新薬の薬価設定で、比較対象薬(類似薬)に付加された補正加算をどう考えるべきか―中医協・薬価専門部会



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 新薬の薬価算定ルールの1つである「類似薬効比較方式」において、比較薬(類似薬)の薬価から加算分は除外すべきか、また外国価格調整を行って比較薬価格とのバランスを崩すことをどう考えるか―。

 22日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会では、こういった議論が行われました。

2月22日に開催された、「第127回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」
2月22日に開催された、「第127回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

診療側委員は「補正加算は当該医薬品だけのものではないか」と問題提起

 昨年(2016年)末に決定された「「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」に沿って、中医協薬価専門部会では具体的な抜本改革案の議論が精力的に続けられています(関連記事はこちらこちら)。22日の会合では「類似薬効比較方式」をテーマに議論が行われました。

 新薬の薬価は、(1)類似薬がある場合には、その1日薬価と同一になるように設定する【類似薬効比較方式】(2)類似薬がない場合には、製造原価などを積み上げて設定する【原価計算方式】―の2つのルールで決められます(ここで優れた医薬品についての加算などが行われる)。

 (1)の類似薬効比較方式は、「Aという新薬が開発された場合、類似するB薬に置き換えられて使用される」という考え方に基づくものです。しかし中医協では「新薬が化学合成品(一般に製造コストが小さく安価である)であるにも関わらず、類似薬(価格比較薬)として一般的に高価(製造コストが大きい)な抗体医薬品であるため、新薬の薬価も非常に高価に設定されてしまう」との指摘があり、類似薬効比較方式の見直しを検討することになっているのです。厚生労働省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は、「化学合成品や抗体医薬品など製造コストの異なる医薬品が存在する中、比較薬の選定についてどう考えるか」という論点を提示しています。

 この点については、C型肝炎治療薬の「ソバルディ錠」や「ハーボニー配合錠」が引き合いに出されます。ソバルディ錠は、▼テラビック錠(薬価1429.6円、1日薬価1万2866.4円、1治療期間薬価108万777.6円)▼ペグイントロン皮下注用(薬価3万332円、1日薬価4333円、1治療期間薬価72万7968円)▼レベトールカプセル(薬価627.6円、1日薬価2510.4円、1治療期間薬価42万174.2円)―を比較薬とし、さらに補正加算・外国価格調整が行われ6万1799.3円という高額な薬価が2015年5月に設定されました(その後、特例の市場拡大再算定で引き下げ)。

ソバルディ錠の薬価算定
ソバルディ錠の薬価算定

 またハーボニー配合錠は、▼ダクルインザ錠(薬価9186円、1日薬価1万8372円)▼ソバルディ錠(薬価6万1799.3円、1日薬価6万1799.3円)―を比較薬とし、8万1717.3円という薬価が2015年8月に設定されています(同じく特例の市場拡大再算定で引き下げ)。

ハーボニー配合錠の薬価算定
ハーボニー配合錠の薬価算定

 診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、この2つの医薬品の薬価設定過程から「テラビック錠が補正加算(有用性加算)によって高価格となる」→「それを比較薬としたソバルディ錠の薬価が高額に設定される」→「ソバルディ錠が補正加算(画期性加算)によってさらに高額に設定される」→「それを比較薬としたハーボニー配合錠の価格がさらに高額となる」という構造になっている点について「画期性や有用性は当該薬だけのものであろう」と指摘し、現在の仕組みを抜本的に見直すべきではないかと問題提起しています。

 これに対し、中山薬剤管理官は「薬の価値として有用性が比較薬と同等または同等以上の場合には、(補正加算を含めた)薬価を合わせる仕組みには合理性がある」と答弁。また、製薬メーカー代表の加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬株式会社常務執行役員)も「類似薬効比較方式は『新薬の薬価を、市場で置き換わる品目の1日薬価と揃える』という考えに立ったもので、この仕組みは理に適っている」と強調しています。

 両者の見解には大きな隔たりがあり、今後、さらなる議論が行われます。

類似薬の1日薬価と合わせた後に、外国価格との調整を行うことは妥当か

 類似薬効比較方式は、新薬の新規性に応じて(i)通常の新薬については、類似薬と1日薬価を合わせる【類似薬効比較方式(I)】(ii)新規性の乏しい新薬は、過去数年間の類似薬のうちもっとも低い薬価に合わせる【類似薬効比較方式(II)】―に区分されます。

類似薬効比較方式(I)の概要
類似薬効比較方式(I)の概要
類似薬効比較方式(II)の概要
類似薬効比較方式(II)の概要

 このうち(i)の類似薬効比較方式(I)では、前述のように優れた性質を持てば【補正加算】が付加され、さらに外国における価格と大きなかい離がある場合には【外国平均価格調整】が行われます。後者の仕組みについて中山薬剤管理官は、「市場での公正な競争を確保する観点から、類似薬と1日薬価を合わせている中、外国平均価格調整による価格調整をどう考えるか」との論点を示しています。

 先ほどのソバルディ錠を見てみると、テラビック錠などと合わせた薬価は2万3396.7円と設定されましたが、その後に▼補正加算(画期性加算)によって4万6793.4円へ▼外国平均価格調整によって6万1799.3円へ―と引き上げられています。一度「類似薬の薬価と合わせた」後に、外国価格によって「類似薬の薬価と異なる価格に変更」しており、この仕組みの妥当性を改めて検討してはどうかとの提案です。

 この点、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「類似薬と比較し、さらに外国価格と比較するという2つの物差しが必要である」とし、現在の仕組みには合理性があるとの見解を示しました。一方、メーカー代表の加茂谷専門委員は「類似薬と薬価を合わせながら、外国価格と調整して類似薬の薬価と乖離が生じてしまう仕組みには、妥当性低いと思う」と述べ、見直しを求めています。

 

 なお、このテーマに関連して「外国平均価格調整における、価格参照国からアメリカを除外すべきかどうか」も議題に上りました。この点については、「アメリカ価格は除外すべきだが、(トランプ政権下で)他に影響が出ないかを慎重に見極めるべき」(支払側・幸野委員)、「アメリカの圧力などを考慮すれば抜本改革からずれてしまう。早急に議論すべき」(診療側・中川委員)、「アメリカでの流通価格を把握できないか研究している。除外論議は少し待ってほしい」(メーカー代表・加茂谷専門委員)、という具合に、意見が少しずつ異なっている点が目を引きます。

 

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