紹介状なし外来患者の定額負担、500床未満の病院にも拡大の可能性—経済財政諮問会議



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 医療の質を高め、また国民皆保険を維持するために「かかりつけ医の普及」などを進める必要がある。そこで、紹介状なしに病院外来を受診した場合の定額負担について「対象の拡大」を行い、あわせてかかりつけ医以外を受診した場合の定額負担導入に向けた検討を進めるべきである—。

23日に開かれた経済財政諮問会議で、民間議員はこのように提言しました。

紹介状なしの病院外来受診、2018年度改定で500床未満病院にも導入の可能性

民間議員は、国民皆保険の持続可能性を確保するために、▼かかりつけ医の普及▼かかりつけ薬局の普及▼健康増進・予防の推進―などを図る必要があるとも指摘。

かかりつけ医の普及に向けては、(1)紹介状なしの病院外来受診における定額負担の対象を拡大する(2)かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担の導入に向けた検討を進める—よう求めています。

1人当たりの外来診療日数が諸外国に比べて高く、かかりつけ医の普及によってこうした点が是正できるのではないかと民間議員は期待している
1人当たりの外来診療日数が諸外国に比べて高く、かかりつけ医の普及によってこうした点が是正できるのではないかと民間議員は期待している
 
紹介状なし外来受診での定額負担は、2016年度の前回診療報酬改定において、「特定機能病院」と「500床以上の地域医療支援病院」を対象として、初診時に5000円以上・再診時に2500円以上の患者負担を新たに求めることとなっています(関連記事はこちらこちらこちら)。今般の提言により、例えば2018年度の次期診療報酬改定において、500床未満の病院にもこの定額負担が導入される可能性が出てきたことになります。
2016年度の前回診療報酬改定で、特定機能病院などで紹介状なしに外来受診する場合の新定額負担が導入された
2016年度の前回診療報酬改定で、特定機能病院などで紹介状なしに外来受診する場合の新定額負担が導入された
 
また「かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担」については、昨年(2016年)に社会保障審議会の医療保険部会で議論され、「かかりつけ医の定義が不明確である」などの理由から実現されていません。ほかにも「複数のかかりつけ医を持つことは可能なのか」「かかりつけ医を持たない若者も少なくないが、その点をどう考えるのか」「病院はかかりつけ医に含まれるのか」など、さまざまな論点があり、今後の医療保険部会論議に注目が集まります(関連記事はこちらこちら)。

 
このほか民間議員は、▼高額薬剤の適正使用や後発品・バイオシミラーなどへのシフト促進に向けたルールの改善▼スイッチOTC医薬品の拡充▼フランスで導入されている「代替性のない高額医薬品ほど自己負担割合を減らす」ことも含め、薬剤の有効性などに応じて保険償還率を設定する仕組み—などを検討するよう提言しています(関連記事はこちら)。

高額療養費制度は、過重な自己負担を抑制するための仕組みだが、上限額を超えれば「それ以上の自己負担」はないため、高額薬剤などの使用が進んでしまうと民間議員は指摘する
高額療養費制度は、過重な自己負担を抑制するための仕組みだが、上限額を超えれば「それ以上の自己負担」はないため、高額薬剤などの使用が進んでしまうと民間議員は指摘する
フランスでは、薬剤の種類によって給付率が異なっており、こうした仕組みの導入に向けた検討を進めるべきと民間議員は提案する
フランスでは、薬剤の種類によって給付率が異なっており、こうした仕組みの導入に向けた検討を進めるべきと民間議員は提案する

新薬創出等加算、「革新性の高い医薬品」に対象を絞るべき

昨年(2016年)末に「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」が取りまとめられ、そこでは▼市場拡大に速やかに対応するための薬価見直し(年4回の新薬収載時)▼毎年の薬価調査と、乖離の大きな品目の薬価改定▼新薬創出・適応外薬解消等促進加算(新薬創出等加算)の抜本的見直しや費用対効果評価の本格的導入▼薬価算定方式の正確性・透明性の徹底や、外国価格調整方法の改善▼革新的バイオ医薬品およびバイオシミラー(バイオ後続品)の研究開発支援方策など▼安定的な医薬品流通の確保▼費用対効果を踏まえた、新たな医療技術の迅速な保険導入―といった方向が示されました。

現在、基本方針の具体化に向けた議論が中央社会保険医療協議会の薬価専門部会を中心に進められていますが、23日の経済財政諮問会議では、民間議員から次の点について「改革を拡充すべき」との提言が行われました。

(1)革新的新薬創出の促進と医薬品産業の競争力強化

(2)長期収載品の薬価引下げ、後発医薬品の使用促進

(3)薬価設定・改定ルールの正確性・透明性の徹底

 
 このうち(1)では、いわゆるドラッグ・ラグ(海外で承認されている医薬品が我が国で承認されていない問題)の解消や優れた医薬品の開発原資を確保することなどを目的に創設された【新薬創出・適応外薬解消等促進加算】について、「革新性のある医薬品に対象を絞り込む」などの見直しを行い、明確な政策効果があがるようにすべきとしています。この加算は「市場実勢価格と薬価との乖離が平均以上の、後発品のない先発品について、改定前薬価の一定割合を維持する」仕組みといますが、中医協でも「革新性の高い製品に絞り込むべきである」との指摘が以前からあります。この点、17日に開催された中医協では、製薬メーカーから「加算の仕組みの維持」などを求める意見が出されていますが(関連記事はこちら)、今回の提言を受け、より厳格な要件設定などが検討されることになりそうです。

また、革新性の低い先発品については「革新的新薬と薬価を明確に区別する」ことも民間議員は求めています。

費用対効果に基づく薬価設定に向けて、日本版NICEの設置を

さらに民間議員は、抜本改革基本方針で「費用対効果評価の本格導入」が打ち出された点を踏まえて(関連記事はこちらこちら)、「エビデンスに基づく費用対効果を反映した薬価体系を構築するために、日本版の医療技術評価機構設置に向けて、独立性と透明性を高めるべき」とも提言しました。

費用対効果評価の先進国とされるイギリスでは、新薬などの費用対効果を測定するNICE(National Institute for Health and Care Excellence)という組織が設置されています。NICEは新薬の効果や増加費用などを測定し、NHS(National Health Service)に「A新薬は費用対効果が高いので、公的サービス(国民は無償)に積極的に追加すべきである」「別のB新薬は、既存薬に比べて効果が一定程度高いが、費用(価格)に見合った効果ではない。保障対象とする場合には、メーカーの希望価格を下げる必要がある」などの提言を行います。

現在、費用対効果評価は厚生労働省に設置された専門家からなる「再分析グループ」(メーカー提出データを再分析する)や「費用対効果専門組織」(総合的評価:アプレイザルを行う)などで行います(最終的には中医協総会で決定)が、本格導入する場合には「我が国でもNICEのような公的組織の設置が必要」との指摘が従前からなされています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。今後、中医協の費用対効果評価専門部会などで、どのように議論が進むのか注目されます。

費用対効果評価試行的導入に概要
費用対効果評価試行的導入に概要
 
 なお民間議員は、抗がん剤について、▼効果の高い薬の使い方▼バイオマーカーの開発・利活用の促進―なども求めています。

さらに(2)では▼長期収載品薬価のさらなる引き下げ▼後発品の価格帯集約(現在は3価格帯)―を、(3)では▼原価計算方式の改善▼効能追加などによる市場拡大への迅速な対応(薬価引き下げ)▼毎年薬価改定に当たっては、価格乖離の大きな医薬品などは少なくとも対象とする▼薬価調査結果の公表範囲の拡大―についても言及。いずれも中医協での議論に大きな影響を与えることになりそうです。

普通調整交付金、「医療費抑制へのインセンティブが効かない」と民間議員

ところで、2018年度から国民健康保険の財政責任が都道府県に移管されることになります。このため、都道府県に▼医療提供体制(医療計画作成)▼医療費適正化▼国保財政—の責任が集中し、これまで以上に医療行政における重要性が高まります。

こうした点を踏まえて民間議員は、▼2018 年度からの保険者努力支援制度(特定健診などの実施や後発品使用促進など、医療費適正化に向けた努力の度合いに応じて国民健康保険の保険者に交付金を交付する仕組み)の抜本拡充▼普通調整交付金の見直し▼地域別診療報酬制度の活用―を検討することも求めました。

このうち普通調整交付金は保険者の財政力不均衡を調整する制度ですが、民間議員は、「医療費が増えると配分が増える算定方法であり、医療費抑制へのインセンティブが効きにくい」と指摘し、▼高齢化要因▼所得要因―を中心に算定する方法に早急に見直すよう求めています。しかし、国保サイドは「普通調整交付金のために医療費を高いまま維持することなどはありえない」と猛反発しており、今後も議論の的になりそうです(関連記事はこちら)。

普通調整交付金は、保険者間の財政力不均衡を是正するために「実績医療費と保険料収入との差を埋める」ものだが、これが医療費抑制を阻害していると民間議員は指摘している
普通調整交付金は、保険者間の財政力不均衡を是正するために「実績医療費と保険料収入との差を埋める」ものだが、これが医療費抑制を阻害していると民間議員は指摘している
 

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