紹介状なし外来患者の5000円以上定額負担、500床未満の病院にも拡大すべきか—中医協総会(1)



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 外来医療の機能分化を進めるために、特定機能病院・500床以上の地域医療支援病院では、紹介状なしの外来受診患者に定額負担が課せられることになったが、「初診に占める紹介状なし患者の割合」は定額負担導入前後でわずか2.9%しか減少しておらず、500床未満の病院では依然として「初診に占める紹介状なし患者の割合」は6割に達している—。

 このような調査結果が31日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会と診療報酬改定結果検証部会に報告されました。結果を受けて支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「定額負担の対象施設を特定機能病院など以外にも拡大する」「定額負担の除外規定を見直す」ことを検討すべきと提案しています。

5月31日に開催された、「第352回 中央社会保険医療協議会 総会」
5月31日に開催された、「第352回 中央社会保険医療協議会 総会」

500床以上の大病院、定額負担導入したものの紹介状なし患者の減少は低調

 2016年度の前回診療報酬改定で、外来機能分化を目指し、特定機能病院・500床以上の地域医療支援病院では、紹介状なしに外来を受診する患者について初診時5000円(歯科は3000円)、再診時2500円(同1500円)以上の定額負担を求めることになりました(関連記事はこちらこちらこちら)。

2016年度の前回診療報酬改定で、特定機能病院などで紹介状なしに外来受診する場合の新定額負担が導入された
2016年度の前回診療報酬改定で、特定機能病院などで紹介状なしに外来受診する場合の新定額負担が導入された
 
厚生労働省が、2016年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の一環として、この定額負担導入の効果を調べたところ、特定機能病院・500床以上の地域医療支援病院において「初診に占める紹介状なし患者の割合」は、改定前(2015年10月)には42.6%でしたが、改定後(定額負担導入後、2016年10月)には39.7%となり、わずか2.9ポイントしか低下していないことが明らかになりました。

また定額負担が義務化されていない200床以上500床未満の病院では、「初診に占める紹介状なし患者の割合」は、改定前60.3%から改定後59.4%で、減少幅は1ポイントに満たないことも分かっています。

2016年度改定の前後で「初診に占める紹介状なし患者の割合」の変化を見ると、定額負担が義務化された特定機能病院・500床以上の地域医療支援病院では2.9ポイント減(向かって左の表)、500床未満の病院では0.9ポイント減(向かって右の表)にとどまっている
2016年度改定の前後で「初診に占める紹介状なし患者の割合」の変化を見ると、定額負担が義務化された特定機能病院・500床以上の地域医療支援病院では2.9ポイント減(向かって左の表)、500床未満の病院では0.9ポイント減(向かって右の表)にとどまっている
 
この結果を受け、支払側の幸野委員は「紹介状なしの外来受診患者の抑止ができていない」と指摘。その背景には初診時5000円以上という金額設定のほか、「定額負担の除外規定があるのではないか」と考えているようです。

紹介状なし外来患者の中には、紹介状取得を求めることができない「救急搬送患者」がいます。また「健診結果により受診指示があった患者」「外来受診後そのまま入院となった患者」「地域に、ほかに当該診療科を標榜する診療所などがなく、大病院が外来診療を実質的に担っているような診療科を受診する患者」「ほか医療機関が直接受診が必要と認めた患者」などでも、紹介状取得を求めることは酷であり、こうした患者には定額負担は課されません(関連記事はこちら)。

 
幸野委員は「紹介状なし患者のうち、定額負担の対象になる患者は34.1%に過ぎない。除外項目を見直す必要があるのではないか」と提案しています。

定額負担の除外規定があるため、紹介状なし患者のうち、定額負担徴収の対象者は34.1%にとどまる(向かって左の表)。特定機能病院・500床以上の地域医療支援病院のうち14.1%では、「同意が得られず定額負担を徴収できない」患者がいた(向かって右のグラフ)。
定額負担の除外規定があるため、紹介状なし患者のうち、定額負担徴収の対象者は34.1%にとどまる(向かって左の表)。特定機能病院・500床以上の地域医療支援病院のうち14.1%では、「同意が得られず定額負担を徴収できない」患者がいた(向かって右のグラフ)。
 
また、200床以上の病院全体(定額負担の義務の有無にかかわらず)のうち、「従前は紹介状なしの初診患者に5000円未満の別途負担を課していたが、2016年度改定後の現在は5000円以上の別途負担を課している病院」では、「初診に占める紹介状なし患者の割合」が改定(5000円以上への引き上げ)後に32.0%も減少したことが明らかとなりました。この点からは、「5000円以上の定額負担義務化」に一定の効果があることが伺えます。幸野委員は、ここから「500床未満の病院、例えば300床以上、400床以上の病院にも定額負担義務化を適用すれば効果が出てくると予想される」と提案しました。
5000円未満の定額負担徴収病院が、5000円以上の定額負担に引き上げたところ、紹介状なし初診患者割合は32%も低下した
5000円未満の定額負担徴収病院が、5000円以上の定額負担に引き上げたところ、紹介状なし初診患者割合は32%も低下した
 
経済財政諮問会議においても、民間議員から「外来医療の機能分化を進めるために、紹介状なしの外来受診患者に対する定額負担義務化の対象病院拡大」を求める意見が出されており(関連記事はこちら)、2018年度の次期診療報酬改定に向けて論点の1つとなる可能性があります。

なお、上記の除外患者以外では、紹介状なしに特定機能病院・500床以上の地域医療支援病院を受診した場合に、病院の設定した5000円以上の定額負担を支払わなければいけません。しかし14.1%の病院では「患者に説明したが、同意が得られず定額負担を徴収できない患者がいる」と回答しています。

 
さらに、患者から「金額が高い」「納得がいなかい」といったクレームがつくケースもあることが病院から報告されており、幸野委員は「一般の人には機能分化の必要性が理解されていない。なぜ定額負担が義務化されたのかなどを周知徹底する必要がある」ともコメントしています。病院側による説明も必要ですが、何より保険者(健保組合や協会けんぽ、国民健康保険など)が被保険者やその家族に対して、折を見て機能分化や適正受診の必要性をこれまで以上に説いていく必要があるでしょう。

なお、こうした幸野委員の具体的な提案に対し、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「結果検証報告は、追加分析の必要性などを議論するためになされるもので、個別項目へのコメントなどは現時点ですべきではない」と指摘し、あえて具体的な反論などを控えています。

 

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