具現化したサービスで、出来高病院に特化した自病院の経営状況を見える化するためのシステムです(紹介ページはこちら)。

 JHAstisに参加すると、(1)主要経営指標の分析や加算取得など経営指南書を毎月配信する「月次レポート」(2)他院とのベンチマーク分析など有益な分析情報を提供する「定期レポート」(3)回復期病棟ならではの切り口でデータ分析する「回復期レポート」(4)同時改定の重要論点と自病院の影響に絞って徹底解説する「臨時レポート」―の4つのレポートを受け取れるとともに、分析を担当するGHCの専門コンサルタントによる講演や、JHAstis参加で経営改善した事例などを学べる「無料勉強会」に参加できます。

 JHAstisは月額4万円で参加することが可能です。月額4万円を各種加算に換算して考えると、退院困難な患者について算定できる「退院支援加算1(一般病棟等)」(退院時1回。600点)であればわずか7回の算定増にすぎません。また認知症ケアチームによるケア計画策定などを評価する「認知症ケア加算1」(14日まで1日につき150点、15日以降1日につき30点)であれば、27回(14日までで換算)に該当します。つまり、両加算の算定対象者を2人「漏らさない」だけで、JHAstis参加費用は回収可能なのです(関連記事『日病の経営分析レポートJHAstis、300床規模の病院で年200万円の増収実績』)。

今後、最重要は他病院との比較

 JHAstisの活用方法について講演したGHCコンサルタントでアソシエイトマネジャーの澤田優香は、客観的なデータを活用した経営改善に向けた取り組みの基本姿勢について、「経営データの自病院における実際の値、目標とする値の視点は欠かせない。もう一つの欠かせない視点は他病院平均(中央値)の値であり、これからの経営改善はこの3つの視点は不可欠」と指摘。経営学の父であるドラッカーの言葉を引用して「外の変化を知らなければ、時代に置きざりにされる」としました。

GHCコンサルタントでアソシエイトマネジャーの澤田優香
GHCコンサルタントでアソシエイトマネジャーの澤田優香

 18年度診療・介護報酬改定の解説をしたメディ・ウォッチ編集主幹の鳥海和輝は、プラス改定を期待することが難しい状況に加えて、地域医療構想や国保の財政都道府県単位化など地域ごとに医療費抑制が進みつつある流れを解説した上で、「今後、国が着目するのは自病院がどれだけ改善したかではない。見ているのは、他病院と比較してどうかということ」と、今後の経営改善で重要なことは「他病院との比較」と繰り返しました。

小林病院と平病院が事例紹介

小林病院の市川信英医事課長
小林病院の市川信英医事課長

 今回、ユーザー事例を紹介したのは神奈川県小田原市の「小林病院」(163床:一般56床=うち地域包括ケア6床、回復期リハビリテーション47床、療養60床)と岡山県和気町の「平病院」(90床:一般32床=うち地域包括ケア11床、療養30床、結核28床)。講演した小林病院の市川信英医事課長、平病院の高取敬修事務部長は、JHAstisによって救急医療管理加算の算定状況や、他病院との比較データで確認できるため、ベンチマーク分析によって大きな収益増になったことなどを、自病院の事例を交えて解説しました(講演内容の詳細については追ってお伝えします)。

平病院の高取敬修事務部長
平病院の高取敬修事務部長

 JHAstisにご興味がある方は、日本病院会のJHAstis紹介ページをご確認ください(JHAstisの紹介ページはこちら)。

勉強会の様子
勉強会の様子
解説を担当したコンサルタント 澤田 優香(さわだ・ゆうか)

sawada 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのアソシエイトマネジャー。看護師、保健師。
聖路加看護大学卒業後、集中治療室の勤務を経て、入社。看護必要度分析、看護業務量調査、DPC別診療科検討、病床戦略分析、マーケット分析などを得意とする。自由分析ソフトを用いた分析では、社内で右に出るものはいない。多数の医療機関のコンサルティングを行うとともに、社内のアナリスト育成や看護関連プロジェクト(看護必要度勉強会や「看護必要度分析」開発など)でも精力的に活動する(東京医科大学病院の事例紹介はこちら)。
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