2018年度からの第3期医療費適正化計画、保険者・自治体・医療関係者・企業の連携が必要—社保審・医療保険部会



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 2018年度から新たな医療費適正化計画がスタートするが、そこでは「予防・健康づくり、医療、介護」が密接に関連した取り組みが必要となるため、保険者、自治体、医療関係者、企業などの連携が不可欠となる。また、都道府県は保険者協議会も活用しながら、保険者横断的な医療費の調査分析を行い、的確な医療費適正化に向けた取り組みを実施できる体制を確保する必要がある—。

 4月26日に開催された社会保障審議会・医療保険部会では、こうした点が確認されました。

4月26日に開催された、「第104回 社会保障審議会 医療保険部会」
4月26日に開催された、「第104回 社会保障審議会 医療保険部会」

国保の普通調整交付金がモラルハザード招いているとの諮問会議議論に、批判噴出

 医療費の膨張ペースを我々の負担可能な範囲に抑えるために、高齢者医療確保法(高齢者の医療の確保に関する法律)では、都道府県に対して6年を一期とする医療費適正化計画(従前は5年を一期)を定めるよう指示しています(法第9条)。

 これまで(第1期、第2期)の医療費適正化計画では、▼平均在院日数の短縮▼特定健診などの実施率向上―が柱となっていましたが、2018年度からの第3期計画では、「特定健診などの実施率向上」に加えて、▼糖尿病の重症化予防▼後発医薬品の数量シェアの数値目標達成▼医薬品の適正使用(重複投薬、多剤投与の適正化)―などを盛り込み、より広範な取り組みを行うことが求められます。さらに、第3期計画からはPDCAサイクルが強化され、これまでの「中間年度の中間評価」を発展的に廃止し、「毎年度の進捗状況の公表」「計画最終年度の進捗状況の調査・分析」を行うことになっています。

2018年度から、新たな医療費適正化計画がスタートする
2018年度から、新たな医療費適正化計画がスタートする
 

 こうした広範な取り組みは、▼予防・健康づくり▼医療▼介護―と密接に関連しているため、保険者、自治体、医療関係者、企業などが連携することが不可欠となります。

 また医療費適正化を進めるためには、都道府県内のすべての保険者が、同じ意識をもって協働する必要があることから、保険者と後期高齢者広域連合(いわば、75歳以上の後期高齢者医療制度の保険者)が「保険者協議会」を組織。そこには医療関係者なども参画し、▼都道府県が医療費適正化計画を策定する際に、事前に保険者協議会と協議する▼都道府県は、計画実施に関して必要があるときは、保険者協議会を通じて保険者や医療関係者などに必要な協力を求めることができる—ことになっています(2018年度から)。

 この点、2018年度からは国民健康保険の財政責任主体が都道府県に移管されます。つまり、2018年度からは、都道府県は▼国保の財政責任を担う(運営する)▼医療提供体制構築の責任を負う▼医療費適正化計画の進捗責任を負う—という極めて重要な役割を担うことになります。そこで、保険者協議会も活用しながら、都道府県民の健康増進と医療費適正化を的確に実施できる体制を確保することが求められます。

 

 厚生労働省はこうした点を踏まえて、▼保険者協議会における都道府県の位置づけや役割の明確化▼国から提供されるデータなども活用した都道府県内の保険者横断的な医療費分析などを行う機能の強化▼保険者、自治体、医療関係者、企業などの幅広い関係者と連携等するために必要な体制の確保―などを、今後、検討していってはどうかとの論点を提示しています。

 これに対し、都道府県や市町村など自治体を代表する委員からは「自治体側の意見を聴かずに、経済財政諮問会議などで議論を進めるべきでない」といった声が相次ぎました。

 とくに4月12日に開催された経済財政諮問会議で、新浪剛史議員(サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)が普通調整交付金について「(国保保険者の財政不均衡を是正する仕組みだが)自治体の医療費適正化の努力に対してモラルハザードを引き起こしている」と指摘した点について、強い批判が出されました(関連記事はこちら)。

 自治体によって年齢構成や所得水準が異なるので、例えば「高齢者が多い自治体では、医療費が高くなりがちな一方、所得水準も低いので、保険料負担が極めて重くなる」といった事態が生じてしまいます。そこで、こうした財政力の不均衡を調整するために普通調整交付金が設けられているのですが、新浪議員は「医療費を高いままに、つまり適正化をしなければ、普通調整交付金を多く受け取れる」構造になっている点をとらえ、モラルハザードが起きていると指摘しているのです。

 しかし、4月26日の医療保険部会では、福田富一委員(全国知事会社会保障常任委員会委員長/栃木県知事)の代理として出席した小竹参考人や渡邊廣吉委員(全国町村会副会長/新潟県聖籠町長)らは、こぞって「住民に保険料負担をお願いする自治体が、普通調整交付金のための医療費をたかいまま維持することなどはありえない」と強く批判。

 また4月20日に開催された財政制度等審議会・財政制度分科会でも、普通調整交付金について「「実際の医療費ではなく、各⾃治体の年齢構成のみを勘案した標準的な医療費⽔準を前提として交付額を決定する仕組みとし、年齢構成では説明できない地域差には、普通調整交付⾦を充てず、地域差是正に向けたインセンティブを強化する」といった改革案が示されている点にも(関連記事はこちら)、医療保険部会委員は「普通調整交付金は、保険者の責に帰せない事由(所得水準や年齢構成など)に着目した調整の仕組みであり、インセンティブは別の仕組みで行うべき」と強い不快感を示しています。

2016年度から、特定健診など推進のための仕組みが徐々に変わっていく
2016年度から、特定健診など推進のための仕組みが徐々に変わっていく

保険者による予防・健康づくり推進策を2016年度から見直し、健保組合からは疑問も

 また4月26日の医療保険部会では、「保険者における予防・健康づくりなどのインセンティブ」も議題となりました。

 これまでは、医療保険者が負担する後期高齢者支援金(75歳以上の後期高齢者医療制度の拠出する負担金)を、特定健診や保健指導の実施率に応じて加算(実施率ゼロであれば0.23%負担が重くなる)・減算(実施率が高ければ、支援金負担が軽くなる)というインセンティブが設けられていました。

 2016年度からは、この仕組みを見なすとともに、国保では「保険者努力支援制度の創設と前倒し」、協会けんぽでは「評価資料による取り組み結果の都道府県ごとの保険料率への反映」(2016年度から試行、18年度から保険料率に反映)などが行われます。

財務省は普通調整交付金の見直しを提言している
財務省は普通調整交付金の見直しを提言している
 

 このうち、後期高齢者支援金の加算・減算制度については、2016年度から「健保組合と共済組合」の中で実施されることになった点について、白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)から「特定健診実施率は全国平均で45%程度にとどまっているが、健保組合では平均70%程度と高い。すると、他の保険者よりも実施率の高い実績をもっているにもかかわらず、後期高齢者支援金が加算される(ペナルティを掛けられる)健保組合などが出てくる。これは問題ではないか」と指摘しています。

 

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