専門医整備指針、女性医師に配慮した柔軟な対応などを6月2日の理事会で明記—厚労省検討会



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専門医制度の憲法とされる「専門医制度新整備指針」に、▼専門医取得が義務でない▼プログラム制が原則だが、地域医療従事者や女性医師などに配慮し、カリキュラム制も含めた柔軟な対応を行う▼研修の中心は大学病院のみでなく、地域の中核病院なども含める—ことなどを明記する—。

25日に開催された「今後の医師養成の在り方と地域医療の確保に関する検討会」で、吉村博邦構成員(日本専門医機構理事長、地域医療振興協会顧問、北里大学名誉教授)がこのように報告。検討会の了承が得られたため、6月2日開催予定の日本専門医機構理事会で新整備指針が改訂・修正されます。

5月25日に開催された、「第2回 今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」
5月25日に開催された、「第2回 今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」

専門医制度新整備指針の見直し方針を検討会が了承、機構で6月に正式改訂

数多ある専門医の質を担保し、国民に分かりやすい制度とするため、「専門医の研修プログラム認証や、専門医の認定を各学会と日本専門医機構が共同して行う」新専門医制度が来年度(2018年度)から全面スタートする予定です。ただし、質の担保を求めるあまり「研修を行う施設(病院)の要件が厳しすぎれば、地域医療の現場から医師が去ってしまい、医師の地域偏在が進み、地域医療が崩壊してしまう」との指摘を受け、日本専門医機構では昨年(2016年)12月に策定した『専門医制度新整備指針』や、下部規定の中で「地域医療への配慮を行う」旨を示しました(関連記事はこちらこちらこちら)。

しかし、全国市長会などは「さらなる配慮が必要」と強く要請。4月24日の前回検討会でも、厳しい指摘が構成員から相次ぎ、日本専門医機構では新整備指針の見直しを検討。5月12日の理事会で次の4点を明記する見直し方向が固まり、25日の検討会にその旨が日本専門医機構の理事長である吉村構成員から報告されました。

(1)「専門医はすべての医師が取得しなければならないものでなく、医師として自律的な取り組みとして位置づけられるものである。国民に信頼される安全・安心な医療提供のための専門研修は適正に施行されるべき」旨を明記

(2)「基本領域の専門医研修はプログラム制が原則だが、▼専門医取得を希望する義務年限を有する医大卒業生▼地域医療従事者▼出産・育児などで休職・離職を選択した女性医師など▼介護・留学など合理的理由のある医師—などでは、カリキュラム制などの柔軟な対応を行う」旨を明記

(3)「全般的、幅広い疾患の症例の豊富な支柱病院を重要な研修拠点とし、大学病院に研修先が偏らないようにする。連携病院で採用した専攻医が希望した場合、長期間連携病院での研修を設定するなど柔軟なプログラムを作成する」旨を明記

(4)「機構の研修プログラム承認に際し、▼都道府県▼市町村▼医師会▼大学▼病院団体—などからなる都道府県協議会と事前に協議し決定する。承認後も、連携施設などの医師配置状況を含めて協議会に情報提供する。協議会の意見を受け、機構は協議会・関係学会と協議・調整し改善する」旨を明記

この見直し方向について、「(2)の柔軟な対応を担保するための仕組みが必要。指導医の要件についても臨床を重視すべき」(山内英子構成員:聖路加国際病院副院長・ブレストセンター長・乳腺外科部長)、「専門医資格の更新についてハードルが高くなりすぎないようにすべき」(加納繁照構成員:日本医療法人協会会長)、「基幹施設の状況について、日本専門医機構などを経由せず、直接、都道府県協議会に情報提供できる迅速な対応を図るべき。協議会では、研修プログラムだけでなく連携施設の医師配置も協議できるようにすべき」(荒井正吾構成員:奈良県知事、林修一郎・奈良県医療政策部長が代理出席)といった注文が付いたものの、大枠で了承されました。日本専門医機構では6月2日に理事会を開き、新整備指針の改訂を決定する予定です。

研修プログラムをチェックする都道府県協議会、6月に厚労省が運用通知を発出

上記のうち(4)の都道府県協議会は、地域の医師偏在が助長されないよう、都道府県単位で▼行政(都道府県・市町村)▼医師会▼病院団体—などの関係者が出席し、専門医研修プログラムについて「これまでに専門医研修を行っていた施設が漏れていないか」などをチェックする組織です。

厚生労働省は昨年(2016年)1月に、都道府県に対して「協議会設置に関する通知」を発出していますが、厚労省医政局医事課の武井貞治課長は、「最新の動向(新整備指針の見直しや、検討会での議論など)を踏まえて、改めて協議会の設置・運営に関する通知を6月に発出する」考えを示しました。

協議会は全都道府県で設置されていますが、専門医制度の全面施行が1年延期されたため開催状況にはバラつきがあるようです。今村聡構成員(日本医師会副会長)は「開催状況などを検討会に報告してほしい」と要望しています。

また山内構成員は、「専門医だけでなく、地域医療全体を包括して議論する協議の場とすべき」と提案。山下英俊参考人(日本専門医機構副理事長、山形大学医学部長)も「山形県では蔵王協議会として、▼大学▼医師会▼行政▼病院▼看護協会―などすべての地域医療関係者が集い、医師教育だけでなく、医療事故防止や研究などを総合的に検討している。多層的な組織で情報交換することが望ましい」と山内構成員に賛同しました。

この点、武井医事課長は、「都道府県協議会について、昨年(2016年)に発出した通知では『地域医療対策協議会などを活用する』よう示している」ことを説明。地域医療対策協議会は、▼行政▼医師会▼大学▼病院▼住民—らが参画し、都道府県内の医療提供体制や医師確保などについて幅広く協議する場であり、厚労省も山内構成員や山下参考人と同じ方向で考えていることが分かります。

なお、住民に最も身近な自治体である市町村の立場で出席した立谷秀清構成員(相馬市長、全国市長会副会長)は「都道府県協議会の全国組織を立ち上げる必要がある」と指摘。尾身茂構成員(地域医療機能推進機構理事長)も「全国と各都道府県とで情報をフィードバックしあうメカニズムが必要」と賛同しています。もっとも今村構成員は「まずは各都道府県で協議会を開催してもらうことが重要」と指摘し、全国組織の設置などは中長期的に考えるべき論点かもしれません。

内科学会、J-OSLERシステムで研修実績を把握し「柔軟な対応」を可能に

このように新専門医制度に対しては「地域医療への配慮」が強く求められています。25日の検討会では、内科領域における「配慮」に向けた取り組み状況も報告されています。

内科領域では、「専門医の質の担保」(必要な研修の確保)と「地域医療への配慮」との両立を目指し、次のような対応を行っています。

▼研修プログラムに参加する施設の基準を一部緩和し、基幹施設・連携施設・特別関連施設(一定要件を満たせば指導医が常勤していなくても、研修プログラムに参加できる)のない2次医療圏を解消した

研修施設空白医療圏は内科領域では解消した
研修施設空白医療圏は内科領域では解消した
研修施設は大幅に増加している
研修施設は大幅に増加している
 
▼研修プログラムの基幹施設は市中病院を中心とし、大学病院が連携施設になるケースもある
内科学会の研修プログラムでは、市中病院が基幹病院の多くを占めている
内科学会の研修プログラムでは、市中病院が基幹病院の多くを占めている
 
▼J-OSLERというWEBシステムを構築し、そこに研修実績などを登録することで研修状況をリアルタイムで把握できるようにした。これにより、一時研修が中断しても、過去の研修実績が研修再開時に引き継がれ、柔軟な対応(実質的なカリキュラム制)を可能としている
J-OSLERシステムの概要(その1)
J-OSLERシステムの概要(その1)
J-OSLERシステムの概要(その2)
J-OSLERシステムの概要(その2)
 
▼3年間じっくりと内科の研修を行う「標準研修コース」に加えて、早期のサブスペシャルティ領域研修を行う「サブスペ重点コース」や、余裕を持たせて内科領域とサブスペシャルティ領域の研修を行う「内科・サブスペ混合コース」など、多様な研修コースを準備し、専攻医の実情にあった研修を可能としている
内科領域では、さまざまな研修コースが準備されている(その1)
内科領域では、さまざまな研修コースが準備されている(その1)
内科領域では、さまざまな研修コースが準備されている(その2)
内科領域では、さまざまな研修コースが準備されている(その2)

 
この内科学会に取り組みを検討会構成員は高く称賛。とくに「J-OSLERシステムによって、研修実績・状況をリアルタイムで把握できることで、質を担保しながら柔軟な対応(実質的なカリキュラム制)を可能としている」と渋谷健司構成員(東京大学大学院国際保健政策学教授)は評価し、「日本専門医機構から各学会に対してこういったシステムの構築を呼びかけるべき」と提案しています。

なお立谷構成員から「内科学会の配慮は素晴らしいが、専門医資格取得要件の中に『論文』発表を含めている点に違和感を覚える」と指摘がありましたが、宮崎俊一参考人(日本内科学会副会長)や山下参考人は「データをもとにして1つの症例にじっくりと向き合うことが、優秀な医師養成のプロセスには不可欠である」と説明し理解を求めました。この点、渋谷構成員は「『2編の学術発表または論文発表』とされている。3年に2編程度の学術発表は必要であろう」とコメントし、内科学会の要件を支持しています。

検討会では、次回会合に▼外科▼整形外科▼産婦人科▼小児科▼救急医療▼麻酔科▼精神科—の7学会を招き、同様に「地域医療への配慮」に向けた取り組み状況についてチェックを行う予定です。なお武井医事課長は、今後の検討会論議について「専門医制度は、機構の整備指針→学会による整備基準→研修プログラムという流れで制度を詳細に規定していく。検討会でも同じ流れで議論していく必要があるのではないか」との考えを示しています。

 

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