医療連携のリーダーは副院長、必須能力は俯瞰力と人脈-GHC春の病院経営セミナー



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 グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC、ホームページはこちら)は5月27日、新任の副院長など病院管理職を対象とした講演会「病院管理職向け春の経営セミナー【改定講演付】~「現場」を動かした副院長の成功事例集に学ぶ~」を開催。全国から約50人の病院管理職が集まりました。

 メインスピーカーでGHCマネジャーの塚越篤子は、副院長時代に実績を残して院長に昇進した病院経営者たちの事例を複数紹介。その上で、「副院長は連携のリーダーであり、そのためには経営者としての俯瞰力と、常にあらゆる視点で情報をキャッチできるネットワーク構築が欠かせない」と強調しました。

GHCの塚越
GHCの塚越

専門分野ではなく病院全体の経営を

 「病院大再編へ向けた大改定」になると予測される2018年度診療・介護報酬改定。大改定を目前に控えた今、病院の経営幹部は、難しい舵取りを迫られています。特に、今期から経営に参画した副院長などの病院管理職にとっては、なおさらのことです。

 そこで、「この4月に副院長に就任したばかり」「就任して1年経つが本格的な経営改善に踏み切れない」などの急性期病院の管理職を対象に、実践的な経営セミナーを企画。経営改革の実績を積み上げて院長へ昇進した副院長たちの奮闘記を通じて、副院長に求められることは何か、そのためには何から始めればいいのか、などについて学びました。

 塚越はまず、「病院経営には、大空から眺めるように物事の大局を捉える『鷹の目』、事象をより身近に細かく見る『蟻の目』、激しい流れの中でも泳ぐため先を見通す『魚の目』--の3つの視点が必要。中でも、自身の専門分野だけではなく、病院全体の経営を鷹の目で見ることができる俯瞰力が重要」と指摘。医業利益を因数分解した項目の空欄を埋めたり(図表1)、主要経営指標のデータだけを見てどのような役割の病院であるかを推定(図表2)したりするワークショップなどを通じて、経営における俯瞰力の重要さを確認しました。

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院内外のネットワーク構築

 ネットワークの構築では、各部門の取り組みの集合体が病院全体の改善成果につながることを確認した上で、「多職種連携の取り組みによる効果は必須。それを推進するのが副院長の役割」と指摘。そのためには、あらゆる部署から情報が入ってくるネットワーク構築が不可欠であり、特に「看護師は病院全職員の潤滑剤であり、情報通」として、院内最大部門の看護部を味方につけることが重要としました(図表3)。

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 事例としては、静岡県立こども病院の瀬戸嗣郎前院長などを紹介。

 瀬戸氏は岸和田市民病院の副院長に就任した当時、小牧市民病院を見学して驚いたことがありました。当時の末永裕之院長(現小牧市民病院事業管理者)は執務中、ほとんど院長室の扉を開けたままにしていて、職員が次から次へと相談や決裁を求めて入ってきたのです。これを見てその後、瀬戸氏は副院長時代から院長になった後も、末永氏のスタイルを貫き通していると言います。

 メディ・ウォッチの取材で瀬戸氏は、「経営をよくするための決断をすることが院長の仕事。院長の役割を果たすから院長なのであり、そのためにはすぐに相談しやすい『院長室』であることは不可欠。『院長に相談しづらい』という壁があり、そのために不要な下から上への手続きを踏むのは、時間の無駄」と強調しています(詳細は『新たな病院職員「ファシリティドッグ」、小児患者に「また明日」の希望を』)。

 済生会福岡総合病院の事例では、同院の病院紹介ビデオを紹介(病院紹介ビデオはこちら)。講演で解説した同院の具体的な取り組み事例や他病院の事例紹介は割愛させていただきますが、前述のイメージビデオでは、近隣の医療機関との連携に定評のある済生会福岡総合病院の強さが分かりやすく凝縮されています。院内のネットワーク構築も重要ですが、院外の医療機関といかに円滑で強固なネットワークを構築するかも重要であり、それを推進するのも、副院長の大きな役割の一つです。

メディ・ウォッチ着目の同時改定論点とは

 この日の講演会では、メディ・ウォッチ編集部から「2018年度同時改定に向けて-急性期病院が抑えるべきポイント-」と題して講演。(1)急性期入院医療の動向、(2)後方病床の動向、(3)DPCの動向、(4)医療連携、医療・介護連携の動向--の4つの軸で、診療・介護報酬改定の最新情報と論点を解説しました。

 現在、中央社会保険医療協議会で2018年度診療報酬改定の議論が進められています。急性期入院医療の動向としては、7対1入院基本料と10対1入院基本料の議論に着目(参考『7対1・10対1入院基本料、看護配置だけでなくパフォーマンスも評価する報酬体系に―中医協総会(1)』)。7対1と10対1を比較すると、入院患者像に重複があるにも関わらず、報酬に大きな差があることを厚生労働省が問題していると考えられます。そのため、「次の改定ではこの差を『埋める』見直しが行われる見込みが高い」とした上で、今後、想定される論点や注目すべき動向について、メディ・ウォッチ独自の着眼点を交えて詳細に解説しました。

会場の様子。当日は約50人の病院管理職が参加した
会場の様子。当日は約50人の病院管理職が参加した
解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。
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